「若者の読書離れ」というウソ

中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか
未読
「若者の読書離れ」というウソ
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中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか
未読
「若者の読書離れ」というウソ
出版社
出版日
2023年06月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

テレビ、ゲーム、パソコン、スマートフォン――この数十年、情報機器の本格的な普及によって、我々の生活は激変した。とりわけこうした電子機器が子どもたちに与える影響は議論を呼んで久しい。

特に叫ばれているのは、子どもたちが本を読まなくなっているのではないか、という疑問だ。家庭においても、子どもがゲームばかりして本を読まない、という悩みを抱える保護者もいるかもしれない。そんな子どもの様子を見ていると、若者の本離れや、それに伴う学力低下といった言説に、思わず頷いてしまうことだろう。

しかし本書を読めば実態が必ずしもそうではないことがわかる。1960年代から高校生の読書量はほぼ変わっていないし、インターネットやスマートフォンの普及は読書量にほとんど影響していない。小学生や中学生の読書数は近年むしろ増加しており、市場としても児童書は伸長している分野である。

では、子どもたちは実際にはどのような本を読んでいるのだろうか。子どもたちがなにをどのように、そしてなぜ好んでいるのか、正確に捉えることは難しい。本書はその実態に、マクロなデータの分析と、実際に人気の本を読むことによって迫っていく。

情報技術もエンターテイメントも流れが速い分野であり、こと子どもや若者文化は「こうであろう」あるいは「かくあれかし」といったイメージが先行しやすい分野でもある。読書を通じた若者文化の現在地を、ぜひ確認してほしい。

ライター画像
池田明季哉

著者

飯田一史(いいだ いちし)
1982年青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻終了(MBA)。出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャー、出版産業、子どもの本、マンガ等について取材、調査、執筆している。著書に『いま、子どもの本が売れる理由』『ウェブ小説の衝撃』(以上、筑摩書房)、『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』『ウェブ小説30年史』(以上、星海社新書)、『ライトノベル・クロニクル2010-2021』(Pヴァイン)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    子どもの平均読書冊数は1980年代から1990年代にかけて低下したが、2000年代にはV字回復を遂げ、2010年代になると小学生では史上最高を更新している。
  • 要点
    2
    児童書市場は好調に推移、書籍代も増加傾向である。これは小学生や中学生における「朝読」などの読書推進施策の影響が大きい。
  • 要点
    3
    高校生になると、本を読まない人の数は大人と変わらなくなる。そこには持って生まれた性質も大きく関係するため、無理強いは意味がない。若者が実際にどのような本を好んでいるのかを理解した施策が重要である。

要約

10代の読書に関する調査

本離れは進行していない
seb_ra/gettyimages

教育関係者やメディアは「若者の本離れが進んでいる」と語るが、その実態は知られているとは言い難い。実際、書籍の平均読書冊数は1980年代から1990年代にかけて低下するが、2000年代にはV字回復を遂げ、2010年代になると小学生は史上最高を更新、中学生は微増傾向を続けている。高校生は横ばいだが、全体として「本離れが進行している」とは言えない。

2000年代にV字回復を遂げたのは、官民連携による読書推進の動きが本格化したためである。各自治体が朝の時間に読書をする「朝読」を導入した結果、2020年の段階で小中学生の8割は学校で半ば強制的に本を読む時間がある。こうした流れを受けて児童書市場は少子化にもかかわらず堅調に推移しており、子どもひとりあたりの書籍代も増加傾向にある。

高校生と大学生の不読率はおおむね50%程度となっており、若者のふたりにひとりは本を読まない。しかし大人に目を向けてみても、日本人全体の不読率は高校生や大学生とほぼ変わらない。高校生への読書支援が小中学生に比べると手薄であることを考えても、高校生以降は大人と同じ読書率になっている、と考えてよいだろう。

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要約公開日 2023.11.09
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