私たちは、仕事で困難に直面したり苦労したりすると、もっと楽な仕事はないだろうかと考えてしまうものだ。その考えにとらわれているとき、仕事は「パンを得るための手段」にすぎない。どうせパンを得るための手段なら、楽なほうがいいと考えてしまうのだ。
しかし、「食べていくために働く」という「仕事の思想」が、私たちから「仕事の喜び」を奪ってはいないだろうか。生活のために働くという感覚は、人生を味気ないものにしてしまう。
また、巷には、仕事について「サバイバル」「生き残る」という言葉を使って語る本や雑誌特集も多くみられる。現代のビジネスパーソンは「どうやったらサバイバルできるか」「どうすれば生き残れるか」ばかりが気になるようだ。
だが、私たちが一生懸命に仕事をするのは決して「食べていくため」でも「生き残るため」でもない。もっと素晴らしい目的があるはずだ。
働く目的を見出し、よりよく働くためには、深みある「仕事の思想」が必要だ。「仕事の思想」は、仕事をする上での「錨」となる。錨があればこそ、どんな荒波に揉まれようと、決して流されることなく立ち向かえるのだ。
心理学者のエイブラハム・マズローが考案した「欲求の五段階説」によると、人間は欲求の段階を一つずつ実現しながら上がっていく。まずは「生存の欲求」、次に「安全の欲求」だ。生存と安全が保障されてはじめて、「帰属の欲求」「尊敬の欲求」「自己実現の欲求」へと向かっていける。
残念ながら、「生活の糧を得るために働く」「生き残るために働く」現代日本は、いまだに「生存の欲求」「安全の欲求」の段階にとどまっていると言えるだろう。
では、我々はなぜ働くのか。本書ではこの問いの答えを模索しながら、深みある「仕事の思想」を探し求めていく。
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