英語学習においては、「読む・書く・聞く・話す」という四技能を万遍なく習得することが目標とされる。しかし「聞く」という技能は受動性が高く、意識的に行うことが難しい。言語の習得で必ずぶつかる壁を越えるためには、「聞く」を通した「受動の技術」の鍛錬が必要だ。
そもそも英語が「うまい」とはどういうことか? 「ぺらぺら」という表現が使われるように、よどみなく喋ることがひとつの目標になっている。一方で日本語だと、それはあまり重視されていない。
なぜ英語だと、よどみなさが評価されるのか。それは聞く側にとって「心地良い」からではないか。その方がわかりやすく、内容が頭に入りやすいからであり、また話し手に好印象を与えるからでもある。
私たちが英語学習においてまずめざすべきは、「ぺらぺらの話し手」ではなく、「よどみなさの価値がわかる聞き手」なのだ。
どの英語の教科書にも、「英語にはストレス・アクセントがある」「ストレスの置かれる強音節と置かれない弱音節が英語の音の土台をつくっている」と書かれている。
この「強・弱」の組み合わせにはいくつかのパターンがあり、特に「弱・強/弱・強……」というリズムは日常会話でもよく使われる。強と強の間の長さは音節数にかかわらず、だいたい同じくらいに聞こえるとされる。そのため私たちは、強と強の間に多くの音節がはさまっているフレーズを聞くと、「弱いところが続くと聞き取りにくい」と考えてしまう。
しかし「弱」が続く部分は、わざと聞き取りにくくしているのではない。大事なのは、強い音節と弱い音節を、メリハリをつけて言うことだ。そのほうが聞き方がわかっている人にはちゃんと伝わり、コミュニケーションが円滑になされるのである。
英文は「強・弱/弱・強……」という繰り返しだ。
キング牧師の演説「I have a dream」では、「One hundred years later……」という出だしが繰り返され、論点がリスト化されている。英語ではこのような列挙や反復表現を日常会話でもニュースでも、よく耳にする。
しかし列挙や反復をとらえるとき、私たちが間違えやすいのは何といっても否定が関係するところであり、これと密接に絡むのが仮定法だ。いくつもの話のうち、どれが肯定され、どれが否定されているか、どれが仮定の話なのか、わからなくなることがある。
話し手の意向を正しくとらえるには、「強」と「弱」の交代するリズムから、最終的な強調ポイントを間違いなく受け取ることが大事になる。
リスニングには長時間の練習が大事だが、どうしても単調で退屈になりがちだ。わかるようでわからないような感じが、「おもしろくない」という感想に至ってしまう。
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