偉業を達成する秘訣として、しばしば「才能」と「訓練」が挙げられる。加えて、あまり知られていないが、偉業の達成には、あらゆる業界で超一流の人たちが活用している秘訣がもう一つある。「リバース・エンジニアリング」だ。
リバース・エンジニアリングは「スキル獲得と上達への近道」ともいうべきもので、「表面に現れていることの裏側を見て、隠れた仕組みを見出すこと」だ。具体的には、美味しい料理を食べて「レシピを推測する」、美しい音楽を聴いて「コード進行を突き止める」、映画を観て「物語の展開構造をつかむ」といった能力がリバース・エンジニアリングの一例である。
各分野の著名人たちはお手本を分解することによって偉業を達成している。映画製作者のジャド・アパトーは高校時代、お笑い界の大スターたちにインタビューをし、ネタの出し方から有名になる方法までを聞き出した。ベストセラー作家のジョー・ヒルにとって、レジェンド的作品を書き写して作品のリズムやタッチをつかんだことが、スランプから抜け出すきっかけとなった。クロード・モネやパブロ・ピカソは、ウジェーヌ・ドラクロワの作品を模写することで自分の技術を磨いた。
複数の調査によれば、現在はカップルの40パーセント近くがオンラインで出会っている。しかもオンラインで出会ったカップルは、リアルで出会って交際を始めた人よりもうまくいっている傾向にあるという。
オンライン・デーティング・アプリのアルゴリズムは、ユーザーが「あり」「なし」をジャッジしたりある写真を一定時間見つめたりするたびに、データを収集していく。そうしたデータによって、ユーザーが「あり」と判断する相手の共通項を見つけ、次々に確度の高い相手を提案する仕組みだ。つまりオンライン・デーティング・アプリは、サンプル収集→大きく異なるところ(ユーザーの好みを左右しそうな違い)を探す→類似点(ユーザーが「あり」と判断する相手の共通点)を探す→(ユーザーが魅力を感じそうな相手を)予測する、というプロセスをくり返している。
このプロセスはリバース・エンジニアリングと同じである。まずは自分の心に響くサンプルを集めて、それらだけに見られる特徴を明らかにしていこう。「これは他のものと何が違うのだろう?」「これの何が、それほど魅力的なのだろう?」「ここから、どんなことがわかるだろうか?」「これは私が今取り組んでいることに、どのように応用できるだろうか?」と問いかけてみると、自分の心に響いた理由が解明できるだろう。
特徴を数値化するのも効果的だ。プレゼンテーションスキルを上げたいなら、気に入っているTEDスピーカーのプレゼンテーションを数値化して分析してみる。プレゼンテーション時間や語数、プレゼンテーションの構造、提示された質問の数、ジョークの数、1分間あたりの単語数、歩いている時間と立っている時間の割合などを数値化し、自分の数値と比較すれば、すぐに改善点が見つかるはずだ。
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