東大教養学部が教える考える力の鍛え方

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東大教養学部が教える考える力の鍛え方
出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2024年06月15日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

過去を知る学びを得意とする東大生に、新しいものを生み出す思考法を。こうした思いから本書の著者である宮澤正憲氏は、「考える力を鍛える教室」、通称「ブランドデザインスタジオ」を2011年に東大で始めた。同授業は東大生のみならず、他校の生徒からも大評判となり、受講希望者が殺到するほどの人気を博した。そして修了者からは、論文やサークルの企画、そしてその後の就職活動や実際に働き始めてからも活用できたとして、「東大で最も役に立った授業」という評価を得ている。そんな大人気講義を一冊にまとめて、誰でも手に取れるかたちにまとめたのが本書である。

本書の中核をなすのは「リボン思考」と呼ばれる考え方だ。インプット、コンセプト、アウトプットという3ステップからなるシンプルなフレームであるが、極めて汎用性が高く、企画力や発想力を高めることに大いに貢献してくれるものである。このフレームを使いこなせる人が増えることは、日本の発想力の底上げになるのではないかと、著者は熱く語っている。

過去の事例のリサーチは得意でも新しいものを生み出すのが苦手、発想力を高めたいという課題意識は、日本の多くの企業に共通するものであるはずだ。今までにないアイデアを生み出す発想力を身につけたいと思ったら、本書を読むことから始めよう。

ライター画像
池田明季哉

著者

宮澤正憲(みやざわ まさのり)
東京大学教養学部 教養教育高度化機構 特任教授
(株)博報堂 執行役員
東京大学文学部心理学科卒業。(株)博報堂に入社後、多様な業種の企画立案業務に従事。
2001年に米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院(MBA)卒業後、ブランド及びイノベーションの企画・コンサルティングを行う次世代型専門組織「博報堂ブランド・イノベーションデザイン」を立上げ、経営戦略、新規事業開発、商品開発、空間開発、組織人材開発、地域活性、社会課題解決など多彩なビジネス領域においてコンサルテーション及び研究を行っている。同時に東京大学教養学部に籍を置き、発想力とチーム力を鍛える授業「ブランドデザインスタジオ」や大学生を対象にした発想のための教育コンテストBranCo!を企画・運営するなど高等教育とビジネスの融合をテーマに様々な教育活動を推進している。立教大学ビジネスデザイン研究科客員教授。(株)博報堂コンサルティング非常勤取締役。
主な著害に『「応援したくなる企業」の時代』(共著、アスキー・メディアワークス)、『ブランドらしさのつくり方――五感ブランディングの実践』(共著、ダイヤモンド社)、『「個性」はこの世界に本当に必要なものなのか』(共著、アスキー・メディアワークス)、『ビジネスを蝕む思考停止ワード44』(共著、アスキー・メディアワークス)、『だから最強チームは「キャンプ」を使う。』(共著、インプレスジャパン)、『MBAは本当に役に立つのか』(共著、東洋経済新報社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    インプット、コンセプト、アウトプットの3ステップからなる「リボン思考」は、新しい発想を生み出すことに長けた汎用性の高いフレームだ。
  • 要点
    2
    インプットで、何をどう集めるかという素材の「集め方」自体に楽しいアイデアを盛り込んでいくことが、独創的なアウトプットへつながる。
  • 要点
    3
    コンセプトの段階では、インプットの本質を端的に表し、アウトプットへの想像をかきたてるものになるよう、コンセプトをまとめていく。
  • 要点
    4
    アウトプットは、コンセプトを土台にアイデアを一段ジャンプさせるフェーズだ。仕上げに、ひとつの物語としてアウトプットを語れるようになろう。

要約

「考える力」とは何か?

「学び」と「考える」の違い
SB クリエイティブ提供

ここでまず扱いたいのは「考える力」についてだ。

テストや受験のように「正解のある問い」に1人で挑むときは、「『問い』に対して速く、正しく、効率よく」答えればよかった。社会に出ると、ほとんどの仕事は正解が決まっておらず、それにみんなで挑むことになる。「1人で成立する仕事」はとても少ないし、相性のよい人とばかり働けるわけでもない。つまり仕事ではいつも、「『正解のない問い』に『共に挑む』」ことが求められるのだ。

多くの日本企業がこの課題に直面している。過去を学ぶ技術があっても、それを応用して未来を発想する考え方を学んでいなければ、改善的な発想に陥ってしまう。改善だけでは同質化を招きやすく、新しいことを考える段階では十分なものではない。

この本の目的は、新しいものを生み出すための考え方のフレームを伝えることだ。新しいアイデアを考えるのに天賦の才能は必要ない。訓練すれば誰でもその能力を身につけられる。今はアイデアを考えることに苦手意識を持っている人でも、コツをつかめば、「自分でも思いもよらなかった『面白いアイデア』を思いつき、世界を変える発想ができるかもしれない」。

その基本フレーム、考え方のプロセスが「リボン思考」だ。「インプット」「コンセプト」「アウトプット」の3つのステップからなる。真ん中に結び目のあるリボンをイメージしよう。情報収集して事実について考える「インプット」に始まり、それを統合して解釈について考える「コンセプト」の段階できゅっとまとめ、広げて具体化することで解決策について考える「アウトプット」へと移る。

それぞれのステップでの具体的な手順に言及しながら、リボン思考の詳細を紹介しよう。

インプット

面白いインプット

最初のステップは、「テーマを決める」「情報を収集する」という2つのことを考えてインプットすることだ。料理でいえば、メニューを決めてから、よい素材を探すようなものだ。よい素材があれば手をかけなくてもおいしい料理ができるように、新しいものを考えるプロセスには良質なインプットが重要だ。何についてどう調べるかという素材の「集め方」自体に楽しいアイデアを盛り込むと、アウトプットも独創的になっていく。

同じ問題に取り組むのでも、さまざまな切り口が想定され、切り口ごとに対応する調査方法もさまざまだ。いつものやり方、同じやり方でなんとなく決めていては、凡庸な発見にしかつながらない。

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要約公開日 2024.10.18
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