「伝える」と「伝わる」は、たった一文字の違いだが、まったく異なるものである。「伝える」は「自分の伝えたいことを伝えたいように伝える」こと。一方、「伝わる」は「相手にとって伝えてほしいことが伝わる」ことである。両者には、「相手の視点になれるかどうか」という本質的な違いがある。
伝えたいことが伝わらない人は、「伝えること自体」がゴールになっている場合が多い。「こう話せば伝わるだろう」と自己判断で完結しており、相手の状況や気持ちを考慮できていない。
最適な伝え方はその時々で変わるが、そこには必ず「相手の視点」を入れなければならない。
相手のことを理解しようとがんばると、伝え方は上達する。「伝え方の型」を使いこなしていくうちに「相手の視点になって考えて伝える」体質になっていくはずだ。
「伝えたい情報をわかりやすく伝える」には、どうしたらいいだろうか? その代表的な手法の1つが、「結論から」の型である。
たとえば、「出張は誰が行くことになった?」と質問されたら、「結論は、Aさんと責任者の私の2人で行くことになりました」とまず結論を述べる。それから、その決定に至った経緯や理由を伝えていくといい。話す順番は、以下のようになる。
(1)Aさんと責任者の私の2人で行く
(2)デザインの確認なので、デザイナーのAさんが必要
(3)ただ、Aさんはまだ若く、責任者になれない
(4)だから私が責任者として同行する
「結論から」の型が使えるのは、相手が明確な答えを求めているときだ。具体的には「5W1H(何が、誰が、いつ、なぜ、どこ、どう)」を聞かれた場合である。答えの後に説明が続くときは、「結論は」と前置きするとなおよい。
一方、相手の聞きたいことがはっきりしなくても、「結論から」の型が活きる場合もある。結論を冒頭に持ってくることで、相手の興味関心を引きつける「つかみのインパクト」があったり、先を見通せる「要約」としての効果を与えたりもできる。
人が一度の説明で覚えられることは、およそ3つと言われている。それを利用して、伝える際は項目を3つに絞ると伝わりやすい。要点を絞って説明することで、理解や納得感が得やすいからだ。
たとえば、日本酒づくりの工程を説明する場合。本来は10以上の工程があるところ、大事なものを3つに絞る。そして「日本酒づくりの工程で、大事なのは3つ! これだけ覚えて帰ってくださいね」と前置いて、その3つについて説明するのだ。
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