新版 20歳のときに知っておきたかったこと

スタンフォード大学 集中講義
未読
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おすすめポイント

本書は、スタンフォード大学の起業家精神とイノベーションの演習授業から生まれたベストセラーの「新版」にあたる。その主張をまとめると、快適な場所から離れ、失敗を恐れず、あらゆる機会を見逃さない、ということになるだろう。この提言自体は普遍的なもので、そこまで珍しい主張ではない。

しかし本書の特徴は、スタンフォードの学生たちに与えられた実際の課題(問い)とエピソードがふんだんに紹介されているところにある。エピソードを通じて、読者もまたさまざまな思考実験に誘われる。どの話題にピンと来るかは読者次第だと思うが、要約者にとっては交渉に関する話がとくに興味深かった。交渉では、互いの利害が対立しているという無意識の前提があり、「自分の利害を明かすと不利になる」と思っている人が少なくない。しかし実際は、互いの利害を明らかにした方が、ずっとよい結果を得られる。双方の望むことが一致していることは意外と多く、それぞれの交渉項目についての互いの重要度がわかれば、譲歩の余地もずっと大きなものになる。

本書に書かれている内容の一部でも生活に取り入れることができれば、人生は大きく変わるはずだ。著者も述べているように、よい変化は複利効果で増える。たとえば1日に1%変わるだけでも、1年後には37.78倍になる計算である。

20歳かどうかにかかわらず、あらゆる年代の読者の背中を押してくれる、じつに力強い一冊である。

ライター画像
しいたに

著者

ティナ・シーリグ(Tina Seelig)
スタンフォード大学医学大学院で神経科学の博士号を取得。現在、スタンフォード・テクノロジー・ベンチャーズ・プログラム(STVP)とハッソ・プラットナー・デザイン研究所(通称d.school)のファカルティ・ディレクターを務め、創造性、アントレプレナーシップとイノベーションの講座を担当。またスタンフォード大学工学部教授でもある。工学教育での活動を評価され、2009年に権威あるゴードン賞を受賞。著書に『未来を発明するためにいまできること』『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』(いずれもCCCメディアハウス)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    社会に出て活躍するには、どんな職場であっても起業家精神を発揮し、みずから先頭に立つ術を心得ておく必要がある。
  • 要点
    2
    常識を疑い、世の中のギャップを発見するべきだ。そこに新しいニーズがある。
  • 要点
    3
    チャンスは、自分でつかみに行くものである。何かを成し遂げようと思ったら、機が熟すのを待つのではなく、まずはその方向に動き出すべきだ。
  • 要点
    4
    失敗は、スキルを広げる挑戦をした証でもある。失敗したことがないのは、十分なリスクを取っていないからにすぎない。

要約

なぜ起業家精神を教える必要があるのか

学生に挑戦的な課題を与える
Rocco-Herrmann/gettyimages

著者は、スタンフォード大学の工学部を拠点として、学生たちに起業家精神に関わるプログラムを提供している。純粋な科学者や技術者として学生を社会に送り出すだけでは、不十分だと考えているからだ。

社会に出て活躍するには、どんな職場であっても、人生のどんな局面であっても、起業家精神を発揮し、みずから先頭に立つ術を知っておく必要がある。そのために、起業家精神とはどういうものかを教え、それぞれの役割のなかで起業家精神を発揮するために必要なツールを授けることが目的だ。

このプログラムで学生たちは、「2時間で元手の5ドルを増やす」方法を考えて実践する、「10個のクリップで4時間のあいだにできるだけ多くの価値を生みだす」といった、ユニークで挑戦的な課題に取り組むことになる。

学校の内と外にはギャップがある

このような起業家のプログラムが有効なのは、学校で適用されるルールと外の世界のあいだに大きなギャップがあるからだ。

学校では、学生を成績で相対評価する。つまり、誰かが勝てば誰かが負ける仕組みになっている。一方で社会に出れば、目標を共有するもの同士がチームを組んで仕事をする。自分が勝てば、周りも勝つ。

教師は、学生に知識を詰め込むのが仕事だと思っている。しかし社会に出れば、自分が自分の教師になって、何を知るべきで情報はどこにあるのか、どうやって吸収するかは自分で決めるしかない。出題範囲が決められず、どこからでも問題が出される試験のようなものだ。

テストにしても、大人数の授業であれば、正しい答えを1つだけ選ぶ選択式が主流だ。だが社会に一歩出れば、どんな問いにも、答え方は何通りもある。そしてその多くは、どこかしら正しいところがあるものである。

【必読ポイント!】 失敗なくして成功なし

常識を疑い、ニーズを見つける

問題とは、すなわちチャンスである。それなのに学生たちは、問題は避けるもので、不満のタネになるものだと教えられている。問題をチャンスに変えるには、常識を疑うことが欠かせない。そうやって世の中のギャップを発見すれば、新しいニーズを発掘できる。

著者はある授業で、学生たちに古いサーカスのビデオを見せ、伝統的なサーカスの特徴をすべて挙げてもらったあと、そこで挙げた特徴を逆にしてもらっている。「けたたましい音楽」の替わりに「洗練された音楽」、「ピエロ」に対して「ピエロはいない」といった具合に。次に伝統的なサーカスのなかで、残しておきたいものを選んでもらう。こうしてできあがった新しいサーカスは、まるで「シルク・ドゥ・ソレイユ」風のものになる。そして実際のシルク・ドゥ・ソレイユの公演ビデオを見てもらったあとで、自分たちが行なった変更が実際にどのような効果をもつのか、学生たちに検証してもらう。

この授業を通して著者が伝えたいのは、思い込みを外し、常識を疑うことで、現代のニーズに合った新しい価値は生み出せるということだ。これはサーカスだけでなく、ほかの業界や組織にも簡単に応用できる。

ルールを吹き飛ばせ
natasaadzic/gettyimages

「不可能に思えること」に挑戦するうえで、いちばん邪魔になるのは、周りから「できるわけがない」と決めてかかられることだ。この壁を打ち破るためには、次のエピソードが参考になるだろう。

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要約公開日 2021.04.02
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