仕事に対して面白さを感じられない人と、イキイキと仕事ができている人がいる。両者の違いは、「エンゲージメント」の度合いによって生まれている。エンゲージメントとは、活力や熱意にあふれ、仕事に没頭して取り組んでいる状態を指す。その結果として、組織や会社への貢献度合いも高くなるというわけだ。
仕事におけるエンゲージメントの高さは、仕事だけでなくプライベートにも影響を及ぼす。「最近、仕事が面白く感じられない」という人の話を聞いてみると、じつは家庭内に不和があったというケースも少なくない。私生活が充実していればそれが活力となり、仕事にも良い影響を与える。こうして考えてみると、エンゲージメントは仕事やプライベートにとどまらない「広い」社会、すなわち社会参加や政治参加にもつながっている概念だといえる。
エンゲージメントという考え方はアメリカで発展したものであるため、日本社会や日本企業には合わないという人もいる。しかし日本でも、エンゲージメントの向上が離職率の低減に寄与することが示されている。マイナビが2019年に1200名を対象に行ったアンケート結果によると、エンゲージメントが低い組織では、エンゲージメントが高い組織に比べて、離職欲求強度(離職したい気持ちの強さ)や離職欲求態度(離職したいと思う頻度)が高かった。
高エンゲージメント企業ほど業績も良い傾向にある。靴のネット通販会社「ザッポス」はその代表例だ。同社には、顧客を感動させるために工夫をこらし、難しい仕事でもやろうとする社員ばかり揃っている。社員と会社の文化の相性がよく、高いエンゲージメントを保つことができているからである。
ザッポスは採用時に応募者をくまなく観察することはもちろん、入社後も2カ月間の研修期間を設けている。そして研修期間中でも終了後でも、新入社員自身がザッポスの社風とは合わないと感じたら申し出てもらい、その対価として会社は一定のお金を支払う。
日本では会社の風土に多少合わなくても、生活のためには多少の我慢は必要などと考え、会社にとどまる人が多い。だがザッポスではやらされ感で仕事をしているような人を、自分たちの仲間だとは見なさない。だから結果的に、ザッポスにはエンゲージメントの高い人材ばかりが残る。それが顧客へのサービスの品質につながり、企業業績の向上に結びついているのである。
エンゲージメントを高めるうえで必要なのは、「仕事の意味・強み」「成長」「人間関係」の3つだ。以下、それぞれの要素について見ていく。
かつて日本の社員の多くは、「意味」や「やりがい」など感じていなくても、給料さえ高ければ、表向きは文句を言わずに仕事に取り組んでいた。だがもはやそういう時代ではない。1980年代から1990年代半ばまでに生まれた「ミレニアル世代」と呼ばれる人たちは、生まれたときからインターネット環境が整った環境で育ってきた。彼らのあいだでは、給料の額ではなく、
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