現代はVUCAの時代だと言われている。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったものだ。要するに、世の中はわかりにくくなっているということである。
わかりにくい世の中を生き抜いていくためには、わかることを増やしていくしかない。その手法のひとつがロジック(論理)だ。VUCAの時代においては、「ロジックを使ってどう思考し、伝え合うか」の重要性が増していると言える。
本書のテーマである「構造を読み解く力」はロジックを読み取る力だ。他者と協力して動き、意思決定して物事を進めていく場面で、論理は言語を超えた「共通言語」となる。「構造を読み解く力」を身につければ、思考の質が高まり、仕事やコミュニケーションがより円滑なものになるだろう。
著者は英語が苦手だが、それでも外資系企業で仕事をこなすことができた。その理由は、推論が働いたからだ。英語を完璧に理解できなくても、AとくればB、Cの次はDで、EとFは対立、といったロジックがあれば、わからない言葉があっても先の展開が予想できる。論理を“読む”力があれば、言語や国籍が違っても世界で戦えるのだ。
論理を“読む”とはどういうことか。まず思い浮かべるのは、文章を読み解く作業だろう。要するに、ある文章を読んで、それがどういう根拠で何を主張しているのかを理解する作業だ。
コミュニケーションにおいては、この「相手がどういう根拠で何を言っているか」を理解することが欠かせない。
図示したりチャート化したりすると、文章の構造が見えてくる。一例として、次の文章を見てみよう。
(1)鳥のからだは、空をとぶのにつごうよくできています。
(2)からだの中には、空気のふくろがあります。
(3)鳥がいきをすうと、そのふくろは、空気でふくらみます。
(4)このふくろのおかげで、からだがかるくなって、とびやすいのです。
(5)鳥のほねは、中がからになっているのです。
(6)竹のようになっています。
(7)これもからだをかるくし、とびやすくなっているわけです。
書き手がこの文章を通じて伝えたいのは「鳥のからだは空をとびやすくできている」ということだ。要するに(1)の文が文章全体の主旨ということになる。
次に、この文章の構造を見てみよう。(1)の文は文章全体の言いたいことを表しているので、最も値打ちの高い文、一番重い文と言えるだろう。
そして、この(2)と(5)の文を組み合わせれば、(1)と同じ重さをつくることができる。(2)からだの中に空気のふくろがある、(5)ほねは中がからになっている、と言うことによって、(1)の内容を説明できるからだ。(3)と(4)は(2)の文を、(6)と(7)は(5)の文をさらに説明する文となっている。
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