OECD(経済協力開発機構)が発表した2021年の平均賃金で、日本は加盟国38カ国中で24位にとどまっている。アメリカに1.82倍、ドイツに1.38倍の差をつけられるだけでなく、韓国にも追い抜かれたことは大きな話題になった。
1990年代からほとんど給料が上がっていない理由を、「日本人の能力不足」と考える言説はよく見かけるが、著者は別の理由を挙げる。1つは、就業者数が大きく伸びたことだ。2011年から2018年にかけ、就業者は431万人も増加している。
その増加分のうち、高齢者や若年層など、一般的に低賃金とされる層が多かったことで、全体の平均賃金が押し下げられたと著者は指摘する。加えて、女性の労働参加率が高まるにつれ、男性との賃金格差を背景に、全体の平均が押し下げられた。
給料は2つの要因で決まる。その2つとは、「付加価値」と「労働分配率」だ。
付加価値とは材料を仕入れ、何かを製造し、販売した際に生じる差額を指す。そして、付加価値のうち給料として支払った割合が労働分配率である。また、労働者1人が創出する付加価値を「労働生産性」と呼ぶ。
世界銀行が発表した2021年における日本の労働生産性は、OECD平均の8割弱で、36位に甘んじている。一方の労働分配率は、国際労働機関のデータによると他の国と大きく差がついているわけではない。このことから、日本の低賃金の理由は労働生産性にあるといえる。
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