経営戦略をどのようにつくればよいかというのは、あらゆる経営者が抱える悩みだろう。ではすぐれた戦略をつくるために必要なものはなにか。それは「センス」としか言いようがない。
英会話や財務諸表の読み方、現在企業価値の計算などであれば、スキルを身につければなんとかなる。しかし戦略を創るというのは、スキルだけではどうにもならない仕事だ。
「センスがいい」とはどういうことか、一言で言語化できる人はいない。一つひとつの「センスがいい」戦略の事例に当たり、その文脈で「センスの良さ」を読み解き、掴み取っていく。センスを磨くためにはそうした帰納的方法しかあり得ないのである。
どうすればセンスを磨くことができるのだろう。即効性のある答えはないが、物事に対する好き嫌いを明確にし、そのことについての自意識を持つことが、センスの基盤を形成することは間違いない。鋭敏な直感やセンスの根本には、その人固有の好き嫌いがあるものだ。会社内での議論や意思決定では、好き嫌いについての話は意識的・無意識的に避けられがちである。会社内の判断を「好き嫌い」で行うと、意思決定の組織的な正当性を確保しにくい。そのため客観的な「良し悪し」で物事を決めてしまいがちだ。
だが、実際には優れた会社ほど好き嫌いのレベルで議論が交わされているように感じられる。「こっちのほうが面白そう」という理由で物事を判断したり、お互いの好き嫌いを許容する文化があってもいいはずだ。好き嫌いでセンスが磨かれるのであれば、仕事で好き嫌いを言い合う会社ほど、センスのある経営人材が育つのではないだろうか。
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