人生を変えるような、大事な場面で自分の力を出し切れない。このような経験は、誰しも体験したことがあるだろう。大きなプレッシャーのかかる場面で不安な気持ちばかりを優先して、良い結果に至るまでの自分をイメージできずに、その結果、失敗を招いてしまう。不安を感じるからこそ、「今、この瞬間」に集中できない状態なのである。
この不安を制するには、自分が成功するストーリーを信じることが必要である。しかし本当に「信じる」ことができなければ、逆効果を生むことになる。
多くの人は、自分の目の前にいる人物が自信や熱意のある「ふり」をしていると、敏感に感じとる。たとえば、採用試験で好印象を与えようと、無理やり笑顔をつくった応募者に対して、面接官は「作為的な笑顔」と感じる。
このように熱意や情熱、自信などの第一印象は意図的に演出しにくいため、それらは信頼できる情報となりうるのだ。よって、先のことばかりを考えて、今に集中していない態度は相手に見破られる。反対に、本当の自分を表現すると、相手にもそれが伝わるのだ。
著者は社会心理学を専攻し非言語行動が人間に与える影響を研究しているが、過去にプレゼンス(自信の表現)のない状態を経験している。
そのとき著者は、まだ博士課程の学生であった。ある学会で著名な学者たちの前で自分の研究成果を発表することにとても不安を覚えていた。その結果が教授の職に直結する、いわば就職活動だったからである。
そして著者は学会の会場で偶然にも3人の著名な学者とエレベーターに乗り合わせた。そこで「エレベーターピッチ」と呼ばれる、短時間で自分を売り込むことトークに挑戦したのだが、焦りや不安が先行してしまい、全く上手く話すことができず、散々な結果となった。そして、学会の期間中、その場面を繰り返し思い出しては後悔を深めることになった。
本書で唱えるプレゼンスとは、「自分の真の気持ちや考え、価値観、可能性に耳を傾け、自然にそれを表現できている状態」のことである。さらに、永久に変わらないものではなく、その瞬間ごとに移り変わる現象を指す。
プレゼンスは、いつわりのない自分で、かつ個人的にパワーを感じるときに実現できる。このとき、私たちの表情や姿勢、しぐさは連動するのである。そのような、いわば一体となった自己は人をひきつける力を持つ。さらにプレゼンスを持つと、ストレスのかかる状況下でも不安などのマイナス感情を感じにくくし、後悔やフラストレーションを起こさないメリットがある。
ときに、人は不安になると緊張する。ここで注意したいのは、
3,400冊以上の要約が楽しめる