ユニクロの仕組み化
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ユニクロの仕組み化
出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2024年11月02日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

日本を代表する企業となったファーストリテイリング(以下、ユニクロ)。ユニクロのすごさは誰もが認めるところではあるが、数字を見ればより実感することができる。

まず、時価総額は国内7位の14.5兆円(2024年8月23日時点)。さらに「将来の成長期待値」といわれるPBRは、時価総額トップ10企業の中で第1位。つまりユニクロは、日本で最も成長と価値創出が見込まれている会社なのだ。

地方のいち洋品店がここまで成長できたのは、もちろん創業者・柳井正氏の功績が大きい。しかし本書の著者でありユニクロの執行役員を務めた宇佐美潤祐氏は、ユニクロの強みは「仕組み化」にあると断言する。生産性向上、人材育成、イノベーションの創出、スピード経営。ユニクロではあらゆることが仕組み化されているのだという。

たとえば、店舗における仕組みと聞くと、「〇〇のときは××する」というマニュアル的なものを想起するかもしれない。しかしユニクロの仕組みは「なぜそれをやるのか」という指針であり、具体的な行動を指し示すものではない。日々の業務の中では、想定外の事態やトラブルも発生する。しかし、スタッフひとりひとりが自分の頭で考え、自律的な動きができれば生産性は上がるし、多様なアイデアも浮かんでくるだろう。ユニクロは自律人材の宝庫であり、それが組織成長のエンジンとなっているのだ。

本書を読むことで、変革と挑戦を続けるユニクロの強さの秘密を知ることができる。ビジネスリーダーや経営に関心がある方にとって、学びの多い一冊だ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

宇佐美潤祐(うさみ じゅんすけ)
東京大学経済学部卒業。ハーバード大学ケネディ大学院修了(政策学修士)。アーサー・D・リトル経営大学院修了(経営学修士、首席)。
1985年に東京海上に入社。米国留学を経て、戦略コンサルティング業界へ。ボストン コンサルティング グループ(BCG)ではパートナー、組織プラクティスの日本の責任者を務め、Organization Practice Awardを受賞。その後、シグマクシスを経て、2012年から2016年の間、ファーストリテイリングの経営者育成機関FRMIC担当役員を務めた。その後アクセンチュアの人材組織変革プラクティスのジャパン全体の責任者を経て、リード・ザ・ジブンを起点にした人材組織変革を手掛けるUNLOCK POTENTIAL(「人と組織の可能性を解き放つ」の意味)を設立。デジタルトランスフォーメーションにともなう人材組織変革、経営者人材育成、経営チーム変革、組織風土変革、新規事業創出等のコンサルティングおよび研修・講演を行なっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    大勢の組織メンバーの意識を変えるには「仕組み化」が必要だ。
  • 要点
    2
    ユニクロには、経営理念を実践に落とすための「原理原則」がある。「原理原則」はマニュアルと違い「なぜやるか(Why)」が書かれており、全スタッフの行動指針となっている。
  • 要点
    3
    ユニクロでは「ひとりひとりが経営者になること」が求められる。その意識づけを仕組み化したものが「経営者になるためのノート」だ。
  • 要点
    4
    現在の3倍の高さの目標を掲げる「3倍の法則」は、ユニクロのイノベーションの原動力となっている。

要約

なぜ「仕組み化」が必要なのか

大勢を一気に変えられるのは「仕組み化」だけ
Urbanscape/gettyimages

組織が大きく成長するには、組織のメンバー全員が変わらなければならない。そのためには、ひとりひとりが「変革」の意識を持つ必要がある。

しかし、それは容易なことではない。数十人の会社でも難しいのに、数千人、数万人、数十万人規模となればなおさらだ。人を変えるには熱意が要るが、大きな組織で個々のメンバーに訴えかけるのは非現実的だ。

だが「仕組み化」を使えば、大勢を一気に変えることができる。ユニクロには、世界中の店舗スタッフひとりひとりまで変える仕組み「究極の個店経営」がある。

「究極の個店経営」は2014年に打ち出された。チェーンストアの強みを生かしながら、各店舗が地域に根ざして地域のお客さまに愛される「個店」をつくることを目指すのだ。

創業経営者の柳井正さんは、「究極の個店経営」の主役を店舗スタッフに据えている。本部からの指示にただ従うのではなく、経営者マインドを持って「この地域に合った売り場とは何か」「お客さまの期待に応えるにはどうすべきか」と、ひとりひとりが自分の頭で考える。「究極の個店経営」とは、働いている人たちのマインドを変える「仕組み」なのだ。

ユニクロはこの「究極の個店経営」を実践するための仕組みを複数用意し、うまく機能させている。

【必読ポイント!】「生産性」を上げる仕組み

経営理念と実践を結ぶ「原理原則」

企業には必ず経営理念がある。経営理念とは、会社の存在意義や方向性を示す北極星のような存在だ。経営理念なくして企業経営は成り立たないが、従業員が経営理念を「自分事化」して、日々それに基づいて働くのは難しい。経営理念を「自分事化」するには「仕組み」が必要だ。

ユニクロには経営の基本方針を表した「経営理念23カ条」がある。これを日常で実践に移す架け橋となるのが「原理原則」だ。ここ10年でさまざまな原理原則がつくられ、現場で運用されている。

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要約公開日 2025.02.10
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