「選択的シングル」の時代

30カ国以上のデータが示す「結婚神話」の真実と「新しい生き方」
未読
「選択的シングル」の時代
「選択的シングル」の時代
30カ国以上のデータが示す「結婚神話」の真実と「新しい生き方」
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「選択的シングル」の時代
出版社
出版日
2023年06月13日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

少子化が切迫した問題だと叫ばれるようになった近年では、重要な対策として、婚姻数の増加のための様々なアイデアが出されている。これまで結婚は人生のひとつの目標であり、「勝ち組」と「負け組」という言葉からもわかるように、既婚者は独身者よりもステップアップした人だと考えられてきた。しかし、「幸福の形」が人それぞれなのであれば、個々の価値観に沿った人生の選択がなされても良いはずだ。本書を読むと、結婚や出産の奨励は、特定の価値規範の押しつけであることに気づかされる。

本書は30カ国以上のデータや研究調査、事例に基づいた、「シングル」の実態や未来像を論じた一冊だ。シングルの増加は世界的な現象であり、欧米や日本のみならず、南米や中東、アフリカでも増えているのだという。

また、今は結婚している人も、将来的に離婚や死別などでシングルになる可能性もある。望む・望まないにかかわらず、誰もが人生のどこかでシングルとして生きることになるのである。

本書では、シングルは孤独や不幸だという見方は偏見であること、幸福なシングルの生き方はどのようなものであるか、そして多様な生き方のひとつとして社会はシングルとどう対峙していけばいいのかなどが詳しく解説されている。

自分にとって価値ある生き方を見出し、自らの意志で人生を選択できるようになれたら、結婚してもしなくても、あらゆる人が自分らしく生きられる社会になるはずだ。本書はそんな示唆を与えてくれる。

ライター画像
大賀祐樹

著者

エルヤキム・キスレフ(Elyakim Kislev)
イスラエル・ヘブライ大学の公共政策・政府学部で教鞭を執る。マイノリティー、社会政策、シングル研究が専門。米国コロンビア大学で社会学の博士号を取得したほか、カウンセリング、公共政策、社会学の3つの修士号を有する。リーダーシップ、移住、社会・教育政策、エスニック・マイノリティー、グループ・セラピー、シングルなどのテーマで、多くの記事・書籍を執筆・編纂している。

本書の要点

  • 要点
    1
    「早く結婚したほうが良い」「シングルの人たちは不幸だ」という考え方は偏見である。多様なアイデンティティーが認められていったように、シングルの生き方も認められなければならない。
  • 要点
    2
    シングルの数は世界的に増えており、今後も増え続けるだろう。
  • 要点
    3
    人々を結婚へ駆り立てたのは孤独への恐怖だったが、シニア期にはむしろシングルのほうが幸福度は高いことがわかっている。
  • 要点
    4
    結婚しているか否かにかかわらず、友人などとの社会的なつながりを深め、社会関係資本の力を引き出せるようになることがウェルビーイングの向上につながる。

要約

増え続けるシングル

シングルへの偏見

多様な性的アイデンティティーや民族、政治的意見に対して開かれた態度がとられるようになった現代でも、シングル(独身)の人たちは偏見にさらされ、早く結婚するようにせかされている。

一般的に、既婚者に対しては「成熟している」「幸せ」といったイメージが持たれているが、シングルの人たちは「未熟」「不幸」「孤独」だとみなされている。このようなステレオタイプはシングルの人たちを傷つける一方で、「結婚」という人生の重大事に準備ができないまま踏み切ってしまい、後になって「間違った決断をした」と後悔する人を生み出す要因にもなっている。

人口統計上、世界中で急速に未婚の人たちが増えている。アメリカの新生児のおよそ25%は一生結婚しないと予測されており、中国の単身世帯の割合は、1990年から2010年のあいだに10%も上昇している。シングルでいることは世界的現象になっているのに、それを認めない文化はいまだに根強い。

「結婚しなければならない」というプレッシャーは、ときに結婚しているかどうか、という事実以上に人々を不幸にしてしまう。しかし、シングルという生き方の豊かな可能性に気づき、受け入れることができれば、ひとりで生きるにせよ結婚を選ぶにせよ、より満足した人生を送ることができるだろう。

世界中で増加するシングル
andresr/gettyimages

シングル増加の傾向は先進国で顕著だが、ここ数十年で南米や中東、アフリカ諸国にも広がっている。人類はこれまで家族を社会の基盤としてきたが、産業革命と現代福祉国家の誕生を経て、家族の役割は国家と市場に代替されるようになり、結婚のあり方にも変化が生じた。

人口統計上の変化の中でも、特に出生率の低下と平均余命の延長は、晩婚化と配偶者との離婚・死別後の期間の伸長につながっている。子どもがひとりやふたりなら婚期は遅くてもいいし、結婚の必要性がないと考える人も出てくる。また、少人数の家庭で育った子の多くは、将来、少人数の家庭を築くだろう。

男女の平等が進み、女性の社会的役割が変わったこともシングルの増加に寄与する大きな要因だ。経済的な側面に目を向けると、先進国では経済的困難を理由に結婚を遅らせたり、誰かと一緒に暮らすメリットを見出せないため、あえて結婚を選ばない若者が増えていたりする。一方でインドのような経済発展を遂げている国では、若者たちが経済的に独立できるようになり、伝統的な価値から離れて大都市で大量消費の生活スタイルを送るようになっている。

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要約公開日 2023.10.01
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