スマートカットとは、本来時間をとられるべきではないところをスマートに回避しながら、注力すべきところに集中して、大きな目標を達成する技である。その点で、スマートカットは、手っ取り早く短期間で利益を出そうとする「ショートカット(単なる近道)」とは異なっている。
従来から慣れ親しんだわかりやすい道を選んでコツコツやっても一向に伸びない。とはいえ、常識に立ち向かい、短期間に斬新な手法を見つけ、驚くべき成果を上げる人たちは、ごく一握りだ。期待以上の成果を出す人々は、既成概念にとらわれず、多方面から問題を解決する手法、「ラテラル・シンキング」をモノにして、スマートカットを駆使している。本書では、彼らに共通する黄金の法則を明らかにしていく。
アメリカでは、300年近くにわたり、歴代大統領のほうが上院議員よりも平均就任年齢が若い。本来、上院議員よりも大統領になるほうがはるかに難しいため、いかにも奇妙だ。
また、議員経験年数に目を向けると、歴代大統領の約3分の1は8年以内となっており、わずか数年で政界のトップに立った人も少なくない。では過去の経歴はどうか。軍人経験者や知事経験者、慈善家や大学学長、俳優など実に多彩である。「懸命に働き、辛抱強く出世の階段を上っていく」。そんな立身出世のストーリーは、彼らには当てはまらない。
短期間で大統領の座をつかんだ人たちは、各自違う分野でリーダーシップを磨き、階段を切り替えることで、いわゆる下積み生活を迂回し、最後に大統領の階段へひらりと飛び移り、鮮やかに駆け上がったのだ。
彼らは「この分野で通用するなら、世界のどこでも通用する」と思わせる成果を残すことで、大統領候補に一番求められる「強くて決断力のあるリーダーシップ」を磨き、信用を獲得してきた。これを著者は「シナトラの法則」と名付けている。
歴史に名を残す成功者たちは、政治に限らず、ビジネスやエンターテインメントの世界でも、「下積みに耐えろ」「階段を着実に上れ」という教えにとらわれず、小さな成功を元手に大きなチャレンジをし、一気に目的を達成する。
ハッカーのような発想と起業家型の行動力をもとに、成功への階段(ラダー)を鮮やかに攻略(ハッキング)してきたといえる。これこそが、まさにラダー・ハッキングである。
時間をかけずに成功する人は、その道の達人(メンター)に教えを請う。メンターとは、指導者・良き助言者という意味である。カナダの歌手ジャスティン・ビーバーはユーチューブで数曲披露してから、わずか1年で一躍スターの座を手にした。圧倒的なスピードで天下をとれた背景には、黄金のコーチ陣の存在がある。これはビジネス界でも同様だ。良きメンターを得た起業家は、そうでない起業家と比べて7倍もの資金を集め、3.5倍も早く会社を成長させている。
しかし、素晴らしい師匠を得たからといって、必ずしも成功への道のりを一気に短縮できるとは限らない。
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