#アソビ主義

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出版社
マガジンハウス

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出版日
2016年11月17日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

表紙には大銀杏を結った力士の写真が、裏表紙には西部劇に出てきそうな保安官の写真がある。いずれも本書の著者、中川悠介氏による扮装だ。もともとは年賀状用に撮影されたものとのことだが、これだけを見ても相当遊び心のある人物であることがうかがえる。

著者が代表を務めるアソビシステムは、今や国内のみならず海外でも絶大な人気を誇る「きゃりーぱみゅぱみゅ」を生み出したことで知られる会社だ。同時に、火曜日に休める美容師向けに月曜夜開催する「美容師ナイト」なるイベントを手掛けたり、海外に原宿のカワイイカルチャーを発信するプロジェクトも推進したりと、良い意味で「何をしているのかよくわからない」企業でもある。そんなアソビシステムは、今や若者の心理や文化を紐解くのに欠かせない存在にまで成長した。

35歳という若さでアソビシステムをここまで成長させた著者だが、本書から垣間見える人柄は意外に謙虚であり常識的だ。「社長が自分の荷物を持たなくなったら終わり」「この若さで運転手付きの車に乗るなんて、絶対に良くない」といった持論が次々と展開されるため、ベンチャー企業の若い経営者にありがちな姿を想像しながら本書を読むと、肩透かしを食らうかもしれない。だが、自分や会社を謙虚に、そして冷静に見つめられたからこそ、今のアソビシステムの成功があるのだろう。

本書には、現代の若者文化の仕掛け人の素顔が描かれている。古い文化を大切にし、新しい文化を紡いでいく男の生き様を、あなたもぜひ目撃していただきたい。

ライター画像
下良果林

著者

中川 悠介(なかがわ ゆうすけ)
1981年生まれ。イベント運営を経て、07年にアソビシステムを設立。「青文字系カルチャー」の生みの親であり、原宿を拠点に地域と密着しながら、ファッション・音楽・ライフスタイルといった、“HARAJUKU CULTURE"を、国内はもとより世界に向けて発信し続けている。自主イベント『HARAJUKU Kawaii!!』を2011年から全国各地で開催し、近年は、KAWAIIのアイコン・きゃりーぱみゅぱみゅのワールドツアーを成功させた。14年5月には、新プロジェクト「もしもしにっぽん」を発表し、日本のポップカルチャーを世界へ向け発信すると同時に、国内におけるインバウンド施策も精力的に行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    自分たちが理解できること、したいこと、やりたいことにこだわり、集中する。それ以外のものは、たとえビッグチャンスのように思える案件でも、手をつけてはならない。
  • 要点
    2
    物が大量に売れた時代の数字を基準に、「売れなくなった」「厳しい」と嘆いてはならない。時代は変わった。今の市場にふさわしい売り方や基準を考えていく必要がある。
  • 要点
    3
    失敗をすることを恐れてはならない。失敗という経験がデータベースとして蓄積されることで、成功の糧となるのだ。

要約

【必読ポイント!】 アソビシステムとは

背伸びはしない
Maksym Protsenko/Hemera/Thinkstock

イベント、モデルエージェンシー、ウェブサイトやアパレルショップの運営など、アソビシステムはさまざまな事業を展開している。しかし、それは最初から計画していたことではなく、自分たちにしかできないことを積み重ねていった結果である。

自分たちがわからないことはしないし、自分たちが全く興味のないことをやらなければならないような状況はつくらない。ただ自分たちがやりたいこと、理解できること、つまり「身の丈に合ったこと」をすると、アソビシステムは決めているのだ。

これまでに引き受けなかった仕事の中には、はたから見れば「どうしてこの仕事を断ってしまうのか」というケースもあった。しかし「自分たちがマネジメントできそうにない」と思う話は引き受けない。自分たちの領域から離れたジャンルのモデルを抱えることもしない。自分たちがやること、やりたいこと以上に、やらないことを強く意識することが大事な場面もあるからである。

「これは違う」と違和感を覚えるものは、絶対に手をつけない。あれこれやろうとするよりも、自分たちが理解できることややれること、やりたいと思うことにこだわる。それこそがビジネスを上手く進めるコツなのだ。

冷静に見つめる

会社がうまくいっているときは、周囲からおだててもらえる。逆にうまくいかなくなると、周囲はまるで手のひらを返すように冷たくなる。それは仕方のないことだ。

会社が軌道に乗っているときは「今度、ぜひ」「一度、仕事がしてみたい」という声が飛びかう。そのようなときこそ冷静になり、自分や会社を見つめなくてはならない。ましてや、甘い話を真に受けてしまうのは危険だ。

大切なのは、追い風が吹くときも向かい風のときもついてきてくれる、本当に自分を評価してくれる人たちとつきあい、手を組むことである。そのためには、自分も同じように、相手の気持ちに応えていけるよう誠実に向き合わなければならない。

実はアソビシステム創業前、著者は大きな失敗を経験している。クラブイベントを運営すべく起業したが、スポンサーをつけたことで必要以上に大掛かりなプロジェクトとなってしまい、照明や警備などに外注経費がかさんで赤字イベントが続出してしまった。その結果、借金は累積して6000万円にものぼり、会社を整理する羽目になった。しかしその失敗体験が、会社や自分自身を冷静に見つめることの大切さを常に意識させてくれている。

ブームではなくカルチャーをめざす
Ryan McVay/Photodisc/Thinkstock

アソビシステムが原宿にフォーカスしたのには大きな意味があった。原宿という場所には確実にファンがいるからだ。さらに著者は、お茶の間にCMを打つよりも、ウェブサイトやSNSを用い、特定の人に対して情報を流すほうが効果的な時代になるということも予測していた。

原宿のファンである女の子たちが、気になる情報をウェブサイトやSNSで発信すれば、情報の価値が上がりモノも売れる。大きなショッピングサイトは、顧客の囲い込みに躍起になるが、アソビシステムはもともとファンがいるところでビジネスをしているので、わざわざ囲い込む必要もない。

原宿がマスコミで取りあげられ始めたとき、たんなる一過性のブームに終わると目されていた。だが、大衆に根づくことをしていきたい、単に消費させて終わりというものにしたくないという考えを貫くのがアソビシステムである。

たとえば、饅頭を作っている会社が面白い味の饅頭を開発し、その売れ行きが伸びたとする。そして全国チェーンのコンビニが「自分のところで扱わせてほしい」と打診してきたとしよう。その饅頭会社がその案に飛びついた瞬間、本来の「饅頭をつくって売る」という仕事は、「大規模な流通」という理解不能なものに変化してしまう。これがブームの怖い部分である。

最初からブームではなくカルチャーとして根づかせることを意識して動く――それがビジネスをするうえで重要な態度なのだ。

「原宿のアイコン」を創る

きゃりーぱみゅぱみゅという存在

著者がきゃりーぱみゅぱみゅ(以下きゃりー)に初めて会ったのは、彼女がモデルとして参加した、あるファッションショーでのことだ。当時のきゃりーはまだモデルとしての実績に乏しく、雑誌でも写真が小さく載っている程度だった。しかし、すでにブログやSNSで面白いことを発信しており、会う前からひそかに注目していた。

SNS上での攻撃的でインパクトのある発信内容とは裏腹に、きゃりーは実際会ってみると非常に真面目な女の子だった。

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要約公開日 2017.01.23
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