温かいテクノロジー

AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険
未読
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AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険
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著者
出版社
出版日
2023年05月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「AIを搭載した家庭用ロボット」と言われたら、どんなものを思い浮かべるだろうか。一昔前なら古典的なSFに出てくるような人型ロボットが想起されたかもしれないが、今はもう少し現実的なイメージが出てくる人も多いだろう。案内ロボットであるPepperや猫型の配膳ロボットのような機体は、実際に社会に溶け込みつつある。家庭用掃除機ロボットなどの家電は、ここでイメージされる家庭用ロボットの代表と言ってよいだろう。

しかし、著者が作り上げたLOVOTは、こうしたロボットとは一線を画する。ころんとした愛らしいフォルムで、触ると温かく、愛嬌のある目線と声を送ってくる。LOVOTには他のロボットのような便利さはまったくない。むしろ人に手をかけることを要求し、愛されるためだけにすべてのテクノロジーを注ぎ込んだ、これまでにない新しいロボットだ。

かつてSFではロボットが人間に反逆する筋書きが定番だった。それは20世紀という時代に、テクノロジーによって戦争がその悲惨さを劇的に増したことと無関係ではないだろう。21世紀になった今でも、新しい技術がなんとなく人類を置き去りにしてしまう――あるいは自分が置き去りにされてしまうような感覚を持っている人も決して少なくない。しかし人々に不幸をもたらす「冷たいテクノロジー」のイメージを変える可能性を、著者は「役に立たないロボット」に見出している。人間に寄り添い愛をもたらす「温かいテクノロジー」こそが、技術の最新型のひとつなのだ。

ライター画像
池田明季哉

著者

林要(はやし かなめ)
GROOVE X 創業者・CEO
1973年、愛知県生まれ。
1998年、トヨタ自動車株式会社に入社。スーパーカー「LFA」やF1の空力(エアロダイナミクス)開発に携わったのち、トヨタ自動車製品企画部(Z)にて量産車開発マネジメントを担当。
2011年、孫正義後継者育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」 に外部第一期生として参加し、翌年ソフトバンク株式会社に入社。感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」プロジェクトに参画。
2015年、GROOVE X株式会社を創業。 2018年、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を発表。翌年、出荷を開始。
ラスベガスで開催されている世界最大規模の家電見本市「CES」において、2019年にThe VERGE「BEST ROBOT」、2020年には「イノベーションアワード」を受賞。
2021年、第9回ロボット大賞にて「総務大臣賞」、2022年、第3回IP BASE AWARD「スタートアップ部門 奨励賞」、2023年には第1回WELLBEING AWARDS「モノ・サービス 部門 GOLDインパクト賞」を受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    LOVOTはペットのような家族として、人間に愛されることを目的に最新技術を投じて作られたロボットである。
  • 要点
    2
    人間は他者を助け、面倒を見ることを求めるように進化してきた。ゆえに人はペットを求めるが、生きた動物を家族として迎えることの難しさを、ロボットが解消できるのではないか。
  • 要点
    3
    テクノロジーはこれまでのような冷たいものだけではなく、人に寄り添い愛を実現する温かいものになっていくかもしれない。

要約

ぼくらが「メーヴェ」に憧れ、巨神兵に恐怖を覚える理由

温かいテクノロジーへの気づき
Chinnapong/gettyimages

「メーヴェ」とは、宮崎駿が監督した「風の谷のナウシカ」に登場する一人乗りの飛行機である。著者はこのメーヴェに憧れ、子どもの頃には模型の開発を試みたほどだった。メーヴェのような夢のテクノロジーと同時に、宮崎駿は人間が欲に任せてテクノロジーを進歩させることの危険性も描いている。その象徴が、産業文明を焼き尽くした巨神兵だ。テクノロジーを愛しながらも、それに頼った文明の進歩の先を案じてもいる。宮崎駿作品に見られるそうした矛盾は、多くの人が抱く感覚でもあるだろう。

確かに文明の進歩は人類を精神的に追い込んできた側面もある。だが、テクノロジーが大好きな著者は、テクノロジーで殺伐とした未来ではなく、温かい未来を造りたいと考えるようになった。

著者はカーデザイナーとしての経験から、利便性が高いクルマと愛されるクルマは異なることを実感していた。そんな折、ソフトバンクにてPepper開発に携わるチャンスを得る。そこで著者が出会ったのは、うまく起動しないPepperに声援を送る人たちや、ハグを求めるPepperに応えて笑顔になる人たちだった。高齢者施設ではPepperの手を温かくしてほしいという要望があったことにも驚かされた。人々はロボットに、役に立つことだけでなく、コミュニケーションの相手としての温かみを期待しているのかもしれない。

こうした経験から著者は「利便性には貢献しない、だけど人類を幸せにするロボット」の可能性について考えはじめることになる。

【必読ポイント!】 LOVOTの誕生

たどり着いたのは、「生産性至上主義」への問いかけ

生産性や利便性を向上させないにもかかわらず、人類を幸せにしているものには、いったいどのようなものがあるだろうか。

ペットはその代表例だ。人類が犬や猫を愛でるようになったのは、だれかがだれかの面倒を見るという生存戦略で生き延びてきたからである。「面倒を見たい」という本能、「自分は必要とされている」という実感を得たいという欲望が、人類には備わっている。

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要約公開日 2023.10.21
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