学校では教えない逆転の発想法

おとなの思考

未読
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出版社
リベラル社

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出版日
2023年06月24日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「おとなしい」ということばがある。大人を形容詞にした「大人しい」が語源で、大人びている、成熟していることを表すことばだった。静かで、穏やか、素直であることを指すようになったのは中世以降とする辞書もある。

日本語は語源がはっきりとしないものが多い。ひとつの単語にいくつもの意味があり、それが連なったことばは多義的で、いろんな解釈ができ、雑然としている。

思考するとき、多くの日本人は母国語である日本のことばを使っている。考えながら、思考をそのまま口にする人は少数派なので、ほとんどの人は静かに思考していることだろう。だからこそ、「おとなの思考」ができているかどうかに周りは気がつけないし、他人の頭の中と比較できないから、当人自身も自覚できない。

本書はベストセラー『思考の整理学』の著者である外山滋比古氏が、40年前に書いた内容をベースとしている。「知識は多ければ多いほどよい」といった、多くの人たちが考えずに肯定してきた常識を、くるりくるりと反転していく。

年齢を重ねて体は自然と成熟していく。頭の方はどうだろう。ジタバタせずに大人しく、これまで通りの生活を続けるのもいいが、「おとなの思考」によってみずからの生活を見直し、生涯をかけるライフワークに取り組み始めるのも、素晴らしい「おとなの生き方」ではなかろうか。本書はそのきっかけとしてまたとない一冊である。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

外山滋比古(とやま しげひこ)
1923年愛知県生まれ。英文学者、文学博士、評論家、エッセイスト。東京文理科大学英文学科卒業後、同大学特別研修生修了。51(昭和26)年より、雑誌「英語青年」編集長となる。その後、東京教育大学助教授、お茶の水女子大学教授を務め、89(平成元)年、同大名誉教授。専門の英文学に始まり、思考、日本語論の分野で活躍を続け、その存在は「知の巨匠」と称される。著書に、およそ30年にわたりベストセラーとして読み継がれている『思考の整理学』(筑摩書房)、『乱読のセレンディピティ』(扶桑社)をはじめ、ベストセラー多数。2020年永眠。

本書の要点

  • 要点
    1
    知的メタボリック症候群になると考える力を失う。知識は思い切って捨てよう。
  • 要点
    2
    だれかが作った知識をまねるだけでなく「知るより考える」ことがおとなの思考の基本である。
  • 要点
    3
    ことばのいのちは雑然としたところにある。人が集まり談話する中から、おのずと新たな雑学的真理が生まれる。
  • 要点
    4
    人間はみな無自覚な「編集者」だ。知識の異なる「編集」が個性を生む。

要約

すてる技術

脱・知的メタボ

人間の欲深さは大切な本能的能力だが、食べものが豊かになり、過食になった。満腹になるまで食べるのが望ましいことだと思いながら育つと、食事制限にはたいへんな努力を要する。

知識も同様だ。勉強は知識をふやすことであり、知識は多いほどよい。みんなそう思っている。学校に通うあいだとにかく知識欲のまま過ごして知識過多になり、いつしか「知的メタボリック症候群」になる。

知的メタボになると知識が頭のはたらきを妨げ、自分で考える力を失わせてしまう。知的メタボは通常のダイエットと違って、減量、つまり知識を少なくすることが難しい。

だから思い切って、すてる。忘れようと思って忘れるのは難しいが、眠っている間であれば多くのことを忘れられる。運動をして汗を流すのも有効だ。散歩は頭の掃除をしてくれる。だからかつての哲学者たちは散歩をしたのだろう。

過剰な部分はすてて、発明、発見をすることで、人間は進化する。

悪が善に転じる
baibaz/gettyimages

小さいときから、たえず病気をして親に心配をかけた人がいた。何度も喘息で死ぬほどの苦しさを味わうも、何十年もかけて発作をおこさなくなった。気がつくと90歳を越えていた。

本人は「病気のあとには、前よりいっそう元気になるものだ」と言う。人間には回復力がある。病気で80あった体力が40にへる。回復力はそれをときには90まで改善する。「回復力を上手に利用すれば、体はつよくなることも可能」だそうだ。リンゴはキズがあるもののほうが甘い。きれいなリンゴがしない努力をした結果、普通以上のうま味が出る。回復力は、「生きるものが共通してもつ自然力」なのだろう。

病気や失敗、不幸、災難はプラスにはたらくものだ。悪いことを越えようと夢中になると人間力が発揮される。戦国武将の山中鹿之介は、自分がめぐまれた環境にある危険を察知し「われに七難八苦を与え給え」と祈願したらしい。

考えることと雑学

まねるだけでなく「考える」

雑誌などの座談会企画はもともと『文藝春秋』で菊池寛が始めたことであり、それを日本だけでなく世界中がまねした。

学校が教える知識は、学校以外の場所からの借りものだ。「学ぶ」ことはそもそも「まねる」ことである。それを永く続けると、「知識というものがほかの人たちの作ったものであることを忘れる」。

自分の生活の中から新しいものを引き出すことが「考える」ことであり、「知的」さだ。知識は、それを活かす知力がなければ意味がない。ぼんやりではなく、考えながら生きる人間によって社会は変化していく。

「知るより、考える」、これが「おとなの思考の基本」だ。

雑学が大事である理由

自然科学は対象を分析・細分化して、よけいなことを一切排除し、純粋真理を追求する。専門家の多くは雑学的興味を除外した「極小の真理」を目ざす。

人文系の学問もその方法論を真似ようとしたが、それは「思考の未熟」である。ことばは物質と違ってきわめて複雑、雑然としており、そこに生活的で雑種な真理がある。

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要約公開日 2023.11.16
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