心の休ませ方

「つらい時」をやり過ごす心理学
未読
心の休ませ方
心の休ませ方
「つらい時」をやり過ごす心理学
未読
心の休ませ方
出版社
出版日
2006年10月18日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

人間には誰でも疲れてしまう時がある。価値観が複雑化し、人とコミュニケーションを取らずに生きていけない現代社会においては、もはや当たり前のことと言ってもいい。誰でも落ち込むことは避けられないが、中にはうつのように立ち直れないほど重い状態に陥ってしまう場合もある。こういった時にはどうすればよいのだろう。

まず休むことが必要だ、というのが本書の主張である。幼児期に承認を得られなかった子供は心のうちに憎しみを蓄積しており、それゆえ自分が認められることに執着しているのだという。そこから解き放たれるためには、とにかく休み、そして自分が周囲に対して過度な奉仕をしていないか、そうした執着を利用されて搾取されていないかを点検すべきである。自分を欺くことは、思っている以上のストレスとなって襲いかかるのだ。

とはいえ、自分の行動を日頃から省み、心理的に成長できていない部分があるから注意しなくては――と冷静に分析して落ち込みを回避することは難しいだろう。調子を崩してからではなおさらである。

本書の著者は心理学の大家として数多くのベストセラーを出している加藤諦三氏である。本書ではうつになるメカニズムを解きながら、心が疲れた人への処方箋が記されている。

スキーの初心者は、まず雪の上で長い板を装着したまま安全に転ぶ方法を教えられる。落ち込むことが多いという人だけでなく、「自分は元気だから大丈夫」という人こそ、いざという時のために心の休ませ方を把握しておいてほしい。

【※書影は「有隣堂限定カバー」Verです】

ライター画像
池田明季哉

著者

加藤諦三(かとう たいぞう)
1938年、東京に生まれる。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員をつとめる。現在、早稲田大学名誉教授、ハーヴァード大学ライシャワー研究所准研究員、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系ラジオ番組「テレフォン人生相談」レギュラーパーソナリティ。
著書に、『自分が「たまらないほど好き」になる本』(翻訳/三笠書房)、『ココロが壊れないための「精神分析論」』(宝島社)、『どうしても「許せない」人』(ベストセラーズ)、『たくましい人』『好かれる人』『だれにでも「いい顔」をしてしまう人』(以上、PHP研究所)、『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』『心の休ませ方』『自分のうけいれ方』『不安のしずめ方』(以上、PHP文庫)など多数。
【ホームページアドレス】 http://www.katotaizo.com/

本書の要点

  • 要点
    1
    生きることに疲れてしまった人は、何を置いてもまず休むべきだ。
  • 要点
    2
    親に承認されず、甘えを拒否されてきた子供は、心に憎しみ、恐怖、恨み、不安などのマイナス感情を溜めていく。感情を吐き出せずに限界を超えると、うつのようになってしまう。
  • 要点
    3
    うつ病者がマイナス発言をしたり、じっと動けなくなったりするのは、心に憎しみが積もっているからである。彼らが欲しているのは励ましではなく「認めてもらうこと」である。
  • 要点
    4
    人生は一度きりだ。人の期待にこたえるのをやめ、自分に誠実に生きよう。

要約

【必読ポイント!】なぜ生きることに疲れてしまうのか

親に愛情を搾取される子供たち

人は甘えたい時に甘えられないと傷つく。子供だけでなく、いくつになっても甘えの欲求を持った人は傷つきやすい。場合によっては親が子供に甘えるということも起こる。

たとえば、子供に「わー、おいしい料理!」と言ってもらいたくて料理を作っても、子供がそれほど喜ばなかったら、その親は子供をグチグチと責め立てる。感謝されると思っていたのに、期待はずれに終わったからだ。親は子供に拒否されたと思って傷つくのである。

親が子供に甘えるのは「親子の役割逆転」である。この場合、子供は親の甘えの欲求を満たさなければ責められるため、子供自身の甘えは否定される。こうした環境に育った子供は、人の好意を怖くて断れず、相手の不機嫌に怯えるような大人に育ってしまう。親から愛を搾取されると、憎しみ、恐怖、恨み、不安などのマイナス感情が心の底に溜まっていく。そしてその感情を吐き出せずに限界を超えると、ついにはうつになってしまう。

生きることに疲れたら休もう
AsiaVision/gettyimages

「親子の役割逆転」は外からはわかりづらく、そうでない親子関係とも同じように見えてしまう。しかし、その中で生き延びた子供は「よくここまでたどり着いた」というほど、苦しい思いで生きてきたはずだ。「生き延びた」だけでも奇跡なのである。

もしあなたが生きることに疲れた、もう何をするエネルギーも残っていないというのなら、とにかく休むべきである。「こんなことをしていられない」と焦る必要はまったくない。自殺もせず、犯罪も起こさず、ここまで頑張って生きてきただけでもすごいことなのだ。

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要約公開日 2023.10.15
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