「夜に駆ける」で2020年にトップアーティストの仲間入りを果たし、ヒット曲を連発するYOASOBIに対し、著者は大いに可能性を感じている。YOASOBIが手掛ける作品には「ヒットの法則」となるメカニズムがあると考えているからだ。
一般的に、アーティストは自身の経験をもとに作品を作るが、YOASOBIは「小説を原作」にして楽曲を作る。ネット隆盛の今、オンライン上には楽曲の「原石」が無限に転がっているため、「ネタ切れ」という問題に無縁だ。ネタとする小説は、若者が作ったものから厳選すれば、楽曲に若い感性を取り入れられる自由も利く。また、「楽曲を分業化」していることもヒットのメカニズムの一つと言える。作詞作曲はAyase、歌い手はikura、ミュージックビデオのアニメーションはアニメーターというように、それぞれのパートをその分野の一流のクリエイターに任せることでヒットを連発させてきた。
本書のタイトルである「瞬考」は、仮説を一瞬ではじき出す思考法である。著者が上述のような発想ができるのは、「そもそもYOASOBIを知っている」「彼らの楽曲制作方法を知っている」ためだ。
「知っていることは、すぐに思いつける」。これが瞬考実践の第一歩となる。
著者は自らの経験から、仮説本をたくさん読んでも仮説が湧くようになるとは思っていない。それよりも「会社四季報」を10年分丸暗記する、「日経ビジネス」や「日経エレクトロニクス」といったビジネス雑誌を精読するといったほうが「仮説構築力」を養ってくれると考えている。
仮説を構築するには、ビジネスに関わる多くの事象や事例をパターン化して頭に格納しておくことが求められる。AIに大量のデータを覚え込ませると精度が上がるように、人間の脳もたくさんの事象をインプットしておかないと新たな仮説は出てこない。
どんなお題を出されても、瞬間的に鋭い仮説をはじき出す「瞬考」の要諦は6つある。
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