著者は本書を執筆するにあたり、現在進行系でマネジャー業務に奮闘しているビジネスパーソンを集め、抱えている悩みを直接シェアしてもらうワークショップを開催したという。そこで50件以上の悩みを分析した結果、大きく3つの悩みに分類できることがわかった。
1つめは、「どうすれば部下が、主体的に、能動的に、当事者意識を発揮して働けるか」という悩みである。受け身や指示待ちが常態化してしまう要因として、会社側の問題や部下の姿勢もないとは言えない。しかし本書はあくまでマネジャーの思考や心構え、立ち振舞いを変えていくことで問題を解決していく。
2つめは、「部下との人間関係構築やコミュニケーション」に関する悩みだ。かつて新卒一括採用・年功序列・終身雇用が一般的だった時代は、社員の同質性が高く、コミュニケーションに悩むことは今より少なかった。しかし定年延長や再雇用が一般化しただけでなく、ワークライフバランスへの配慮がかつてなく問われるようになった今、ビジネス環境は多様化している。このような職場環境では、相手がなにを感じ、考えているかについて「洞察する力」が不可欠となる。
3つめは、「人材育成」だ。これは前2つの悩みに比べると、時代や環境を問わないテーマといえる。しかし「テレワークで部下の働きが見えにくくなった」「叱るとパワハラだと言われてしまう」といった現代的な課題も内包している。
前述した悩みを解決するためには、まずマネジメント観を変えなくてはならない。具体的には、3つのマインドセットが重要になる。
1つめは、「部下は変えられない」という前提だ。部下が思うように変わっていかない原因は、むしろ「人は変えられる」という前提で接している点にある。人間は現状を維持するようにできている。それを無視して部下を無理やり変えようと働きかければ、それは「支配のマネジメント」になってしまう。しかし、他人は変えられなくとも、自分自身を変えることはできる。部下が自ら変わり、成長していくきっかけを作り出す「支援のマネジメント」を、マネジャーは行っていかなくてはならないのだ。
2つめは、「部下は集団になると〈2・6・2〉にわかれる」というマネジメント観だ。これは「働きアリの法則」とも呼ばれる。これはどのような人材を集めても、上位2割はリーダー的存在に、中位6割はリーダーに引っ張られるフォロワー的存在に、下位2割はそれに依存するフリーライダー的存在になる、という法則だ。上位2割はほとんどリソースを割かなくても成長し、下位2割を無理になんとかするのは現実的ではない。マネジャーからの効果的な支援にもっとも影響を受ける中位6割に力を傾けるようにしたい。
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