教育関係者やメディアは「若者の本離れが進んでいる」と語るが、その実態は知られているとは言い難い。実際、書籍の平均読書冊数は1980年代から1990年代にかけて低下するが、2000年代にはV字回復を遂げ、2010年代になると小学生は史上最高を更新、中学生は微増傾向を続けている。高校生は横ばいだが、全体として「本離れが進行している」とは言えない。
2000年代にV字回復を遂げたのは、官民連携による読書推進の動きが本格化したためである。各自治体が朝の時間に読書をする「朝読」を導入した結果、2020年の段階で小中学生の8割は学校で半ば強制的に本を読む時間がある。こうした流れを受けて児童書市場は少子化にもかかわらず堅調に推移しており、子どもひとりあたりの書籍代も増加傾向にある。
高校生と大学生の不読率はおおむね50%程度となっており、若者のふたりにひとりは本を読まない。しかし大人に目を向けてみても、日本人全体の不読率は高校生や大学生とほぼ変わらない。高校生への読書支援が小中学生に比べると手薄であることを考えても、高校生以降は大人と同じ読書率になっている、と考えてよいだろう。
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