「次の世界」をつくる

デジタルテクノロジー図鑑

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出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2023年07月03日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

小難しい用語が飛び交うデジタルテクノロジーの分野。気になってその言葉を調べても、なかなか理解しづらい。

なぜだろうか。それはその用語一つ一つがデジタル分野の全体像においてどう位置付けられているか、わかりにくいからだ。その用語が生まれた背景や、使われる場面がぼやけているため、頭の中でどう整理していいかわからないのである。

『デジタルテクノロジー図鑑』と銘打つ本書は、その道に明るくない者には聞き慣れない横文字がずらりと並んでいるように映るかもしれない。だが、不思議と理解に苦しむようなことはない。その理由は、デジタルテクノロジーの歴史と紐づける形で、用語を説明していることにある。デジタルの大きな文脈に沿って用語を説明するというのが本書の最大の特徴だ。

それは同時に別の福音ももたらしている。読み物としての面白さだ。

Web1からweb3までテクノロジーが進化していく過程は、数十年の間にまるで数百年の歴史が濃縮されているかのような読み応えがある。そうした背景を踏まえて胎動するweb3は、現実に起きていることなのに、まるで未来を覗き見ているかのような錯覚にさえ陥る。普段当たり前と思っている通貨や組織の概念が、まったく新しい視点から語られているのだ。

ネット黎明期からNFTやweb3、生成AIといった最新のトレンドまで幅広く扱った本書。デジタルテクノロジーの知識が乏しくとも尻込みすることはない。革新技術の歴史をたどった本書は、SF小説のように刺激的できっと面白いと感じるはずだ。

著者

comugi(コムギ)
シンガポール拠点のweb3ファンド「Emoote(エムート)」共同創業者。ビジネス書の編集者、グローバルWebメディア日本版の編集長を経て、現職。ベンチャーキャピタルのリサーチャーとして、web3をはじめとしたデジタルテクノロジーの最前線を追う。新旧のデジタルテクノロジーに精通し、全体像を直観的に把握できるシンプルな図解と、平易な言葉による「誰にでもわかりやすい解説」に定評がある。Twitterやブログなどを通じて、デジタルテクノロジーに関する最新情報を発信中。
Twitter https://twitter.com/ro_mi

本書の要点

  • 要点
    1
    デジタルテクノロジーの関連書は、特定の用語を深く掘り下げたものが多い。しかし、技術は連鎖的に積み重なったものであり、深く理解するにはデジタルテクノロジーが歩んできた全体的な流れを踏まえた方がよい。
  • 要点
    2
    Web1はほとんどのユーザーが情報を受信する時代だった。Web2になると、誰もが情報を発信できるようになる。この変化によって検索エンジンが優位性を確立した。
  • 要点
    3
    web3はここ2年ほどの間に起きた変化だ。今までの常識を覆す、NFTやDAOといった新しい概念が生まれた。

要約

デジタルの世界はどうして難解か

流れを掴めば理解が深まる

デジタルテクノロジーについて書かれた本を読んでみると、個別の事象を深く掘り下げていることが少なくない。しかしデジタルテクノロジーは、一つ一つの概念が独立しているわけではない。一つの技術は、他の技術が積み重なってできたものであり、全てのテクノロジーは連なっている。

よって、複数のテクノロジー用語は連綿としたつながりの中で理解するのが最善といえる。そして全体像や進化の流れを把握して初めて、それら個々の用語の理解が深まる。

また、流れの中に個々の用語を位置付けて理解することにより、「今後どのようなことが起こりそうか」という予測も立てやすくなる。そしてそれらが社会に与える影響や、自分の取るべき進路も見えてくるようになる。

我々の暮らす「デジタルワールド」
SB クリエイティブ提供

我々はどんな世界に住んでいるのだろうか。インターネットが登場する以前、私たちが生きていたのは「リアルワールド」だけだった。しかし、インターネットの登場により、「デジタルワールド」というもう一つの活動圏が誕生した。

この二つの世界は互いに影響を与えながら、大きく変化してきた。ここではその変化を「4期」に分けて考えていく。

第1期は「リアルワールド→デジタルワールド」という時代だ。インターネットが生まれたことにより、手紙や新聞といった「リアル」に存在した行動様式や媒体が、デジタルワールドで再現されることとなった。この期間はいわゆる「web1」に当たる。

第2期は「デジタルワールド→デジタルワールド」の時代だ。ここではSNSや動画サイト、オンラインゲームなどデジタルワールドでの経済が拡張した。

第3期は「デジタルワールド→リアルワールド」の時代である。第1期とは逆に、ここではデジタルワールドがリアルワールドに影響を与えるようになった。「Uber Eats」はデジタルワールドが「飲食店」の販売形態を変えた、その好例といえる。

そして第4期は「デジタルワールド→メタバース」という時代である。メタバースや仮想通貨、ジェネレーティブAI(生成人工知能)など、あらゆる物事がデジタルワールドで完結する時代の到来である。

Web1、Web2で起こったのは物理的な「もの」から情報への変換という「情報革命」だった。これから起ころうとしているのは、デジタルなものが物理的な要素から離れて「価値」を帯びる「価値革命」といえよう。

デジタルテクノロジーの進化は、それまでの歴史にあったシステムの価値を根本的に変容する。我々はその過渡期にいる。

web1からweb2へ

ポータルサイト

Web1(1991~2004年頃)は「read」の時代と言われている。メール、ポータルサイト、eコマース、検索エンジン……初期のインターネットテクノロジーは人々に衝撃を与えた。しかしその時代、インターネットの利用者が簡単に情報を発信することはできず、誰かの公開した情報を閲覧することがもっぱらだった。その意味で、「read」の時代なのである。

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要約公開日 2023.11.12
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