企業経営で最も大事なのは「心」である。心が清らかで愛に満ちあふれたものであれば、経営だけでなく、人生も好転していく。実際のところ、私たちが愛に満ちた心を持つことは不可能だが、そのような心を「持とう」とする意志を大切にすべきである。
私利私欲に端を発した願望は、たとえ一時的に成功をもたらしたとしても、長続きはしない。なぜなら、世の道理に反した動機にもとづく願望は、それが強ければ強いほど、社会との軋轢を生むからだ。きれいな心で描き出した夢だからこそ、真の成功をつかむことができる。
きれいな心を持つには、自分自身のいたらなさを認め、そこから努力するという謙虚な姿勢が必要だ。能力のある人や気性の激しい人ほど、人の話を聞かないものだが、本当に実力を伸ばすことができるのは、素直な心で自分自身を見つめることのできる人である。そして、そうした人の周りには、同じように素直な心を持った人が集まるため、必然的に物事がうまくいくのである。
人間として最高の行為は、世のため、人のため、そして仲間のために尽くすことだ。尽くすためには、美しい心が必要であり、その心は、誰かの助けになることで、さらに磨かれていく。
この、「仲間のために尽くす」ことが、京セラのアメーバ経営の根幹をつくっている。アメーバ経営とは、組織を小集団に分けて、それぞれが1つの会社であるかのように、独立採算で運営させる手法だ。こうすることによって、おのおのが収益を上げているかどうか、無駄な動きをしていないかどうかを把握できるようになる。
この仕組みで重要なところは、業績の良いアメーバ(小集団)の給料をアップさせたり、ボーナスを多くしたりしないことだ。京セラでは、あるアメーバが会社全体の牽引役となって仲間のために貢献したとしても、金銭的な対価は支払わない。こう話すと、なぜ社員がそれで納得するのかと訝(いぶか)しがる人もいるが、京セラでは創業時からずっと、「代償を求めず仲間のために尽くすことが人間として1番大切である」と説いている。そのため、誰も成果給を求めるようなことは言い出さない。その代わり、よくがんばったところには賞賛を惜しまない。こうすることが、物心両面でみんなの幸福を実現すると考えているからである。
京セラの経営の基盤となっているのは、心の通じあえる社員同士の結びつきだ。感謝と誠意をもって信頼関係を築いていけば、たとえ上司と部下の関係であっても、お互い言いたいことがはっきり言えるようになる。そうすることで、問題点が誰の目にも明らかになり、仕事がスムーズに進むというわけである。
また、京セラでは、信頼関係を築くための手法として、コンパを最重要視している。慰安旅行などの会社行事が原則全員参加なのも、遊ぶことが目的ではなく、社員間の絆をさらに強めることが目的だからだ。会社の会議室で話をしているだけでは、信頼関係はなかなか育まれない。大勢で輪になって酒を酌み交わすのが、信頼関係を築く最良の手段である。
90%うまくいくと、そこで妥協してしまう人は少なくない。だが、「間違えたら消しゴムで消せばよい」というような安易な考えがあるかぎり、本当の意味で、自分も周囲も満足させる成果を得ることはできない。
自分自身の努力をさらに実りあるものにするためには、仕事では常にパーフェクトを求める必要がある。
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