京セラフィロソフィ

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出版社
サンマーク出版

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出版日
2014年06月10日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

日本のビジネス界で、著者の稲盛 和夫氏を知らない人はいないだろう。京セラやKDDI、日本航空の経営に携わり、そのすべての成長発展を導いた、日本を代表する経営者の1人である。

しかし、最初からすべてが順風満帆、というわけではまるでなかったようだ。京セラを立ち上げた当時、経営の経験も知識もなかった稲盛氏は、「どうしたら、正しい判断をし、会社を発展させることができるのだろう」と頭を抱えていたという。

悩んだ末に稲盛氏が導き出した結論は、「人間として何が正しいのか」を自らに問い、正しいことを正しいままに貫いていくことであった。本書のタイトルにもなっている『京セラフィロソフィ』は、稲盛氏がこれまでのビジネス経験を経て紡ぎだした集大成である。この明快な判断基準があったからこそ、稲盛氏は半世紀以上もの間、正しい決断を下しつづけることができたのだ。

ワーク・ライフ・バランスの重要性が強調される現代において、稲盛氏の哲学は、ともすれば時代に逆行しているように映るかもしれない。たしかに、仕事一辺倒になってしまい、その他を疎かにしてしまうのは問題である。しかし、心から仕事に打ち込むことで見えてくる景色もあるということを、本書は私たちに思い出させてくれるに違いない。

著者

稲盛 和夫(いなもり かずお)
1932年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミツク株式会社(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長。84年に第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任。2001年より最高顧問。10年には日本航空会長に就任し、代表取締役会長を経て、13年より名誉会長。1984年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰している。また、若手経営者が集まる経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。
主な著書に『生き方』(サンマーク出版)、『従業員をやる気にさせる7つのカギ』(日本経済新聞出版社)、『成功への情熱』(PHP研究所)、『人生と経営』(致知出版社)、『ど真剣に生きる』(NHK出版)、『人生の王道』(日経BP社)、『君の思いは必ず実現する』(財界研究所)、『働き方』(三笠書房)、『燃える闘魂』(毎日新聞社)などがある。
稲盛和夫オフィシャルホームページ
http://www.kyocera.co.jp/inamori/

本書の要点

  • 要点
    1
    私利私欲を追い求めても、成功は長続きしない。世のため、人のため、仲間のために尽くしてはじめて、本物の成功を手に入れることができる。
  • 要点
    2
    めざすべきはベストではなく、パーフェクトだ。一生懸命かつ誠実に働きつづければ、人間性は自然と養われ、心も美しくなっていく。
  • 要点
    3
    どんなに美しい言葉を並べたてても、率先して行動しなければ、誰もついてこない。
  • 要点
    4
    リーダーは、合理性と人間性、大胆さと細心さといった、両極端の性質を合わせもち、それらを適切な場面で用いなければならない。
  • 要点
    5
    信念があるからこそ、「真の勇気」は生まれる。立派な経営理念をつくりあげ、それを信念になるまで高めていくべきだ。

要約

「心」について

私利私欲を捨て、謙虚であれ
ipopba/iStock/Thinkstock

企業経営で最も大事なのは「心」である。心が清らかで愛に満ちあふれたものであれば、経営だけでなく、人生も好転していく。実際のところ、私たちが愛に満ちた心を持つことは不可能だが、そのような心を「持とう」とする意志を大切にすべきである。

私利私欲に端を発した願望は、たとえ一時的に成功をもたらしたとしても、長続きはしない。なぜなら、世の道理に反した動機にもとづく願望は、それが強ければ強いほど、社会との軋轢を生むからだ。きれいな心で描き出した夢だからこそ、真の成功をつかむことができる。

きれいな心を持つには、自分自身のいたらなさを認め、そこから努力するという謙虚な姿勢が必要だ。能力のある人や気性の激しい人ほど、人の話を聞かないものだが、本当に実力を伸ばすことができるのは、素直な心で自分自身を見つめることのできる人である。そして、そうした人の周りには、同じように素直な心を持った人が集まるため、必然的に物事がうまくいくのである。

仲間のために仕事をする

人間として最高の行為は、世のため、人のため、そして仲間のために尽くすことだ。尽くすためには、美しい心が必要であり、その心は、誰かの助けになることで、さらに磨かれていく。

この、「仲間のために尽くす」ことが、京セラのアメーバ経営の根幹をつくっている。アメーバ経営とは、組織を小集団に分けて、それぞれが1つの会社であるかのように、独立採算で運営させる手法だ。こうすることによって、おのおのが収益を上げているかどうか、無駄な動きをしていないかどうかを把握できるようになる。

この仕組みで重要なところは、業績の良いアメーバ(小集団)の給料をアップさせたり、ボーナスを多くしたりしないことだ。京セラでは、あるアメーバが会社全体の牽引役となって仲間のために貢献したとしても、金銭的な対価は支払わない。こう話すと、なぜ社員がそれで納得するのかと訝(いぶか)しがる人もいるが、京セラでは創業時からずっと、「代償を求めず仲間のために尽くすことが人間として1番大切である」と説いている。そのため、誰も成果給を求めるようなことは言い出さない。その代わり、よくがんばったところには賞賛を惜しまない。こうすることが、物心両面でみんなの幸福を実現すると考えているからである。

コンパは信頼関係を築くための手段
monkeybusinessimages/iStock/Thinkstock

京セラの経営の基盤となっているのは、心の通じあえる社員同士の結びつきだ。感謝と誠意をもって信頼関係を築いていけば、たとえ上司と部下の関係であっても、お互い言いたいことがはっきり言えるようになる。そうすることで、問題点が誰の目にも明らかになり、仕事がスムーズに進むというわけである。

また、京セラでは、信頼関係を築くための手法として、コンパを最重要視している。慰安旅行などの会社行事が原則全員参加なのも、遊ぶことが目的ではなく、社員間の絆をさらに強めることが目的だからだ。会社の会議室で話をしているだけでは、信頼関係はなかなか育まれない。大勢で輪になって酒を酌み交わすのが、信頼関係を築く最良の手段である。

【必読ポイント!】 どう仕事に向き合うべきか

ベストを尽くすだけでは不十分である

90%うまくいくと、そこで妥協してしまう人は少なくない。だが、「間違えたら消しゴムで消せばよい」というような安易な考えがあるかぎり、本当の意味で、自分も周囲も満足させる成果を得ることはできない。

自分自身の努力をさらに実りあるものにするためには、仕事では常にパーフェクトを求める必要がある。

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要約公開日 2017.02.03
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