「無理です!」「どうしたらいいかわかりません!」と、いとも簡単に諦めてしまう部下たちの扱いに悩む上司は多いものだ。だが、部下を「すぐ諦める部下」にしているのは、上司であるあなた自身だ。上司が部下に代わって解決策を考えてしまうために、部下は「どうせ上司がなんとかしてくれるから」と、自分で考えることを放棄してしまう。あなたは部下にとって「チョロい上司」なのだ。
こんな歪んだ関係は、できるだけ早く逆転させるべきである。上司であるあなたは、部下ではなく自分がラクできる方法を確立し、やるべき仕事に集中しなければならない。
そのためには、部下が何かに困ってあなたに相談しに来ても、「答えない」ようにしよう。対話はするが、あなたが考えた解決策を部下に与えるという行為はすっぱりやめる。その代わり、部下本人が自分の頭で解決策を考えざるを得ないような対話の流れを作るようにする。
具体的には、部下が言った通り「復唱」する、部下の発言に「合いの手」を入れる、の2つのスキルを使おう。例えば、部下が「もう無理です」と言ったら「もう無理なんだね」と復唱する。それだけで次の言葉がなかなか出ないなら、「それについて、もうちょっと詳しく教えてもらえる?」「それで?」といった具合に合いの手を入れる。
上司から合いの手が入ると、部下はヒヤリとし、説明や言い訳を始めるだろう。それでも何も言わず、部下に最後まで言い切らせよう。これを続ければ、部下は解決策をくれない上司に代わり、自分で考えるようになる。
「部下をほめて育てる」というのは、昨今の人材育成のトレンドだ。ところが、積極的にほめているのに反応が鈍く、部下が成長している実感もないと悩んでいる上司もいるだろう。
ほめる育て方がうまくいかないのは、「ほめ方」を間違っているからだ。具体的には、「ほめる」を無意味に使いすぎてしまっているのだ。
ほめすぎると、「忖度(そんたく)する部下」が生まれてしまう。部下は上司の意図を読み取り、ほめてもらえる行動だけをとるようになるのだ。また、ほめられ慣れしてしまい、何を言われても心に響かなくなる。これでは、上司からほめられてもモチベーションアップにはつながらない。
だから上司は、心からほめたいと思ったときだけ、ほめるべきである。それ以外のときは、「承認」、すなわち「相手の存在」を認めるようにしよう。相手の存在や行動、発言を「気づいているよ」「聞いているよ」と、しっかりと言葉で伝えるのだ。
承認には「ほめる」と違って、上司の主観はさほど入らない。そのため、上司の意図を忖度させることなく、部下のモチベーションを高められる。
また、確実な成果が出ていない段階でほめるのは難しくても、「プロセスの承認」はできる。「進んでいるね」「その調子だよ」と声をかければいい。
承認の言葉を普段から伝えられれば、部下のモチベーションは高まるだろう。あなたから建設的なフィードバックをすることで、部下が素直にそれを受け入れる素地をつくることにもつながる。
昨今、導入が進められている「1on1ミーティング」(以下、1on1)。これは、部下の自律性を引き出すための人材育成メソッドとして、上司と部下が1対1で行う個人面談のことだ。
1on1は「部下に話をさせる」ことを重視しているが、気がつけば「上司ばかりが話していた」というケースも多い。つい口を挟んでしまい、話が止まらなくなってしまうのだろう。
3,400冊以上の要約が楽しめる