お金以前

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ジャンル
出版社
出版日
2023年02月13日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

お金は大事に決まっている。自分や家族の将来のために少しでもお金を増やしたいと思うのは自然なことだ。近年の金融教育の過熱に伴い、投資に興味を持つようになった人も多いことだろう。

投資について調べていくと、「あれを買うべき」「これが必勝法」といった、具体的な投資法を紹介する情報に行き当たる。そうした情報をどれだけ信頼していいのかと考え出すと、なかなか最初の一歩が踏み出せない。

30年以上世界の大手金融機関で投資に携わってきた著者が本書で目指すのは、「お金のそもそも」を説明することだ。収入も価値観も人それぞれである以上、最適な投資先は自分の状況に合わせて判断するしかない。だったら、お金のリテラシーを身につけることが必須だ。

本書の魅力は、なんといってもわかりやすいことにある。語り口はやさしく、押さえておきたい本質的な内容をしっかりと理解しながら読み進めることができる。中立的な立場から、正しい投資方法・おすすめできない投資方法について具体的な解説があるのもありがたい。

「正しい投資法」自体は定番というべき方法だが、本書を読み終えた後には、それがなぜ「正しい」と言えるのか、一段高い解像度で理解できるようになっていることだろう。自分や家族の大切なお金を守りたい、お金を少しでも増やしたいという方に本書をおすすめしたい。お金について正しい判断ができるようになるための基礎知識を身につけさせてくれる。

ライター画像
池田明季哉

著者

土屋剛俊(つちや たけとし)
一橋大学経済学部卒。ノムラ・バンク・インターナショナルPLC(英国ロンドン)にて為替ディーラー、デリバティブを使った新商品の開発・販売に従事する。野村證券業務審査部(現リスクマネジメント部)にてデリバティブ取引に関するカウンターパーティークレジットリスク管理、個別企業クレジット分析・調査を担当。ノムラ・インターナショナル(ホンコン)LIMITEDにて発行体の引受審査などアジア・パシフィックの非日系リスク管理部門を統括。チェース・マンハッタン(当時)にて、東京支店審査部長。同行のアジア・パシフィック部門におけるデリバティブ取引信用リスク数量化・管理業務の責任者を兼任。また、99年から01年まで、明治大学非常勤講師を兼任。野村證券金融市場本部チーフクレジットアナリスト、同社グループのクレジットリスク分析チームを統括、クレジット投資ストラテジーを作成。野村キャピタルインベストメント審査部長、M&A企業買収に関する融資業務の審査責任者ののち、バークレイズ証券クレジットトレーディング部ディレクター。社債やローンなどアジアのクレジットに関する投資・トレーディングを世界のヘッジファンドと共に主導する。その後みずほ証券金融市場本部シニアエグゼクティブ。社債のトレーディング、ヘッジファンド対応で世界を相手にクレジットビジネスの統括管理を行う。2021年より独立して土屋アセットマネジメントを創立。クレジットに投資する投資会社の代表取締役社長兼CIO(投資責任者)として現在に至る。著書に『入門社債のすべて 発行プロセスから分析・投資手法と倒産時の対応まで』(ダイヤモンド社)、『日本のソブリンリスク 国債デフォルトリスクと投資戦略』(東洋経済新報社 共著)などがある。専門書ではない本は初。

本書の要点

  • 要点
    1
    収入も価値観も、目指す人生も人それぞれである以上、お金のリテラシーを高めて自分で判断できるようになるのがベストだ。表面的な投資情報を得るのではなく、「そもそも」を理解できるようにしよう。
  • 要点
    2
    物を買うときには自分なりの「適正価格」を判断するものだが、株などの世界では「言い値で買う」という判断をしてしまう人が少なくない。
  • 要点
    3
    正しい投資は「平均株価に長期投資する」こと。つまり、平均株価を構成している株式に基づいている投資信託に投資することだ。

要約

お金の知識はけっこう難しい

お金のリテラシーを上げよう

長年金融の仕事をしてきた著者は、プライベートでもお金や投資に関する相談をよく受けてきた。収入も価値観も、目指す人生も人それぞれ異なるので、結局のところはみんながお金について理解を深め、自分で判断できるようになるのがベストだ。

だが、お金について「そもそも」を説明するのはなかなか難しい。そのうえ、お金に関するしがらみのない情報は手に入れづらい。

証券会社や銀行、ネットで情報を発信している人たちは、それぞれの立場から自分達の利益が最大化するような商品をすすめてくる。その行為は一方的に責められるものではない。知識さえあれば自分にとって適切でない投資先を選ばずにすむはずだ。

「あれを買うべき」「これはやめるべき」といった情報を鵜呑みにし、未来の変化にどう対応すべきかわからないままいるのは危うい。誰かに聞いた通りにお金を動かしているだけでは、危険が迫っていても自分で気づけないかもしれない。

この本のゴールは、読者のお金のリテラシーを上げることだ。「お金を増やす」うえでいちばん大切なのは、「一般常識」を増やすことにほかならない。お金のリテラシーが上がり、その後の生活や人生が少しでも豊かになればと願う。

お金のことを知るなら「資本主義」から

お金の判断の根底は「プライシング」
IvelinRadkov/gettyimages

そもそもお金とはなんだろうか。生まれたときからお金があるのが当たり前の世界に生きていると、わざわざそんなことは考えないかもしれない。だが、それはルールを知らずにカジノに行くようなものだ。

たとえば、信頼のおけそうな証券外務員から「この株はとてもいい会社の株です。きっと上がりますよ」とすすめられ、購入を決めたとする。だが、その後株価が下落し大損を被る。こんな話はよくある。

相手に文句が言いたくなるところだが、ここでいちばん問題にしなければならないのは、「その株はいくらであるべきか」を自分で考えずに買う判断をしてしまうことだ。

普段の買い物だったら、多くの人は自然と「この値段なら買い」「これなら買わない」と、おのおの適正価格を決める作業をしているはずだ。この作業は「プライシング(値決め)」と呼ばれる。

ところが、株の話になると、突然「言い値で買う」人が増えてしまう。これは、「とてもおいしいキャベツ」と言われて、1玉10万円をぽんと支払うようなものだ。金融リテラシーが低い人が存在する株の世界では、こんなとんでもないことが簡単に起きてしまう。

正しい投資を行う上では、本質的なことを理解しておくことが極めて重要だ。

お金を考えるために「世の流れ」を知る

たとえば、「株の投資には目安があって、あるべき株価は1株あたりの年間利益の15倍くらいがよい」という通説的な基本知識を覚えたとする。1株あたりの儲けが100円であれば、その15倍である1500円があるべき株価という計算になる。では、株価が1300円だったら、「買い」という判断でよさそうに見える。

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要約公開日 2023.09.08
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