宇宙飛行士選抜試験

ファイナリストの消えない記憶
未読
宇宙飛行士選抜試験
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ファイナリストの消えない記憶
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宇宙飛行士選抜試験
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出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2020年12月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

宇宙飛行士は、人類を代表して未知の領域に踏み出さなければならない。ときには命を脅かされることもあるだろう。それでは、宇宙飛行士はどんな人がふさわしく、それを選抜するための試験はどんなものなのか。

『宇宙兄弟』を読んだことがある読者であれば、ある程度イメージができるかもしれない。しかし、本書は宇宙飛行士選抜試験のファイナリストである内山崇氏による体験談だ。生々しい現場の描写に加えて、心の内面まで描かれており、宇宙飛行士選抜試験の本当の姿を把握することができるだろう。なかでも興味深いのが、ライバルとなる他の挑戦者たちとの間で芽生える友情やチームワークだ。宇宙飛行士になるためには、医学的に健康であることはもちろんのこと、コミュニケーション能力やリーダーシップ、協調性が求められるのだ。これだけ多くの要素が求められる試験はほかにないのではないか。総合的な人間力が試されているといえそうだ。

宇宙飛行士選抜試験の受験者は、夢を持ち、夢を実現するために過酷な試験に挑戦する。夢を持ちながら挑戦を続けることが人間力を磨き、人間としての魅力も増やしていくのだろう。それは、宇宙飛行士を目指したことのない人にも人生に対する何らかの示唆を与えるものである。最終選抜で夢破れた内山氏は、それでも新しい夢を見出し、それを追い続けるという。本書を一読すると、自分にとって夢を追うとは何なのか、考えるきっかけになるはずだ。

ライター画像
香川大輔

著者

内山崇(うちやま たかし)
1975年新潟生まれ、埼玉育ち。2000年東京大学大学院修士課程修了、同年IHI(株)入社。2008年からJAXA。2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト(10名)。宇宙船「こうのとり」フライトディレクタ。2009年初号機~2020年最終9号機までフライトディレクタとして、ISS輸送ミッションの9機連続成功に貢献。現在は、日本の有人宇宙開発をさらに前進させるべく新型宇宙船開発に携わる。趣味は、バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)、ラーメン。宇宙船よりコントロールの利かない2児を相手に、子育て奮闘中。

本書の要点

  • 要点
    1
    10年ぶりの宇宙飛行士選抜試験に挑戦することを決めた。書類選考を経て、一次試験と二次試験を突破し、最終選抜に進む10人に選ばれた。
  • 要点
    2
    最終選抜では、さまざまな課題をこなす閉鎖環境試験につづき、場所をNASAジョンソン宇宙センターに移してシミュレーション試験や面接試験などをおこなった。
  • 要点
    3
    不合格通知を受け取ったことで予想以上のショックをうけたが、「こうのとり」プロジェクトを通じて新たな夢を見出し、追い続けている。

要約

宇宙飛行士選抜試験【前編】

宇宙飛行士募集
beavera/gettyimages

2008年2月27日、JAXAが10年ぶりに宇宙飛行士を募集するという記事が飛び込んできた。

未知なる宇宙に魅せられた少年は、航空宇宙工学科のある大学を経て、石川島播磨重工業(現IHI)の宇宙開発事業部に就職。宇宙ステーションに物資を届けるランデブ宇宙船「こうのとり」のプロジェクトに参画するなど、常に宇宙飛行士になることを念頭に置き、進路を決めてきた。その後全力で宇宙船開発に没頭していたが、32歳になってようやくチャンスが巡ってきた。

宇宙飛行士の募集は不定期におこなわれるため、自分の人生のどのタイミングと重なるのかは非常に重要だ。仕事でも経験を積んだ32歳での募集はベストに近い。しかも直前にJAXAに転職しており、試験慣れ、面接慣れもしている。いよいよ運命の歯車が回り始めた。今まで漠然と描いてきた宇宙飛行士として必要な資質をかみ砕き、自分のレベルを数段上げていく必要がある。夢に近づいていくため、一歩一歩階段を登っていこう。

書類選考

宇宙飛行士選抜試験への挑戦、その最初の一歩は書類選考につながる志願書の記入だ。目一杯の気持ちを込めて、手書きで仕上げた。志願書の記入項目の中で重要なパートは2つある。ひとつは、「これまでの研究/開発業務歴」だ。宇宙船「こうのとり」のプロジェクトについて全力で打ち込んできたことを自信をもって書くことができた。もうひとつは「応募動機」。本気度を見せるために、「宇宙飛行士として人類の有人宇宙開発に貢献したい」という覚悟を力強く字に込めた。応募書類を早々に出し終えたあとは、続いて英語試験をおこない、一次選考の準備をしながら結果を待った。

ところで、宇宙開発初期の選抜試験では、集団から基準を満たす適格者を選び出す「セレクト・イン」が採用されていた。しかし、宇宙飛行士に求める能力が多様化するにつれ、不適格者をふるいにかける「セレクト・アウト」で対象者を絞り込み、最終的に「セレクト・イン」で適格者を選び出す方法がとられるようになっている。書類選考は「セレクト・アウト」試験なのだ。

一次選抜試験、そして二次試験へ
bee32/gettyimages

書類選考で963名のうち、筆者を含めた230名が突破、いよいよ一次選抜が始まる。一次選抜では、2日間をかけて一般教養試験や、数学や物理などの基礎的専門試験、心理検査、人間ドックのような一次医学検査をおこなう。これらの一次選抜はすべて「セレクト・アウト」試験だ。それぞれの項目の基準点をクリアできなければ、ふるいにかけられる可能性が高い。

一次選抜が終わって1カ月、50名まで絞り込まれた合格者の中に自身も含まれていた。いよいよ「セレクト・イン」の段階となる二次選抜に進んだのだ。三班に分かれ、16名のA班に配属となった。7日間かけての各種面接や試験、徹底的な医学検査に挑むことになった。

二次選抜の前半は、何を測られているのか分からない検査や、素の人間性をほじくられたり、深層心理を分析されたりする心理試験、本気度や覚悟を試される専門面接などで構成される。ピンにワッシャを通すような単純作業や、目隠しをしてその場で足踏みをする試験などをおこなっていく。24時間にわたりひたすら尿を集めて検査するというものもあった。

二次選抜の後半には、病院で4日にわたる医学検査が待っていた。身体中の穴という穴を調べられることに加え、身体能力や体力の検査もある。辛い検査やまるで競技会のような体力検査を通じて、A班のメンバー16名の結束力が高まっていく。夢を追って全力を尽くした1週間が終わると、A班のメーリングリストが立ち上がった。そのメーリングリストに、最終選抜に進む10名に自分が含まれることを報告した。

【必読ポイント!】 宇宙飛行士選抜試験【後編】

最終選抜試験が始まる

二次選考通過の通知には、筑波宇宙センターとNASAジョンソン宇宙センターで、18日間の長期滞在適性検査や面接などをおこなう、とある。試験開始まで3週間。

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要約公開日 2021.02.18
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