ある日、著者のもとに経営者が相談に訪れた。なんでも彼の会社では、「会社で働く意義を感じられない」と突然辞める社員が増えているのだという。コロナ禍でも売り上げは好調で、働きやすさにも配慮している。それなのになぜ社員は辞めていくのだろう。
コロナ禍に入り、多くの会社でリモートワークが導入された。物理的に離れて仕事をするようになると、このような問いが生まれてくる。「わざわざ会社という群れで働く意味はなんだろう? 一人でも仕事はできるのではないか」。著者の会社でも、この時期に主要なメンバーが次々と会社を離れていった。著者は「この会社は必要なのだろうか」と追い詰められ、廃業すら考えるようになった。
そこで著者は「企業理念づくり」に着手した。残ったメンバーたちと対話を重ねながら、自分たちの理念や組織の存在意義を言語化したのである。その一連の作業を通して、著者はこれからの時代に必要な「あたらしい理念経営」のあり方、すなわち「理念経営2.0」にたどりついた。
今までは儲けさえしていれば企業は生存することができた。しかし今は「社会にとっていいことをしているか」が問われる時代だ。事業の社会的意義を示せない会社は、存続が難しくなっている。
働く人の意識も変わってきている。特に20代~30代は給料の額よりも仕事に「意義」を求める人が増えている。会社は近い将来「利益を生み出す場」から「意義を生み出す場」にシフトしていくだろう。社員が貢献したいと思うような会社になるには、会社と社員個人の理念が重なり合う必要がある。
従来の経営スタイルは、社長の価値観や理念を一方的に植えつける「理念経営1.0」が主流だったが、これからの企業理念は「みんなの物語」がベースとなる。「みんなの価値創造の物語を生むためのソース」として企業理念を位置づけるあり方が「理念経営2.0」なのである。
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