リッツ・カールトンのサービスでは、お客様とのコミュニケーションを大切にしている。その根底にあるのは、「お仕えする側も紳士・淑女である」という考え方だ。お客様と話し、気持ちを汲み取ることで本当にお客様が求めているものを感じ取り、時にはマニュアルを超えた提案やサービスで満足してもらってこそ、真のホスピタリティだと言える。
マニュアル通りに自分が担当する仕事だけを淡々とこなすのではなく、担当業務の垣根を越えて情報を共有し合い、業務を支えてくれるほかのスタッフに感謝の気持ちを抱く。そうすることで、互いを良い仲間として認め合い、切磋琢磨していく風土を培っているのである。
リッツ・カールトンの信念は「クレド」と言う紙に書かれている。そこには時代や立地に左右されず、ずっと守っていきたい精神がまとめられている。
従業員が常に持ち歩いているクレドだが、その内容はある意味で漠然としたものだ。しかし、だからこそ従業員一人ひとりが、「心のこもったおもてなしとは何なのか」「自分は今ここでどう行動するべきなのか」を真摯に突きつめて考えることを促す。そしてその結果、お客様と心を通わせるホスピタリティを提供できるというわけだ。
また、従業員が紳士・淑女としてお客様を大切にするのと同様に、会社側も従業員のことを尊重しており、「従業員への約束」として、才能を伸ばす教育機会の提供を誓っている。実際、リッツ・カールトンの従業員は楽しそうに仕事をしていると言われることも多いという。
リッツ・カールトンの従業員が仕事をするうえで、基本としていることが七つある。
一つ目は「誇りと喜びを持って仕事をする」ことだ。お客様に喜んでもらい、さらにそれが仲間からも素晴らしい働きとして認められることで、よりモチベーションは高まるものである。
二つ目は「お客様の温度を感じる」ことである。お客様の気分を感じ取り、それに合わせて接することができるよう、感性を磨くことは良いサービスのために必要不可欠だ。
三つ目は、「お客様に喜んでいただくため、自分たち自身も楽しむ」ことである。お客様へのおもてなしや演出は、自分の感性やクリエイティビティの見せ所として楽しむという精神が、リッツ・カールトンには根づいている。
四つ目は、「相手を祝う気持ちをもつ」ことだ。リッツ・カールトンでは、従業員同士で誕生日や入社などを祝うイベントを常日頃おこなっている。人を祝うための感性や表現力を磨きつづけることで、お客様へのサービスも向上するという哲学がそこにはある。
五つ目は「心を温める優しさを忘れない」ことである。
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