「年齢にとらわれず新しいことに挑戦したり、自分らしさを追求したりする人を目にする機会が増えている」「元気で若々しいシニアが多い気がする」「最近の若者はやけに大人びている」――このように、ここ最近、生活者の年齢と意識・価値観の関係性が薄れてきたと感じている人もいるかもしれない。
生活者の意識と行動を研究している著者らにも同様の感覚があった。そしてあるとき、その変化が長期的なスパンでデータに表れていることを発見した。
著者らが所属する博報堂生活総合研究所では、1992年から「生活定点」調査を続けている。2022年に30年という節目を迎え、それまでに集まった膨大な生活者データを見返していた著者らは、多くのグラフに特徴的な動きが見られることに気づいた。
一例として、「将来に備えるよりも、現在をエンジョイするタイプである」という項目についての回答を見てみよう。「はい」と答えた人は、1992年では39.0%、2022年では41.4%だ。1992年から2022年までの数値は40%前後で、30年間ずっと変化していないように見える。
だが、年齢に注目してみると、別の傾向が見えてきた。1992年時点では年代別の数値に開きがあったのに、年々近づいてきているのだ。若年層で「今をエンジョイしたい」という意識が減少する一方で、高年層では増えていて、結果的に年代間の違いが小さくなっている。
このように、いくつものデータにおいて、年代による差が狭まっていることがわかった。そこで考えたのは、生活者の年代に基づく価値観や意識の違いが徐々に小さくなっているのではないかということだ。そしてこの現象を「消齢化」と命名し、調査・研究を始めた。
とはいえ、消齢化が起こっているという確信を得るには時間がかかった。「年代による違いが小さくなっている項目」と「年代による違いが大きくなっている項目」の数を比較したり、「特定の分野でだけ起こっている現象なのではないか」と疑って調べたり、別の調査の傾向を見てみたりといった検証を重ねた結果、「これは無視できない大きな潮流だ」という確信を得られたのだ。
そこで著者らはまず、消齢化の背景を探ることにした。手掛かりになったのは「生活定点」のグラフの動きだ。グラフを見直してみると、変化の仕方に3つのパターン(型)が見つかった。次の項では、それぞれのパターンを紹介したい。
1つ目のパターンは、各年代が増加しながら近づいていく「上昇収束型」だ。「携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだ」という項目はこのパターンに該当していた。
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