多様な性的アイデンティティーや民族、政治的意見に対して開かれた態度がとられるようになった現代でも、シングル(独身)の人たちは偏見にさらされ、早く結婚するようにせかされている。
一般的に、既婚者に対しては「成熟している」「幸せ」といったイメージが持たれているが、シングルの人たちは「未熟」「不幸」「孤独」だとみなされている。このようなステレオタイプはシングルの人たちを傷つける一方で、「結婚」という人生の重大事に準備ができないまま踏み切ってしまい、後になって「間違った決断をした」と後悔する人を生み出す要因にもなっている。
人口統計上、世界中で急速に未婚の人たちが増えている。アメリカの新生児のおよそ25%は一生結婚しないと予測されており、中国の単身世帯の割合は、1990年から2010年のあいだに10%も上昇している。シングルでいることは世界的現象になっているのに、それを認めない文化はいまだに根強い。
「結婚しなければならない」というプレッシャーは、ときに結婚しているかどうか、という事実以上に人々を不幸にしてしまう。しかし、シングルという生き方の豊かな可能性に気づき、受け入れることができれば、ひとりで生きるにせよ結婚を選ぶにせよ、より満足した人生を送ることができるだろう。
シングル増加の傾向は先進国で顕著だが、ここ数十年で南米や中東、アフリカ諸国にも広がっている。人類はこれまで家族を社会の基盤としてきたが、産業革命と現代福祉国家の誕生を経て、家族の役割は国家と市場に代替されるようになり、結婚のあり方にも変化が生じた。
人口統計上の変化の中でも、特に出生率の低下と平均余命の延長は、晩婚化と配偶者との離婚・死別後の期間の伸長につながっている。子どもがひとりやふたりなら婚期は遅くてもいいし、結婚の必要性がないと考える人も出てくる。また、少人数の家庭で育った子の多くは、将来、少人数の家庭を築くだろう。
男女の平等が進み、女性の社会的役割が変わったこともシングルの増加に寄与する大きな要因だ。経済的な側面に目を向けると、先進国では経済的困難を理由に結婚を遅らせたり、誰かと一緒に暮らすメリットを見出せないため、あえて結婚を選ばない若者が増えていたりする。一方でインドのような経済発展を遂げている国では、若者たちが経済的に独立できるようになり、伝統的な価値から離れて大都市で大量消費の生活スタイルを送るようになっている。
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