ここでまず扱いたいのは「考える力」についてだ。
テストや受験のように「正解のある問い」に1人で挑むときは、「『問い』に対して速く、正しく、効率よく」答えればよかった。社会に出ると、ほとんどの仕事は正解が決まっておらず、それにみんなで挑むことになる。「1人で成立する仕事」はとても少ないし、相性のよい人とばかり働けるわけでもない。つまり仕事ではいつも、「『正解のない問い』に『共に挑む』」ことが求められるのだ。
多くの日本企業がこの課題に直面している。過去を学ぶ技術があっても、それを応用して未来を発想する考え方を学んでいなければ、改善的な発想に陥ってしまう。改善だけでは同質化を招きやすく、新しいことを考える段階では十分なものではない。
この本の目的は、新しいものを生み出すための考え方のフレームを伝えることだ。新しいアイデアを考えるのに天賦の才能は必要ない。訓練すれば誰でもその能力を身につけられる。今はアイデアを考えることに苦手意識を持っている人でも、コツをつかめば、「自分でも思いもよらなかった『面白いアイデア』を思いつき、世界を変える発想ができるかもしれない」。
その基本フレーム、考え方のプロセスが「リボン思考」だ。「インプット」「コンセプト」「アウトプット」の3つのステップからなる。真ん中に結び目のあるリボンをイメージしよう。情報収集して事実について考える「インプット」に始まり、それを統合して解釈について考える「コンセプト」の段階できゅっとまとめ、広げて具体化することで解決策について考える「アウトプット」へと移る。
それぞれのステップでの具体的な手順に言及しながら、リボン思考の詳細を紹介しよう。
最初のステップは、「テーマを決める」「情報を収集する」という2つのことを考えてインプットすることだ。料理でいえば、メニューを決めてから、よい素材を探すようなものだ。よい素材があれば手をかけなくてもおいしい料理ができるように、新しいものを考えるプロセスには良質なインプットが重要だ。何についてどう調べるかという素材の「集め方」自体に楽しいアイデアを盛り込むと、アウトプットも独創的になっていく。
同じ問題に取り組むのでも、さまざまな切り口が想定され、切り口ごとに対応する調査方法もさまざまだ。いつものやり方、同じやり方でなんとなく決めていては、凡庸な発見にしかつながらない。
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