著者は、マーケティングを「お客さまのニーズを洞察し、お客さまが価値を見いだすプロダクトを生みだすこと。さらに、その価値を高め続けて継続的な収益を生みだし、その収益を再投資して新たな価値をつくり続けること」と定義している。この定義によれば、マーケティングは、売れる仕組みではなく、お客さまにとっての価値をつくることになる。
マーケティングのポイントは、「WHOとWHATの組み合わせ」を明確にすることだと著者は言う。「どんなお客さま(WHO)」に、「どんなプロダクト(WHAT)」を提案して「価値」をつくるのかを明確にできれば、「やること(HOW)」、つまり道筋が明確となり、「マーケティングの樹海」にはまって悩むこともないのだ。
たとえば、一定期間に牛乳が爆売れしたとしても、一般消費者だけが購入したとは限らず、研究用としてメーカーがたまたま大量購入した結果かもしれない。購入したのが一般消費者でないことが分かれば、製菓業界向けにビジネス提案することでWHOとWHATが変化し、新たな価値が創出できる。
つまり、WHOとWHATが明確になって初めて、誰に何を販売促進すればよいのかというHOWを実行できる。
牛乳がプロダクトの場合、牛乳を買いたい人は誰か、その人たちが買いやすいのはコンビニなのか配達かという販売チャネルとしてのHOWを考えればいい。巷に溢れる「ショート動画でバズらせよう」などは、手段や方法としてのHOWに過ぎないと肝に銘じよう。
マーケティングの本質は、「お客さまは誰なのか」というWHOと、「お客さまがプロダクトにどんな価値を見いだしてくれているのか」というWHATを明確にすることにあり、マーケティングのスタート地点となる。
「マーケティングの樹海」から抜け出す第1ステップは、そもそも「顧客が魅せられる価値とはなにか」を理解することである。
著者は、価値とは「便益」と「独自性」の両方をあわせ持つものと定義する。「便益」とは、具体的な利益をもたらすプラス要因で、「独自性」とは、他にはない唯一無二の魅力である。
たとえば、山歩き中に喉が渇いて、山奥で200円のミネラルウォーターを売っていたら「高い」と思いながらも購入するはずだ。この場合、「水でのどを潤せる」ことが便益で、「ここでしか買えない」ことが独自性となり、その2つに価値を見いだして、「高いけど買おう」という思考と行動をとる。
つまり、価値とは、金額や時間、それを手に入れる労力を総合的に判断したうえで交換される便益と独自性なのである。
翻せば、WHAT(プロダクト)は、何らかの選ぶ理由である「便益」とほかを選ばない理由である「独自性」を提供し、WHO(お客さま)を獲得することによって収益化する。これは、ビジネスの原則であり、便益と独自性が「自分ごと化」できたときにお客さまは価値を見いだすのである。
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