自分自身や周囲の環境にある「ネガティブなもの」をなくしたいと考える人は多い。ネガティブなものをいかになくすかというテーマは、これまで心理療法でも重視されてきた。
「精神分析」を創始し、心理療法の祖ともいえるジークムント・フロイトは、ネガティブなものを無理に抑え込むことで、コントロールできない「症状」として現れると考えた。そこで、ネガティブなものが自由に出てこられるようにすれば症状が解消できるのではないかと、患者が頭に浮かんだものをそのまま話すように求める「自由連想」という治療法を生み出した。精神分析の後に誕生した「認知行動療法」ではネガティブな「考え方」が問題であるとし、その考えに固執しないことで救われるようになると考えられている。
このように、ネガティブなものをなくすためにこれまで多くのアプローチがなされてきた。だが、ネガティブなものが全てなくなったとき、我々は本当に幸せになれるのだろうか。
日本は集団主義社会であり、自分の気持ちよりも集団の一員であることを優先し、周囲に合わせる人が多い。また、日本人は遺伝子的にネガティブになりやすいともいわれている。そしてこれまで、互いのネガティブな部分を矯正しながら、日本は発展してきた。そんな日本では、周囲の目を気にして心身の不調に陥り、自分のネガティブな面を恥として相談さえできずに死を選ぶ人が後を絶たない。2022年に発表された世界幸福度ランキングでは、日本は先進国の中で最低の順位となった。
ネガティブなものを排除しようとする社会は、個々人の「自分らしい生き方」は許容されず、不幸を招いてしまう。自分らしく、そして幸せに生きるためには、ネガティブばかりを探すのではなく、「ポジティブ」にも目を向ける必要があるのだ。
3,400冊以上の要約が楽しめる