高橋宣行の発想筋トレ
高橋宣行の発想筋トレ
クリエイティブ・エンジンの鍛え方
高橋宣行の発想筋トレ
出版社
日本実業出版社
出版日
2016年09月29日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

現代のようなモノ余りの時代には、競合との差を生み出す個性化、差別化が強力な武器となりうる。本書によれば、自分だけにしかつくれない価値を生み出すには、「ホカとの微妙な違い」を感じ取る独自のセンスが必要だという。

著者の高橋 宣行氏は、株式会社博報堂でコピーライターやディレクター、制作部長を務めながら、毎日のように「発想の筋トレ」を行ってきたという。新人時代、手持ちの知識だけでは斬新なアイディアを生み出せないと実感し、発想力を鍛える膨大な課題をこなしてきた。例えば、「デパートを3カ月間探検し、人やモノの動きを観察する」、「都内で偶然選ばれた3地点の共通項を探し、そこから新しい時代の兆しを見つける」など、トレーニング方法は24例にも及ぶ。また、多少キャリアを積んだ後でさえ、クライアントごとに徹底して情報収集するなど、自分の領域を広げることが常に求められたという。高橋氏は、このときに異分野の知識を大量に取り込んだ経験が、センスを磨くことにつながったと振り返る。

本書では、強い個性化を求められ続けてきた高橋氏の実体験をもとにした、「発想センスを磨く方法」が余すことなく紹介されている。今後ますます混沌を極め、答えが見えづらい時代にこそ、個人の力(クリエイティブ・エンジン)を発揮することが欠かせない。高橋氏の伝えるトレーニング方法を実践して、クリエイティブの触覚と呼ぶべきセンスを磨き、「選ばれる人」をめざしてみてはいかがだろうか。

ライター画像
流石香織

著者

高橋 宣行(たかはし のぶゆき)
1940年生まれ。1968年博報堂入社。制作コピーライター、制作ディレクター、制作部長を経て、統合計画室、MD計画室へ。制作グループならびにマーケットデザインユニットの統括の任にあたる。2000年より関連会社を経て、現在フリープランナー。企業のブランディング、アドバイザー、研修講師、執筆活動などで活躍。主な著書に『高橋宣行の発想ノート』『高橋宣行の発想フロー』(以上、日本実業出版社)、『博報堂スタイル』『「差別化するストーリー」の描き方』『「コラボ」で革新』(以上、PHP研究所)、『オリジナルシンキング』『コンセプトメイキング』『「人真似は、自分の否定だ」』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『発想職人のポケット』(小学館)他がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ビジネスではホカと差別化が求められるため、微妙な違いを感じ取る「センス」がモノを言う。センスを磨くためには、モノゴトを知ることが欠かせない。
  • 要点
    2
    「センスのいい人」はモノゴトを知るために努力している。モノゴトを知ることで相手を思いやる感性も磨かれる。
  • 要点
    3
    著者は、センスと発想力を鍛えるために強制発想法などのアプローチを紹介している。トレーニングをひたすらこなすことにより、先を読む力を身につけ、発想の飛躍につなげることができる。

要約

ビジネスには「センス」が必要

差のない時代に「センス」を磨く重要性

ビジネスの究極の目的とは、「違いをつくること」だ。あらゆるデータを分析、数値化して合理的に論理を組み立て、みんなと同じことを求めていてはいけない。個人が、「センス」を発揮して、違いをつくることが求められている。センスとは「微妙な違いに気づき、感じ、嗅ぎ分けられる感覚の総体」である。全体の流れや細部の変化まで感じ取ることができれば、次の予測に違いが出る。とくに現在のような答えが見えづらい時代にこそ、予想外の発想で人に幸せや楽しみ、驚きを与えることが重視される。

著者は以前、データや調査資料をもとに合理的なコンセプトをつくりあげたところ、上司から「ロジックのエモーショナル化がない」と指摘されたという。たとえロジックを上手く組み立てたとしても、センスがなければ、人の心を動かせないことを示している。

そもそも、ビジネスとは全てケース・バイ・ケースであり、人間が生み出したものである。人間は「好き嫌い」の感情を伴うため、数値によるデータではなく、感覚的な「センス」で共感を得る必要がある。つまり、「この商品サービスを、どのように好きにさせるのか?」を考えることが、差別化を図る上で欠かせない。

創造性を発揮したいなら、センスを磨け
StockRocket/iStock/Thinkstock

未来の予測の精度を上げるには、センスを磨き、感度を高める必要がある。微妙な違いを感じ取れるようになるには、モノゴトを知らなくてはならない。

知識と体験を増やすことで、センスが磨かれる。すると、全体を見渡しやすくなり、個々の違いも発見しやすくなる。とくに発想がモノを言う仕事では、全体を俯瞰して仮説につなげ、「考えること」と「表現すること」を一体化させる姿勢が求められる。

ビジネスにおいては、いくら見事な戦略を組み立てたとしても、最後のディテールに気をくばれるかどうかが勝敗を決めることがある。日本人は、合理性や効率性が重視される欧米と比べたとき、気くばりのセンスがあると言われる。日本人の気くばりの細やかさは、想像力を働かせて相手の立場でモノゴトを考え、微妙な違いを感じ取った結果によるものである。今後、日本人が持つ想像力は、世界にも通じる大きな競争力となる。

著者によれば、センスとはクリエイティブの触覚部分となり、すべてはセンスからはじまる。創造性を発揮するには、日頃からモノゴトを知ろうとし、センスを磨くことが求められるのだ。

【必読ポイント!】 センスは誰でも磨ける

センスの有無は体験と知識次第
MoustacheGirl/iStock/Thinkstock

個々人のセンスは、天性のものではなく、その人が過去に得た知識や体験がベースとなっている。センスは誰もが持っているものであり、アートにとどまらず生き方やビジネスなど、ところどころで発揮されるセンスの総体が「あなたらしさ」となる。あえて「センスがない」と言うとすれば、それはモノゴトを知らないにすぎない。

一流と評価される人は、センスを磨く努力を怠らない人だといえる。センスとは誰かから教わるものではなく、自分でモノゴトを知っていく中で育つものにほかならない。「ビジネスのセンスを磨こう」と思うのなら、ひとつの課題に対してひたすら時間をかけて、量をこなし、深掘りしていくことが効果的だ。

センスのいい人は目のつけどころが違ううえに、あらゆる体験を通して、たくさんのモノサシを持っている。

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要約公開日 2017.02.01
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