Brexit(ブレグジット)、アメリカ大統領選に代表されるポピュリズムの台頭、北朝鮮のミサイル問題、そして今も続くISのテロ事件――。「マクロンVSルペン」の対決となった先日のフランス大統領選では、前者に軍配が上がりましたが、その動向を固唾をのんで見守っていた方もおられるのではないでしょうか。
日本の政治・経済・企業動向にも確実にインパクトを与える、激動の国際情勢。各地域、国のピースを一つずつ組み合わせて、浮かび上がってくる「私たちの生きる社会」の絵はどのようなものなのか? 「国際・外交のニュース、実はわかったつもりになっているかも……」と薄々感じていた方に向けて、国際社会が抱える問題の背景を読み解き、未来を見通すうえで、「これだけは!」という5冊を紹介します。
大国アメリカに到来した超一極集中社会とはどのようなものなのか。エリート校に入るべく、高騰する教育費を借金で賄う学生たち、アメリカの製造業の「一人勝ち」と現場から消える人間、個人のデータが次々と丸裸にされ世界中で売り買いされる現状。挙句には、0.1%の超富裕層が世のすべての富を奪っていく――。本書を読むと、アメリカの凄まじい現実は、決して対岸の火事などではなく、日本のたどる未来を先取りしていることがわかるはず。日本に押し寄せる巨大なうねりにどう対処するのか。そのヒントが本書にあります。
英国のEU離脱がまだ現実味を帯びていなかった2014年時点で、それを予見していたかのように、EUの課題をつぶさに描いた一冊です。英国シティNo.1エコノミストである著者の慧眼が光ります。単一通貨ユーロの問題点や、英国国民投票の際に離脱派が主張した移民問題、そしてEUや英国に拠点を置く外資企業への影響など、今読んでおくべき論点が一目瞭然です。欧州の動向を知るなら、まずは本書から!
一段と混迷を極めるユーラシアの心臓部、中東。著者は、1970年代のイラン・ジャパン石油化学プロジェクトを機にイラン、イスラエル、カイロ、イラク、トルコを訪れ、中東世界をつぶさに観察してきた人物です。著者の「35年間の思索と行動の結果」が詰まった本書は、中東の情勢を俯瞰し、これからの日本のエネルギー政策や中東との関わり方を考えるのに最適な一冊。中東を読み解く真のインテリジェンスにふれてみてください。
巨額の富を生み出す天然資源に数多く恵まれているにもかかわらず、今日も厳しい貧困と内戦に苦しめられているアフリカ。その背景には、先進国におけるアフリカの資源の需要増に伴う、「資源取引がもたらす腐敗」があるといいます。本書が明らかにするのは、その巧妙な略奪のシステムです。読み終える頃には、アフリカで起きている悲劇が、単なる他人事とは感じられなくなることでしょう。新しい植民地主義の到来という、アフリカの真実を知るために欠かせない一冊です。
今最もホットな話題の一つである移民問題。現在、移民政策をめぐる議論の多くが感情論に終始し、その経済的・文化的・政治的効果に関する学術的研究の成果がないがしろにされているといいます。これに危機感を抱いた著者が、移民政策の議論をより客観的かつ建設的なものにしようと、膨大な調査結果の要諦をまとめたのが本書です。特筆すべきなのは、移民問題に詳しい錚々たる論客が、世界の移民政策の功罪に対する考察も述べている点。日本にふさわしい移民政策のあり方を議論する際にも、非常に有用な視座を与えてくれることでしょう。