人気の本や映画、音楽など、みんなが「いい」と言うものは、本当に「いい」ものなのだろうか。
パリ大学のクローディア・フリッツは、プロのバイオリニスト21名に、名器として名高い「ストラディバリウス」と、高品質な最新型バイオリン計6丁を、目隠しをして弾いてもらう実験をした。
その結果、最も音色が好まれたのは最新型で、ストラディバリウスは最下位だった。フリッツは、ストラディバリウスは高価ゆえに音色もいいという「バイアスがかかっているだけ」と結論付けた。
みんなが「いい」と褒めると「同調」が働き、自分もそう思えてくる。しかしそれは、他人の評価に「だまされている」だけなのかもしれない。
「家事全体のうち、何%くらいを自分がやっていると思いますか?」。そんな質問を夫婦にすると、たいてい双方が「自分のほうがやっている」と答えるため、数値の合計は100%を超えてしまう。
カナダのウォータールー大学のマイケル・ロスによる調査では、20の家事リストを数十組の夫婦に見せたところ、16の活動が「自分のほうがたくさんやっている」という回答だった。自分の行動はよく覚えているが、相手のことはよく覚えていないため、このような結果になるのだとロスは推測する。
著者はトイレットペーパーの交換を自分ばかりがやっていると思っていたが、妻も同じように感じていたという。何事につけ、自分だけがソンをしていると思い込むのは誤解なのかもしれない。
ハロウィンで賑わう街では、なぜポイ捨てや暴力が横行するのか。これは人がコスプレ(仮装)をすると、悪いことへの抵抗感が下がる“匿名性の原理”が働くからだ。「どうせバレない」と思うとき、人は非人間的なことも平気でしてしまう。
米国アーカンソー州立大学のロバート・ジョンソンは、4人グループを先生役と生徒役に分け、生徒役が問題を間違えると先生役が偽の電気ショックを与える実験をした。その結果、先生役が全身を覆うコスチュームを着たときは強いショックを与える人が多く、逆にナースのコスプレだと弱いショックしか与えなかった。「自分だとバレない」という心理が、残酷な行動に突き動かすのだ。
コスプレをすると人は変わる。コスプレを楽しむ際は、このことを肝に銘じるべきである。
3,400冊以上の要約が楽しめる