給料の上げ方

日本人みんなで豊かになる
未読
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ジャンル
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2023年04月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

先進国でありながら、不相応に「低賃金」と揶揄されることが多い日本企業。実際、世界各国が経済成長を遂げる一方で日本企業の賃金は30年ほど横ばいの成長にとどまっている。本書はその根本原因の特定とともに、著者の視点から給料アップのために企業や個人が持つべき視点、取り組むべき施策に幅広く言及している。

著者は「まともな経済状態にあれば、給料の水準が上がるのは当たり前」と説く。また、「日本では異常事態が30年間にわたって続いている」とも指摘する。

一体それはなぜなのか。一部では、労働者の能力不足などに言及するケースもあるが、著者はそれを否定する。日本の給料が上がらない大きな要因は、もっとマクロな要因であり、それは就業者の年齢動態や企業戦略にあるという。

それでは我々がもっと給料を高めるためになす術はないのか。日本と比較して海外の給料が高い理由は、海外では労働者がすぐに会社を見限って転職するからだと著者は喝破する。要するに、日本人は会社への忠誠心を健全に捨て、会社や経営者を厳しく評価するように変化すればいいと言うのだ。

日本人の多くはまじめに働いている。そして、「まじめに働いていれば幸せになれるのは、当たり前であるべき」と著者は書く。本書を読み、1人1人が行動することで、日本全体の給料アップにつながるはずだ。当たり前に幸せになれる社会に向け、多くの人が本書を手に取り、問題の本質に気付くことを願う。

著者

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長
1965年イギリス生まれ。日本在住33年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。
1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の「成長戦略会議」委員などを歴任。
『日本人の勝算』『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『新・生産性立国論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。2016年に『財界』「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本人の給料が上がらない原因は、個人の能力不足ではない。理由の1つには、一般的に低賃金とされる層の労働参加率が高まったことなどがある。
  • 要点
    2
    個人が給料を上げるためにカギとなる選択肢は「海外」「給料交渉」「転職」「起業」の4つがある。
  • 要点
    3
    企業が給料アップのために取り組むべきは、未開拓市場の発見とイノベーションの創出である。
  • 要点
    4
    給料アップが見込めそうな企業の条件とは「生産性が高い業界に属していること」「規模が大きいこと」「ダイナミズムを有していること」「労働分配率が高いこと」の4つである。

要約

日本人の給料が低い根本理由

給料が上がらない原因

OECD(経済協力開発機構)が発表した2021年の平均賃金で、日本は加盟国38カ国中で24位にとどまっている。アメリカに1.82倍、ドイツに1.38倍の差をつけられるだけでなく、韓国にも追い抜かれたことは大きな話題になった。

1990年代からほとんど給料が上がっていない理由を、「日本人の能力不足」と考える言説はよく見かけるが、著者は別の理由を挙げる。1つは、就業者数が大きく伸びたことだ。2011年から2018年にかけ、就業者は431万人も増加している。

その増加分のうち、高齢者や若年層など、一般的に低賃金とされる層が多かったことで、全体の平均賃金が押し下げられたと著者は指摘する。加えて、女性の労働参加率が高まるにつれ、男性との賃金格差を背景に、全体の平均が押し下げられた。

低賃金の大きな要因は「労働生産性」
Piotrekswat/gettyimages

給料は2つの要因で決まる。その2つとは、「付加価値」と「労働分配率」だ。

付加価値とは材料を仕入れ、何かを製造し、販売した際に生じる差額を指す。そして、付加価値のうち給料として支払った割合が労働分配率である。また、労働者1人が創出する付加価値を「労働生産性」と呼ぶ。

世界銀行が発表した2021年における日本の労働生産性は、OECD平均の8割弱で、36位に甘んじている。一方の労働分配率は、国際労働機関のデータによると他の国と大きく差がついているわけではない。このことから、日本の低賃金の理由は労働生産性にあるといえる。

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要約公開日 2023.09.27
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