挫折からのキャリア論

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挫折からのキャリア論
出版社
出版日
2023年05月29日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

大きな失敗や挫折をしたとき、どうやって立ち直ればよいだろうか。その方法を「飴玉」という切り口で教えてくれるのが本書である。

著者の山口真由さんは大学の研究者やテレビのコメンテーターとして活躍している。その経歴は華々しく、東京大学法学部を「オール優」で卒業後、財務省、法律事務所で働き、米国のハーバード・ロースクールを卒業し、帰国後は東京大学大学院法学政治学研究科博士課程を修了した。

勝ち組のキラキラした人生を歩み、挫折から最もほど遠い存在と思うかもしれない。しかし、そんな彼女は、就職してすぐ仕事ができずに冷たい目で見られ、上司から退職を勧められ、転職に向けた面接が全て落ちた過去をもつ。逃げるように留学したが、婚約者と破局し、帰国後は収入激減で苦しんだという。

そんな挫折を経験したときの悔しさや悲しみなどの感情を結晶化したのが「飴玉」だ。著者はこの飴玉を時々取り出して、当時の記憶を味わい、生きる糧にしている。著者は、特大飴玉という5つの経験を赤裸々に開示し、そのときの悔しさを前に進むエネルギーに変える「飴玉メソッド」を紹介していく。飴玉は自身の心の傷を癒し、立ち直る手段になると同時に、飴玉を部下や後輩に差し出すことで、その人たちのセーフティーネットの役割も果たすという。

失敗や挫折で落ち込んでいる人はもちろん、昔の傷を昇華できていない方にも希望の光を投げかけてくれる一冊だ。

ライター画像
児島奈美

著者

山口真由(やまぐち まゆ)
1983年、札幌市出身。2006年3月、東京大学法学部を卒業。同年4月に財務省に入省。08年に退官し、15年まで、弁護士として法律事務所に勤務。15年9月~16年8月、米ハーバード大学ロースクールに留学し、卒業。17年4月、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に入学。17年6月、米ニューヨーク州弁護士登録。20年3月、東大大学院を修了。20年4月から信州大学特任准教授となり、翌年、特任教授に就任。近著に『世界一やさしいフェミニズム入門 早わかり200年史』(幻冬舎新書)、『アメリカにおける第二の親の決定』(弘文堂)、『「ふつうの家族」にさようなら』(KADOKAWA)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    失敗や挫折をしたときの悔しさや悲しさといった感情を結晶化したのが「飴玉」だ。
  • 要点
    2
    著者の人生最大の飴玉は、法律事務所での仕事が評価されず、退職をすすめられたことだ。心が折れて誰も信用できなくなった。同じように悩んでいる人がいたら、この飴玉を差し出して救いたいと考えている。
  • 要点
    3
    飴玉のつくり方は、挫折をしたときにその内容を書き出し、何度も書き直して第三者へ話すことだ。その過程でさまざまな気づきを得られる。

要約

なぜ人生に「飴玉」が必要か

本書のカギをにぎる「飴玉」とは?

避けられなかった失敗、 失意、喪失、そして挫折。著者はそのときの悔しさや憤り、虚しさ、悲しさなどのさまざまな感情や心の傷を、できるだけ新鮮なまま凝縮させて結晶化したいと考えている。 そして、時々それらをリアルに思い出し、味わうのだ。これが本書のカギを握る「飴玉」という概念である。

著者は、米国のハーバード・ロースクール留学中に、 前職の弁護士事務所を辞めたときの人生最大の挫折を思い出すようになった。当時の悔しい感情を繰り返し味わう行為は、飴玉をなめている感覚に近いと思うようになり、「飴玉」について意識し始めたのだ。

飴玉をなめると、当時のさまざまな負の感情がよみがえり、苦しさもある。だが、「もう同じような悔しい思いをしないために、苦しくても努力を継続するんだ」と、自分を鼓舞してくれる。

飴玉をつくることは失敗や挫折から逃げずに正面から見据えることであり、作成過程でさまざまな気づきが得られる。そして飴玉は自分でなめる以外に、他人に差し出すこともでき、相手の学びにもなる。今の著者の人生には、欠くことのできないものになっている。

「飴玉」が自分や職場を変える
kazuma seki/gettyimages

Webメディア「日経xwoman(クロスウーマン)」のインタビューで、2つの特大飴玉について赤裸々に話をした。初の告白への反応が不安だったが、読者からは、失敗経験を前向きにとらえた励ましのコメントが多数届いたそうだ。

著者は若い頃、教育をしてくれたり気にかけてくれたりする女性の先輩が職場におらず、孤独を感じていた。もしも読者からのコメントのように温かい助言をしてくれる先輩が当時いたならば、つらい場面も乗り越えて、人生が変わっていたかもしれないと考えている。

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要約公開日 2023.10.17
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