本書は、「自ら答えを出さなければならない世界」で生きる人が身につけておくべき数学的思考法を教えるものである。具体的には、数学的思考を「定義」「分解」「比較」「構造化」「モデル化」の5つの思考法に整理し、それぞれのトレーニング法を示す。
新型コロナウイルスの感染拡大により、社会は劇的な変化を余儀なくされた。成功法則がどんどん変わっていく時代において、「答え」は探すものではなく、自ら深く正しく考えることで作るものなのだ。
本書で数学の思考法(頭の使い方)を学ぶと、自分の納得のいく結論(答え)を作れるようになる。納得のいく結論が出せるようになった人は、行動に移せるようになり、豊かさを手にすることができるはずだ。
まず「数学的思考とは何か」という問いから始めよう。数学の最大の特徴は「定義をしないと始められない」ことにある。定義とは、「〇〇とは~~である」と言語化する行為だ。三角形を定義せずに三角形の面積を求めることはできないのと同様に、数学的思考を定義しなければ何も始まらない。
本書では、数学的思考を「数学をするときに頭の中でする行為」と定義する。数式で表すと、「数学的思考={定義}×{分析}×{体系化}={定義}×{(分解)+(比較)}×{(構造化)+(モデル化)}」となる。
この数式は、構造的には「154=2×7×11=2×(3+4)×(5+6)」と同じだ。154という数が、2、3、4、5、6という5種類の数の組み合わせからできているのと同様に、数学的思考も定義、分解、比較、構造化、モデル化という5種類の概念の組み合わせからできている。
では、「アルバイトの給与」は数学的にどう説明できるだろうか。まず「アルバイトの給与とは何か」という問いからスタートしよう。「アルバイトの給与」とは、アルバイトをすることで得られる報酬と「定義」でき、「時給」と「勤務時間」という2つの要素に「分解」できる。ここから「アルバイトの給与(Y)=時給(A)×勤務時間(X)」が導き出せ、「Y=AX」と「構造化」して説明できるようになる。
数学的思考とは、このような思考プロセスで答えを出す行為のことをいう。
数学は、定義しないことには始まらない。定義とは、「〇〇とは~~である」と言語化することによって「そうであるもの」と「そうでないもの」をはっきり分類するルールを明文化することだ。
たとえば素数は、「1より大きい自然数で、1と自分自身以外に正の約数を持たない数」と明文化できる。これによって、2は素数(1と2が約数)だが、4は素数ではない(1と2と4が約数)ことがわかる。もし「素数であって素数でないもの」が存在するならば、素数を定義したことにはならない。数学的思考を身につけたいなら、まずは定義が命だという感覚を持とう。
定義が必要な理由は、定義しなければ共通認識ができないからだ。
あなたが会議の進行役だったとして、その会議を定義できていなければどうだろう。
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