イベント、モデルエージェンシー、ウェブサイトやアパレルショップの運営など、アソビシステムはさまざまな事業を展開している。しかし、それは最初から計画していたことではなく、自分たちにしかできないことを積み重ねていった結果である。
自分たちがわからないことはしないし、自分たちが全く興味のないことをやらなければならないような状況はつくらない。ただ自分たちがやりたいこと、理解できること、つまり「身の丈に合ったこと」をすると、アソビシステムは決めているのだ。
これまでに引き受けなかった仕事の中には、はたから見れば「どうしてこの仕事を断ってしまうのか」というケースもあった。しかし「自分たちがマネジメントできそうにない」と思う話は引き受けない。自分たちの領域から離れたジャンルのモデルを抱えることもしない。自分たちがやること、やりたいこと以上に、やらないことを強く意識することが大事な場面もあるからである。
「これは違う」と違和感を覚えるものは、絶対に手をつけない。あれこれやろうとするよりも、自分たちが理解できることややれること、やりたいと思うことにこだわる。それこそがビジネスを上手く進めるコツなのだ。
会社がうまくいっているときは、周囲からおだててもらえる。逆にうまくいかなくなると、周囲はまるで手のひらを返すように冷たくなる。それは仕方のないことだ。
会社が軌道に乗っているときは「今度、ぜひ」「一度、仕事がしてみたい」という声が飛びかう。そのようなときこそ冷静になり、自分や会社を見つめなくてはならない。ましてや、甘い話を真に受けてしまうのは危険だ。
大切なのは、追い風が吹くときも向かい風のときもついてきてくれる、本当に自分を評価してくれる人たちとつきあい、手を組むことである。そのためには、自分も同じように、相手の気持ちに応えていけるよう誠実に向き合わなければならない。
実はアソビシステム創業前、著者は大きな失敗を経験している。クラブイベントを運営すべく起業したが、スポンサーをつけたことで必要以上に大掛かりなプロジェクトとなってしまい、照明や警備などに外注経費がかさんで赤字イベントが続出してしまった。その結果、借金は累積して6000万円にものぼり、会社を整理する羽目になった。しかしその失敗体験が、会社や自分自身を冷静に見つめることの大切さを常に意識させてくれている。
アソビシステムが原宿にフォーカスしたのには大きな意味があった。原宿という場所には確実にファンがいるからだ。さらに著者は、お茶の間にCMを打つよりも、ウェブサイトやSNSを用い、特定の人に対して情報を流すほうが効果的な時代になるということも予測していた。
原宿のファンである女の子たちが、気になる情報をウェブサイトやSNSで発信すれば、情報の価値が上がりモノも売れる。大きなショッピングサイトは、顧客の囲い込みに躍起になるが、アソビシステムはもともとファンがいるところでビジネスをしているので、わざわざ囲い込む必要もない。
原宿がマスコミで取りあげられ始めたとき、たんなる一過性のブームに終わると目されていた。だが、大衆に根づくことをしていきたい、単に消費させて終わりというものにしたくないという考えを貫くのがアソビシステムである。
たとえば、饅頭を作っている会社が面白い味の饅頭を開発し、その売れ行きが伸びたとする。そして全国チェーンのコンビニが「自分のところで扱わせてほしい」と打診してきたとしよう。その饅頭会社がその案に飛びついた瞬間、本来の「饅頭をつくって売る」という仕事は、「大規模な流通」という理解不能なものに変化してしまう。これがブームの怖い部分である。
最初からブームではなくカルチャーとして根づかせることを意識して動く――それがビジネスをするうえで重要な態度なのだ。
著者がきゃりーぱみゅぱみゅ(以下きゃりー)に初めて会ったのは、彼女がモデルとして参加した、あるファッションショーでのことだ。当時のきゃりーはまだモデルとしての実績に乏しく、雑誌でも写真が小さく載っている程度だった。しかし、すでにブログやSNSで面白いことを発信しており、会う前からひそかに注目していた。
SNS上での攻撃的でインパクトのある発信内容とは裏腹に、きゃりーは実際会ってみると非常に真面目な女の子だった。
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