「好き」を言語化する技術

推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
未読
「好き」を言語化する技術
「好き」を言語化する技術
推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
未読
「好き」を言語化する技術
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

出版社ページへ

出版日
2024年07月31日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

とてつもない感動を前にしたとき、人は言葉を失う。しかし、同時に、「この感動を誰かに伝えたい!」とも思う。手に余る大きな大きな感情を、それでも無理矢理言葉にしようとした結果、私たちは「やばい」「最高」を連呼するだけの生き物になってしまう。推しのいる人間とはそういうものである。要約者も某ウマのスマホゲームをはじめ多ジャンルにさまざまな推しのいる身だが、本書のサブタイトル『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』に激しくうなずくばかりだ。著者はそんな私たちの気持ちを汲みながら、この「言葉にできない感動」を言語化する方法を丁寧に示してくれる。

著者が、「好き」を言語化するうえでもっとも大切だと主張するのが、「自分の言葉で語ること」だ。このSNS時代では、日々他人の言葉が大量に頭のなかに流れ込んでいる。私たちは簡単に他人の言葉に影響を受け、気づかぬ間に他人の言葉を自分の考えだと思い込んでしまう。著者によれば、こうした他人の言葉と距離を取るためにも、自分だけの「好き」という感情を、自分だけの言葉にする技術が不可欠なのだという。

本書で指南するのは「『推し』を語る」ための方法に留まらない。自分のなかにある気持ちに向き合い、他人の言葉を借りずにきちんと自分の言葉で言語化する技術だ。これは「『推し』を語りたい」人だけでなく、多くのビジネスパーソンにとっても有用な技術であろう。「言葉にできないけど伝えたい気持ち」を持ったことがあるすべての人に役立つ一冊だ。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

三宅香帆(みやけ かほ)
文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。
1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院博士前期課程修了。京都天狼院書店元店長。著作に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)『妄想とツッコミでよむ万葉集』(だいわ文庫)『妄想古文』(河出書房新社)『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(笠間書院)『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)など多数。
X(旧Twitter):@m3_myk
YouTube:@KahoMiyake

本書の要点

  • 要点
    1
    自分の好きなものについて語ることは、自分自身への理解を深めることだ。推しについて語ることは、自分の人生の素晴らしさについて語ることでもある。
  • 要点
    2
    SNSなどで他人の感想を見ると、自分の感情や思考、もともと持っていた言葉を失ってしまう。他人の言語化に頼らず、自分だけの言葉をつくりだすという姿勢が大切だ。
  • 要点
    3
    言語化とは細分化である。自分が推しのどこに対してどう感じたのかをできるだけ細かく具体的に言葉にすることで、オリジナルな感想が生まれる。読解力、観察力、語彙力はそれほど重要ではない。

要約

【必読ポイント!】 推しを語ることは人生を語ること

技術さえあれば、推しは語れる

「推し」という言葉は昨今さまざまな対象に使われるようになっている。アイドル、歌手、俳優、声優、VTuber、あるいはアニメ、本、漫画、映画、ゲームなどのコンテンツそのものが「推し」の場合もある。スポーツ、釣り、チェスなどの趣味や、誰かに広めたい商品や習慣も含まれるかもしれない。

これまでも「ファン」や「贔屓」といった言葉はあったが、「推し」という言葉には「推薦したい」、つまりは「他の誰かに薦めたい」という感情が入っていることが特徴だ。ただその対象を好きなだけでなく、他人に紹介したい、魅力を言葉にしてその素晴らしさを分析したいという欲望を持つことが「推し」の条件であろう。

「推し」について語る技術は、ファンレターにもSNSにも応用できるし、ただ友達に語りたい人にももちろん役立つ。文章を書くには技術が必要だ。逆にいえば、技術さえ理解すれば、いい感想やいい文章は書けるようになる。

「自分だけの感情」を語る
cherdchai chawienghong/gettyimages

推しを語るときに最も大切なのは、「自分だけの感情」だ。誰かがつくった言葉や広めた感情ではなく、自分だけが感じていることを伝えるのが何より大切だ。それを伝えることこそが、推しを語る意味になる。

世の中にはよく使われる「ありきたりな言葉」があふれている。「泣ける」「やばい」「考えさせられた」などがそれだ。こうした言葉を使うと、そこで思考停止してしまう。ありきたりな「それっぽい表現」を使わずに、自分だけの感情に向き合うことでオリジナルな表現ができあがる。

ただし、自分の感情を言葉にするだけでは、他人に伝えるための文章としては不十分だ。文章の核が「自分だけの感情」だとすれば、その核を包むのが「文章の工夫」だ。この工夫をどれだけできたかが他人への伝わりやすさを決めることになる。

読解力や観察力より、「妄想力」

文章の核である感想の言語化がうまくできないとき、読解力や観察力が足りないせいだと考える人が多い。しかし、感想を書くうえで本当に大切なのは「妄想力」だ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3658/4525文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2024.10.30
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
一緒にいると楽しい人、疲れる人
一緒にいると楽しい人、疲れる人
有川真由美
未読
言葉にする習慣
言葉にする習慣
さわらぎ寛子
未読
アットコスメのつぶれない話
アットコスメのつぶれない話
吉松徹郎
未読
変身
変身
フランツ・カフカ
未読
エンジニア組織を強くする 開発生産性の教科書
エンジニア組織を強くする 開発生産性の教科書
佐藤将高Findy Inc.
未読
中高年リスキリング 
中高年リスキリング 
後藤宗明
未読
裸眼思考
裸眼思考
荒木博行
未読
爆速ノート術
爆速ノート術
THE オトウサンノヒミツキチ・Kei
未読