頼んだことをすぐにやってもらうためには、相手との信頼関係が不可欠だ。どんなにスキルや考え方を身につけても、信頼関係がなければ人は動かない。信頼関係を築くのは難しく思えるかもしれないが、いつものやりとりを少し工夫するだけで、相手との関係を深めることができる。
まず試してほしいのは、相手を否定せずに、どんなときでも「認める」ことだ。相手を先延ばし人間にする方法の1つは、「相手を否定する」ことである。誰だって、自分の言動を否定されたら、嫌になってしまう。相手が動いてくれないことに悩んでいる人は、「だから言ったよね」「やるって言ったじゃない」などの「否定の相槌」を打っていないか、日々の言動を振り返ってみよう。相手を否定している人のほとんどは、相手に期待し変わってほしいと思うからこそ、「善意の否定」をしている。だからこそ、自分の言動が原因で相手が動けなくなっていることに気づきづらいのだ。言った側にとっては些細な相槌のつもりでも、否定された側はやる気や自信を失ってしまう。
「否定の相槌」の代わりに取り入れたいのが、「そうなんだ」「そういう気持ちなんだね」といった「肯定の相槌」だ。相手の言っていることが間違っているときにまで「肯定の相槌」はできないと言う人がいるが、「肯定の相槌」は必ずしも相手の話へ同意や共感を示すものではない。これはあくまで、「あなたは、そう思ったんですね」と相手の話を受け止め、相手が言っていることや感じたことを「受け取りました」という合図である。
「肯定の相槌」により、相手が「すぐやる人」に変わるわけではない。しかし、「肯定の相槌」を続けていくことで、相手がこちらの気持ちを受け入れる素地ができていくはずだ。
相手を先延ばし人間にさせるもう1つの方法が、「自分が一方的に話す」ことだ。相手を思うがゆえに行動するメリットや先延ばしにするデメリット、効率的なやり方、経験など、長々と話してしまった経験はないだろうか。よかれと思って話したことであっても、一方的な話は相手の行動力を奪うことになる。
人は聞くよりも話すほうが行動につながりやすい。話していくうちに自分の考えが明確になったり、整理されたりして、気持ちを切り替えることにつながるからだ。相手の話を長々聞かされても、聞き手の考えは整理されないし、気持ちの切り替えにもならない。むしろストレスが溜まり、動く気がなくなってしまうことさえある。その結果、話す側のやる気は高まり、聞き手のやる気はなくなるというミスマッチが起きてしまうのだ。
3,400冊以上の要約が楽しめる