「パラグラフ・ライティングは、論理的な文章を書くための、世界標準の書き方」である。欧米では大学で1年以上指導を受けるのが普通だが、日本の学校教育にはほとんど登場しないため、大多数の日本人は世界に通用する論理的な文章を書くことができない。
伝わる文章には3つの条件がある。
1.大事なポイントが30秒で伝わる。
2.詳細もごく短い時間で読める。
3.内容が論理的で説得力を持つ。
伝わる文章は、最後まで読まなくても結果や結論がすぐにわかる。人は、文章のポイントだけを見て、読むべき文章かの優先度を判断する。だから、詳細まで読まなくてもポイントが30秒で理解できるようにすることが重要なのだ。
また、伝わりやすい文章は、詳細説明の部分もきわめて短時間で読むことができる。したがって、読むべきところと読まなくてもいいところがはっきり区別できるようにしなければならない。
そして、ロジックの裏付けが物を言う。特にビジネス場面では、読み手がその文章をもとに意思決定しなければならないことが多い。納得感のある明確なロジックを示す書き方がある。
「伝わらないのは、読み手ではなく、書き手の責任」だ。自分の書き方を過信してはいけない。
人は、短期メモリと長期メモリにある情報を組み合わせつつ、メンタルモデルを作って情報を高速処理しようとする。わかりやすい文章とは、読み手にメンタルモデルを作らせることでもある。
短期メモリには7±2個の情報を約20秒間保存できる一方、長期メモリは「ほぼ無制限の情報をほぼ永久的に」保存可能だ。人は、目や耳などから短期メモリに一時保管された情報を、長期メモリに保存されている関連情報を使いながら処理する。この情報処理を素早く行うために、長期メモリに保存されている「関連がありそうな情報」があらかじめ活性化している。
頭の中で形成されるメンタルモデルは、長期メモリでの関連情報の活性化と情報の高速処理に役立てられる。これは、入手した情報を自分なりに理解した世界のことである。たとえば「信号機」という情報が入ってきたときに頭の中でイメージする、信号機の機能や形のことだ。メンタルモデルにより、入手した情報の関連情報が活性化された状態になる。読み手は次の関連情報を予想しながら文章を読み進めるので、思った通りであれば情報は高速で処理される。予想が外れると、メンタルモデルの修正で情報処理が遅くなる。
したがって、先に概略を述べることで読み手に明確なメンタルモデルを作らせ、その通りに文章を展開することが大切だ。
強調のポジションは、文章のかたまりごとの最初と最後の部分だ。かたまりは、単語のかたまりである文、その集合体のパラグラフ、そのまとまりである階層、そして文章全体のすべてを指す。全体を読むとは限らない文章の場合は最初のポジション、全部聞くのが前提のプレゼンテーションでは、より記憶に残りやすい最後のポジションの重要度が高い。
「情報を強調するには、情報数を絞ることが重要」だ。そのほうが記憶に残りやすい。伝えたい情報が10個ある場合でも、3つにまとめると効果的になる。ただし、網羅性をアピールするなど内容よりも「量が多いこと」を強調したいときは、情報をとにかくたくさん羅列する場合もある。
文章は、「結果や結論などの重要な情報をまとめたパラグラフ」、つまり、「総論」から始めよう。総論は文章の始めだけでなく、階層ごとに設ける。それに沿って「各論のパラグラフ」を展開し、最後に「結論のパラグラフ」を置く。
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