餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?

読むだけで「会計センス」が身につく本!
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餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?
著者
出版社
出版日
2011年04月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「ビジネスパーソンなら、会計の知識があったほうがいいことはわかっている。でも……」本書はそんな人にぴったりの、ストーリー形式で会計の知識が身につく一冊だ。

主人公は社会人6年目の由紀。父が経営するアパレル会社「ハンナ」に新卒入社し、デザイナーとして活躍していた。

ところが、父が急逝したことで突如、社長に就任することとなる。経営の知識などまったくないし、やる気もない。おまけに、年上の部下たちは曲者ぞろいだ。

そんな由紀は、会計のプロである安曇のレクチャーを受けながら、会社の業績を徐々に回復させていく。読者は由紀とともに、会計の重要性に始まり、キャッシュフロー計算書の読み解き方、損益分岐点の計算方法、原価の考え方に至るまで、会計の基礎を一通り学ぶことができる。

要約者が特におもしろいと思ったのは、安曇が由紀に提示した「レクチャーは美味しい食事をしながら行うこと」という条件だ。在庫回転率の講義は寿司屋で、損益分岐点の講義は餃子屋で、といった具合にそれぞれのテーマにマッチした店が選ばれ、その店のビジネスを例に挙げて解説されるため、難解な内容も理解しやすい。次々に立ちはだかる難題に頭を抱える由紀に対し、安曇が軽快な語り口でアドバイスする描写も読んでいて心地いい。

キャッチーなタイトルに興味を抱いた方は、ぜひ本書を読み進めてみてほしい。楽しみながら会計知識を身につけられるだろう。

著者

林總(はやし あつむ)
公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)。1974年、中央大学商学部会計科卒業。外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外の企業に対して、ビジネスコンサルティング、ITを活用した管理会計システムの設計導入コンサルティング、講演活動などを行っている。
主な著書に、『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』(以上、ダイヤモンド社)、『騙されない会計』(PHPビジネス新書)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(中経出版)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    会計数値や決算書はだまし絵のようなものだ。疑いの目を持ってだまし絵を見て、数字の裏に潜む本質を的確につかむ必要がある。
  • 要点
    2
    理想の現金の流れは、営業キャッシュフローを黒字とし、そこで稼いだ現金を設備投資に回して、余った現金を配当金にすることだ。
  • 要点
    3
    限界利益と固定費という2つの概念が理解できれば、会社の利益構造が見えてくる。
  • 要点
    4
    投資をする際には、投資金額と、その結果としてもたらされるキャッシュフローの金額を考慮して判断すべきだ。

要約

プロローグ

突然の社長就任

「え、私が社長に!?」矢吹由紀はとまどった。急逝した父に代わり、アパレル会社「ハンナ」の新社長に選出されたためだ。大学卒業と同時にハンナに入社して5年。デザイナーの仕事を天職だと感じていた由紀の胸中に、父を憎む気持ちが湧いてきた。

翌日、メインバンクの支店長から、これまでの父とのやりとりについて説明を受けた。ここ数年、ハンナの業績は低迷していたため、リストラを断行するよう何度も忠告してきたという。ところが父は耳を貸さなかった。むしろブランドを増やし工場を増設した結果、ハンナは運転資金にも事欠くようになっていた。

支店長の考えはこうだ。新社長の由紀は経営の素人で、ハンナを立て直せるはずがない。できる限り早く貸付金を回収して、倒産による損失を抑えなければ――。

支店長から「リストラを実行してください。期限は今日から1年です」「今後追加の融資には一切応じられません」と勧告され、由紀の不安は頂点に達した。

安曇との出会い
Instants/gettyimages

役員に相談しても、誰も親身になってくれない。打つ手が見つからないまま、時間は空しく過ぎていく。

1カ月ほど経ったある日、母が意外な人の名を口にした。「同じマンションの安曇さんに相談したらどう? 公認会計士の資格を持っていて、今は大学院で会計を教えているそうよ」

由紀は部屋を飛び出し、安曇の部屋のチャイムを鳴らした。現れたのは片手にワイングラスを持った天然パーマの中年男性だ。安曇は「喜んで君の力になろう」と言いながら、3つの条件を出してきた。レクチャーは月1回で、学んだ内容は必ずその月に実行すること。レクチャーは美味しい食事をしながら行うこと。そして、報酬は1年後に由紀が払いたいと思う金額とすること、だ。こうして由紀へのコンサルが始まった。

【必読ポイント!】 築地の料亭

社長はまず会計を学ぶべきだ

翌週、由紀は安曇とともに、築地にある料亭の個室にいた。

その日の会議では、製品在庫が多すぎる件について、各部の部長たちがお互いに責任を押し付け合っていた。しかも彼らは議論の最後に「私たちに的確な指示を出すのが社長の仕事です」と言い放った。経営の素人である由紀に対する嫌がらせだ。

「社長として最初にするべきことは何でしょうか?」と尋ねる由紀に、安曇は「まず、会計を学ぶことだ」と答えた。会社を経営するのに、なぜ会計が必要なんだろう。数式を見ただけでぞっとするのに……。

決算書とは「だまし絵」的である

安曇は由紀にルビンの壺というだまし絵を見せてきた。はじめは白磁の壺にしか見えないが、やがて男女の顔が向き合っている絵柄が浮かび上がる。

会計はだまし絵のようなものだ。初心者はひとつの見方でしか決算書を見られない。だが訓練を積むうちに、決算書の別の姿が見えてくるようになる――それが安曇のメッセージだった。

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要約公開日 2023.12.21
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