デジタルテクノロジーについて書かれた本を読んでみると、個別の事象を深く掘り下げていることが少なくない。しかしデジタルテクノロジーは、一つ一つの概念が独立しているわけではない。一つの技術は、他の技術が積み重なってできたものであり、全てのテクノロジーは連なっている。
よって、複数のテクノロジー用語は連綿としたつながりの中で理解するのが最善といえる。そして全体像や進化の流れを把握して初めて、それら個々の用語の理解が深まる。
また、流れの中に個々の用語を位置付けて理解することにより、「今後どのようなことが起こりそうか」という予測も立てやすくなる。そしてそれらが社会に与える影響や、自分の取るべき進路も見えてくるようになる。
我々はどんな世界に住んでいるのだろうか。インターネットが登場する以前、私たちが生きていたのは「リアルワールド」だけだった。しかし、インターネットの登場により、「デジタルワールド」というもう一つの活動圏が誕生した。
この二つの世界は互いに影響を与えながら、大きく変化してきた。ここではその変化を「4期」に分けて考えていく。
第1期は「リアルワールド→デジタルワールド」という時代だ。インターネットが生まれたことにより、手紙や新聞といった「リアル」に存在した行動様式や媒体が、デジタルワールドで再現されることとなった。この期間はいわゆる「web1」に当たる。
第2期は「デジタルワールド→デジタルワールド」の時代だ。ここではSNSや動画サイト、オンラインゲームなどデジタルワールドでの経済が拡張した。
第3期は「デジタルワールド→リアルワールド」の時代である。第1期とは逆に、ここではデジタルワールドがリアルワールドに影響を与えるようになった。「Uber Eats」はデジタルワールドが「飲食店」の販売形態を変えた、その好例といえる。
そして第4期は「デジタルワールド→メタバース」という時代である。メタバースや仮想通貨、ジェネレーティブAI(生成人工知能)など、あらゆる物事がデジタルワールドで完結する時代の到来である。
Web1、Web2で起こったのは物理的な「もの」から情報への変換という「情報革命」だった。これから起ころうとしているのは、デジタルなものが物理的な要素から離れて「価値」を帯びる「価値革命」といえよう。
デジタルテクノロジーの進化は、それまでの歴史にあったシステムの価値を根本的に変容する。我々はその過渡期にいる。
Web1(1991~2004年頃)は「read」の時代と言われている。メール、ポータルサイト、eコマース、検索エンジン……初期のインターネットテクノロジーは人々に衝撃を与えた。しかしその時代、インターネットの利用者が簡単に情報を発信することはできず、誰かの公開した情報を閲覧することがもっぱらだった。その意味で、「read」の時代なのである。
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