CFOが主に対話するカウンターパートは「投資家」である。中でも海外の機関投資家は、気を遣う相手だ。
著者が三菱UFJフィナンシャル・グループのCFOに就任し、初めて海外投資家向けにIR活動をした際のことだ。アメリカのファンドマネージャーから、こんな質問を投げかけられた。「君のオフィスの設定温度は何度だ?」。質問の真意をつかめない著者に対し、ファンドマネージャーは「グーグルやアマゾンは21℃に設定している」という。人間は少し寒いくらいの方が、頭が働くというのだ。そして「優秀な若者のアニマルスピリッツを掻き立て、その能力を最大限に活かすことが経営者の役割」だと続けた。
アニマルスピリッツとは、「実現したいことに対する非合理的なまでの期待と熱意」を指す。日本は企業経営から精気が失われるとともに、アニマルスピリッツをなくし、個人も企業もリスク回避的な行動を取るようになっているというのが著者の分析だ。
CFOへの第一歩は、投資家が期待するリターンである「資本コスト」を理解することである。資本コストの計算には、「CAPM(資本資産価格モデル)」を用いる。CAPMの式は「リスクフリーレート」+「ベータ(β)×市場リスクプレミアム」で表される。
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