昨今の世界的な変化に伴い、働く人の価値観や働き方も変化している。これまでは、終身雇用を背景に人生の見通しがある程度立てられる「伝統的なキャリア観」が主流だった。しかし、現在は、自らめざすキャリアやゴールを決めることが求められるようになっている。また、副業解禁やリモートワークも定着しつつある。
こうした現状に不安やモヤモヤを抱える人が増えている。漠然とした不安を軽減するために必要なのが、組織として「働きがい」をサポートする「キャリア1on1(以下、1on1)」である。組織の中でプライベートを含むキャリアについて話すことで、「働きがい」を感じて活躍できる風土が醸成されていく。
著者は、1on1を「メンタリングそのもの」だと言い切る。メンタリングとは、経験豊かな先輩が次世代の人に対し、キャリアの発達や成長を促すために行う対話のことである。優れたアスリートがメンター(サポートする人)を必ずつけているように、1on1にもメンタリングスキルをもつメンターの存在が重要となる。
1on1を行うメンターの役割の1つが、「キャリア支援」である。変化の激しい現在、キャリアの正解はない。だからこそ、組織内で個々人のキャリアを前向きに考えるように促す支援が重要となる。キャリアを前向きに考えることを促すと、優秀な人材の離職につながってしまうという心配はいらない。むしろ、優秀な人材にこそ「働きがい」を感じてもらう必要がある。キャリア支援の過程で、自分の価値観と組織の方向性とが重なる部分を見出すことができれば、人材は定着していくはずだ。
著者が推奨する1on1の基本は、(1)月1回×60分、(2)対話の場を半年以上設定する、というシンプルなものである。
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