ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました
ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました
ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました
出版社
出版日
2024年09月02日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

「ありえ値ぇ!」「年間売上10億円突破」「ギリギリまで踏ん張りましたが原料が高くなり容量見直し…悔しいです!」こんなインパクトのあるパッケージに思わず目を奪われ、つい手に取った経験はないだろうか?

これらはドン・キホーテ、通称ドンキの商品パッケージにプリントされたキャッチコピーだ。ドンキと言えば、圧縮陳列やキャッチーなPOPを使った独特の店舗づくりで広く知られている。その中でも近年、消費者の注目を集めるパッケージには、必ずと言っていいほど「ド:情熱価格」のロゴが付いているのをご存じだろうか。このロゴの付いたPB(プライベートブランド)商品を買おうと、多くの人がドンキに足を運ぶという。

本書では、売上高2兆円超、35期連続増収という驚異的な成長を遂げるドンキの組織文化を、PBリブランディングプロジェクトを軸に紐解いていく。著者は、代表取締役社長CEOの吉田直樹氏、PB事業統括責任者の森谷健史氏、そしてプロジェクトパートナーである博報堂の宮永充晃氏だ。通読すれば、消費者の心を掴む商品を次々と生み出す仕組みや、ドンキの挑戦の足跡に迫ることができるだろう。

本書は、吉田氏がハワイ法人の社長として入社するも、ドンキという会社があまりに「変わっていること」に驚いたという記述から始まる。さて、吉田氏を驚かせたドンキの企業文化とは?

――その答えは本文で明かされる。ぜひドンキの独自の企業文化と成功の秘密を探ってみてほしい。

著者

吉田直樹(よしだ なおき)
PPIP 代表取締役社長CEO
1964年大阪市生まれ。88年国際基督教大学卒業。95年フランスINSEADでMBA取得後、マッキンゼー入社。2007年にPPIHに入社。海外事業本部長兼米国子会社社長。12年取締役、13年専務取締役、15年専務取締役兼CCO(最高コンプライアンス責任者)。18年に代表取締役専務兼CAO(最高管理責任者)となり、19年から代表取締役社長CEO。

森谷健史(もりたに たけし)
PPIH 上席執行役員 PB事業統括責任者 マーケティング戦略 管掌
2005年4月、株式会社ドン・キホーテ入社。入社後は、第1事業部(家電部門)店舗担当者新宿店に配属。その後、エリア担当を経て生活家電部門責任者を担当。生活家電部門において商品開発を経験したことをきっかけに、PB推進部の家電責任者として多くのPB商品の開発を手掛ける。17年からはデジタル戦略責任者としてアプリ開発に携わる。19年にPB事業戦略本部本部長に就任、「情熱価格」のリニューアルを行う。誰よりも楽しむことをモットーに、仕事が労働にならないよう率先して楽しむことを心掛けている。

宮永充晃(みやなが みつあき)
博報堂 クリエイティブディレクター / クリエイティブ局 部長 / YОKIリーダー
2012年博報堂入社。博報堂DYメディアパートナーズに出向し通販クライアントを担当。その後、マーケティング部門に異動し、コミュニケーション戦略・商品開発・事業戦略・中期経営計画策定を担当。現在はクリエイティブ部門に属し、複数領域を統合的にプランニング。

本書の要点

  • 要点
    1
    2019年に社長に就任した吉田は、当時のPB「情熱価格」の認知度の低さに危機感を覚え、リブランディングプロジェクトを立ち上げた。
  • 要点
    2
    森谷、宮永らのプロジェクトチームは、社内のヒアリングなどを通して、“驚きの面白さ”こそがドンキのコアな価値であるという結論を導いた。この発見をもとに、パッケージのヒントが生まれた。
  • 要点
    3
    ドンキには権限委譲の文化がある。この文化のもと、全国のドンキスタッフ一人ひとりが高速でPDCAを回し、改善を行っている。

要約

あまりに変わっている会社、ドンキ

入社した日の衝撃

ドン・キホーテのハワイ法人の社長として入社した当日、吉田直樹(よしだ なおき)は大いに戸惑っていた。ドンキという会社があまりに変わっていたからだ。

そもそも入社の経緯からして変わっていた。

コンサルティング会社を経営していた吉田は、仕事の関係でドンキの安田会長とも面識があった。安田会長は、会うたびに「吉田さんもコンサルなんかやってないで、実業をやったらいいよ。ドンキはいいよ、面白いよぉ」と、吉田の職業を思いっきりディスってくる。

そんなある日、安田会長から電話がかかってきて、突然「ハワイの(現地法人の)社長になって欲しい」と言われた。仕入れも店舗の経験もないからと断ったが、次の日もまた次の日も電話がかかってくる。吉田はつい入社を承諾してしまった。

そうして迎えた入社日。手続きやオリエンテーションはなく、「この部屋、使ってください」と言われただけだった。仕事の概要さえ知らないまま、ハワイ法人の社長に就任したのだ。

「決裁を取りに来たんじゃないんですよ」
gorodenkoff/gettyimages

吉田がドンキに入って驚かされたことは数えきれないが、その中の一つが「権限委譲」の文化だった。

実際、本書の共著者である森谷健史(もりたに たけし)は、新卒2カ月半で仕入れ4000万円の自由を手に入れた。まだレジ打ちさえできない新人が、だ。

こんなエピソードもある。あるとき、森谷が吉田の元にやってきた。森谷が携えていたのは有名俳優を起用したテレビCMの稟議書で、そこには数億単位の金額が記されていた。吉田が「こんなにお金を使って大丈夫なの?」「そもそも、CM効果ってこの場合、どうやって数値化するの?」などと突っ込みを入れると、森谷は平然とこう言い放った。

「吉田さん、別に決裁を取りに来たんじゃないんですよ。情報を共有しに来ただけです」

あらためて稟議書を見ると、確かに吉田の決裁を必要としないギリギリの金額になっていた。うまいことやったよね、森谷――。

ドンキはこうしたエピソードに事欠かない、変わった会社である。

【必読ポイント!】 「情熱価格」のリブランディングプロジェクト、始動

消費者の認知度はわずか26%

さかのぼること2009年、ドンキは自社初となるプライベートブランド(PB)を立ち上げた。その名も「情熱価格」だ。5日間で3万本を完売した「690円ジーンズ」を皮切りに、5万円台の4Kテレビや1万円台のノートPCなどでヒットを続けていた。2016年には「情熱価格」に加えて「情熱価格+PLUS」と「情熱価格PREMIUM」が生まれた。

2019年に社長に就任した吉田は、この路線に不安を抱いていた。お客さまにしてみれば、「情熱価格」はまだしも、「情熱価格PREMIUM」はイメージが湧かないのではないかと思ったからだ。

ところが、社長就任早々に実施したブランド認知度調査では、さらに悪い結果が出た。そもそも「情熱価格」を知っていると答えた消費者がわずか26%しかいなかったのだ。一方、競合であるコンビニチェーンや総合スーパーのPBはその3倍以上の認知度があった。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2494/3775文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.02.06
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
読むだけで数字センスがみるみるよくなる本
読むだけで数字センスがみるみるよくなる本
深沢真太郎
ライバルはいるか?
ライバルはいるか?
金間大介
AIにはない「思考力」の身につけ方
AIにはない「思考力」の身につけ方
今井むつみ
部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
橋本拓也
頭のいい説明「すぐできる」コツ
頭のいい説明「すぐできる」コツ
鶴野充茂
「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方
「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方
下間都代子
科学的根拠(エビデンス)で子育て
科学的根拠(エビデンス)で子育て
中室牧子
ユニクロの仕組み化
ユニクロの仕組み化
宇佐美潤祐