印刷技術の発達により、ポスター広告や交通標識をはじめ、街の至る所にデザインがあふれている。現代社会の大量生産・大量消費によってモノが溢れるようになり、商品のパッケージやラベルなど、印刷デザインの多さに拍車がかかっている。
さらに、インターネット時代の到来で、画像や動画を含む高度なグラフィックやWEBデザインも急増している。まさに私たちは、日ごろから当たり前のように、大量のデザインに囲まれた生活をしている。言い換えれば、デザインを学ぶために非常に恵まれた環境に住んでいる。
今、目の前に見える風景の中で「赤色」に注目してみよう。何が見えるだろうか。おそらくこんな所にも、あんな所にも赤色があったんだと、あらためてさまざまな気づきがあるはずだ。
意識を1つ変えるだけで、なんとなく眺めていた日常風景がガラリと変わるのではないだろうか。そして、この世界は膨大なデザインが存在する実践の場なのだと、あらためて悟るだろう。
このように意識してデザインを見るよう心がけることが、プロのデザイナーの資質に欠かせない「見る力」を育むスタートである。
デザイナーがなぜこの配置をしたのか、料理人はなぜこのお皿を使ったのか、音楽家はなぜここで音を入れたのか――。
クリエイティブに関わるプロは、それぞれにしっかりとした意味があって一つひとつのモノを作っている。さらにその制作意図を、クライアントに説得力のある言葉で説明できるのがプロだ。そうしなければ、理不尽なやり直しを何度も受けてしまうからである。
つまりデザインのプロを目指すのであれば、自分が見るものを、自分の言葉で明確に説明し、相手を納得させなければならない。そのためには、知識を身につけて「言語化」することが必須である。デザインの実践の場において、言語化こそがクライアントとコミュニケーションを図る方法だからだ。
プロのデザイナーは、電車に乗れば、周りの風景から意識的にあちこちのデザインを見ている。そして、その意図はなぜかと考えて言語化し、膨大な情報を得ているのである。
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