ビジネスにおける説明の目的は「仕事で結果を出すこと」であって、相手にわかりやすく伝えることでも、正確に伝えることでも、問題が起こらないようにすることでも、情報を自分のところだけで止めておかないことでもない。この「目的意識の差」が、「説明の効果の差」としてはっきりと表われる。
ビジネスにおける説明の目的は「仕事で結果を出すこと」。この定義のもとでは、説明の効果は大きく三段階に分割できる。
第一段階は、「伝える」という段階。話し手が聞き手に情報を一方的に渡した状態であり、相手に話が伝わったかどうかはわからない。
第二段階は、「伝わる」という段階。話し手が伝えた情報を聞き手が理解した状態だ。だが、まだ相手は行動を起こしておらず、「仕事で結果を出すこと」には至っていない。
第三段階は、「結果が出る」段階だ。仕事を進めたい、相手に協力してもらいたいなど、話し手が説明によって意図する行動が実現した状態である。
ビジネスにおける説明の基本は、自分が思いついた順番ではなく、聞き手が聞きやすいと感じる順番で話すことだ。
わかりやすい例を紹介しよう。著者があるホテルで「この時期は、お客さんは多いのですか? 今日は混んでいますか?」と聞くと、スタッフは「今日の予約は100部屋くらいですね。8割程度でしょうか」と答えた。予備知識のない著者は、この答えでは混んでいるのかどうかわからなかった。
説明においては、「大きな情報」→「小さな情報」の順で話すのがもっとも聞きやすい。先ほどの例であれば、まずは「混んでいるか否か?」「混んでいるとしたら、普段と比べてどれくらい混んでいるか?」という問いに「比較的混んでいます」などと「大きな情報」を提供する。そのうえで「今日の予約は100部屋」「8割」といった「小さな情報」を与える。まとめると、次のようなイメージだ。
「比較的混んでいます。当ホテルの平均稼働率は約7割ですが、今日は8割程度です。ちなみに客室は125部屋で、100組ほどのお客さまが泊まっていらっしゃいます」
「話を聞こうという心の準備」ができていないときに情報を提供されても、なかなか理解できないものだ。ここでは、相手に「心の準備」をしてもらうコツを2つ紹介しよう。
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