100円のコーラを1000円で売る方法
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100円のコーラを1000円で売る方法
出版社
出版日
2011年12月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

マーケティングの勉強は一筋縄ではいかない。なにしろ覚えることが多い。聞きなれないマーケティング用語に悪戦苦闘した人はかなりの数にのぼるのではないだろうか。

そんな用語や理論を、無理なく楽しく学ぶことを実現したのが、本書『100円のコーラを1000円で売る方法』だ。著者の永井孝尚氏は、日本アイ・ビー・エムでの長年の経験をもとに、実践的なマーケティング戦略を物語形式でわかりやすく解説している。主人公は、セールス出身の破天荒な女性。異動先の「商品企画部」で奮闘しながら、マーケティングを学び、成長していく。ストーリーは軽快で読みやすく、物語としても十分に面白い。読者は、ストーリーを追っていくうちに、自然とマーケティングの知識を理解し、吸収することができる。

本書のストーリーは、豊富な参考文献にもとづいた、マーケティング理論に支えられ、本書を終えたらマーケティングの名著に挑戦することも可能だ。最初から名著を読み進めることは難しくとも、本書を読み終えた後であったら、「あのエピソードに出てきた理論か」と、親しみを持ちながら原典にあたることができるはずだ。

まずは気軽に、「商品企画部」の一員になった気分で、ストーリーを追うところから始めてみよう。マーケティングにかかわるビジネスパーソンにはもちろん、これからマーケティングを学びはじめようとする新入社員や学生にも広くおすすめしたい一冊である。

著者

永井孝尚(ながい たかひさ)
日本アイ・ビー・エム株式会社ソフトウェア事業部シニアマーケティングマネジャー。1984年に慶應義塾大学工学部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。1991年よりIBM大和研究所の商品プランナーとしてグループウェア製品を企画し立ち上げるもバブル崩壊で大苦戦。マーケティングプロモーションの傍ら、セールスとして全国を飛び回り、3年間で多くの大規模プロジェクトを獲得する。1996年にはグループウェア製品開発チームのマネジャーとしてお客様をサポート。
1998年よりマーケティング・マネジャーに転じて、CRMソリューションのマーケティング戦略立案・実施を担当。バリュープロポジションに基づいたマーケティング施策の推進により、日本市場シェア1位と市場認知度1位獲得に貢献。現在は同社ソフトウェア事業で事業戦略を担当。日本のお客様が、経営変革の方法論としてのソフトウェアをご活用いただくために活動中。
著書に「残業3時間を朝30分で片づける仕事術』(中経出版)、『バリュープロポジション戦略50の作法』(オルタナティブ出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    アメリカの鉄道はすっかり廃れてしまった。その原因の1つは、彼らは自分たちの売っているものが「輸送手段」ではなく「鉄道」だと考えていたからだ。
  • 要点
    2
    品揃えと価格を武器に家電量販店は業界で圧倒的な地位を確立した。一方で、街の電気屋も生存に成功している。品揃えと価格では勝てない街の電気屋は、高齢者向けのサービスを武器にした。
  • 要点
    3
    100円のコーラを1000円で買ってしまうときは存在する。そのキーワードはサービスである。特別な体験がそれを可能とするのだ。

要約

化粧品会社が売るのは化粧品か

久美と与田
Rattankun Thongbun/gettyimages

会計ソフトウェア専業の駒沢商会の東京オフィスに、地方でセールスをやっていた女性が転勤してくることになった。名前は宮前久美。10年間セールス一筋で、武勇伝は数知れない。契約のためなら反則スレスレのやり方も辞さない。そんな彼女は「セールスはもう十分」という本人の希望で、商品企画部に異動することになったのだ。

「この会社の商品、みんなガラクタです!」

出社初日に彼女が商品企画部の会議で放った一言に、場が凍りついた。久美が異動を希望したのは、現場の営業が売るのに苦労するような「ガラクタ」をちゃんとした商品に変えるためだというのだ。

そんな癖の強い久美の教育係になったのは、商品企画部の与田誠だった。3年前に駒沢商会に転職してきた与田は、主にソフトウェア企業を中心にマーケティングの経験が長く、知見も深い。部長にも頼りにされる存在だ。部内で定期的に開催される勉強会では、与田を中心にマーケティング戦略を学んでいる。通称“与田スクール”に、久美も参加することとなった。

その日のテーマは「事業とは何か?」だった。与田はこう言う。自社の事業を定義するうえで何よりも大切なのは、“顧客視点”であると。これに呆れかえったのは久美だ。10年間現場でお客さんと接してきた自分には、顧客視点から見たウチの事業など当たり前すぎて、今さらだと言うのだ。「ウチの事業は、“お客さんの役に立てる会計ソフトを開発して、提供すること”に決まっているじゃないですか」を、ため息まじりに言う久美は、勉強会は役に立たないと決めて帰り支度を始める。その様子に、今度は与田がため息をついた。

「思った通りの退屈な答えでしたね。0点です」

久美はピタッと動きを止めて与田を見た。

「あなたの考えはきわめて、とても、すごく、“あ・さ・い”」

久美は激高した。まくしたてるように自分の何が浅いかを聞き出そうとしたが、与田は何事もなかったかのように勉強会を続ける。そして、アメリカにおける鉄道の話を始めた。

「鉄道会社」だったから衰退した

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要約公開日 2025.02.19
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