著者は6畳一間に4人、しかも借金まみれという家庭で育った。父はギャンブルや酒に興じて無職。働き手は母親のみで、常に家計は困窮したという。しまいには父が失踪し、成田家は自己破産に追い込まれる。喪失感に見舞われた母は精神が不安定になり、ノイローゼにもなってしまう。14歳だった成田少年も無気力となり、勉強も手につかない状態だったという。
ただそんななかでも、著者は自身の置かれた状況を客観的に俯瞰し、「人生で起こる出来事には、すべて前向きな意味があるはずだ」と肯定的な見方をしていたそうだ。そして、苦境と向き合うことで「誰かに依存することばかり考えず、自分の人生を生きる」という自覚も生まれたという。
「すべての経験が学びであり、プラスになる」。この発想こそが、たとえ厳しい状況であっても前向きに日々を送ることができた理由だ。母のノイローゼ、両親の離婚、経済的困窮―――そのすべてを「悲劇」ではなく「社会を学ぶ好機」と捉えたのだ。
自立した人間になるためには、自分から一歩踏み出し、変わることが大切である。そこで手始めとして、兄・成田悠輔さんに「読書リスト」を作ってもらった。当時の成田悠輔さんは東大受験を控えた麻布高校の3年生で、すでに哲学的素養を身につけていた。その兄から教えてもらった「読むべき本」を一つひとつ読破していく。その経験は多様性に触れる原体験となり、「今までとは違う自分」との出会いにもなった。人と同じことをしていれば、「おおむね人と同じ成果に落ち着く」。だから、自分の行動を変えることが大事なのだ。
そのほかにもいろいろな映画や音楽に触れたり、東大の授業に潜り込んだりして、自身の視野を広げていく。さまざまな情報や外の世界とつながることで、物事を複眼的にみる力の大切さを実感していった。
自分の軸、個性は誰かと比較したときに相対的に表れるものである。自分の強みを考える場合には、頭の中で強くイメージできる人を思い浮かべて、その人と比較してみると、オリジナルな特徴が見えてくる。
それでも強みがわからない場合は、知識や情報が足りておらず、自己理解を進められていないはずだ。多様な知識や情報と接していると、ワクワクすることが必ず飛び込んでくる。そして、「このテーマを人生に取り入れるとしたら」と、目的意識に変えてみよう。
強みを考えることは「欠点を知る」ことでもある。欠点に目を向けることで嫉妬心やコンプレックスを感じることもあるだろうが、「長所と短所は紙一重」だ。「コンプレックスは強みに反転できる」と解釈できれば、それ自体が「自分を成長させる強力な武器」になる。
自分に自信が持てない、何をしていてもモヤモヤする。そんな無力感を覚えるのは適切な目標を設定できていないからかもしれない。
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