優秀な人の共通項は、「何が真の問題か?」と、物事の本質に迫る問いを持って、物事と向き合っているという点だ。アマゾンの創設者ジェフ・ベゾスも、現場で問題が発生すると「なぜ?」を繰り返し、真因を探ったという。
筋のいい問いができるかどうかで、仕事や人生に大きな差がつく。問いを投げかけられると、脳は自然とそれに答えようとする。さらには、「自分が大事にすべきことは何か?」などと、本来の目標や自分らしさを見失わずにいられ、成果を出せるようになる。
脳は性質上、新しくてリスクのあるものを避け、現状維持を好む。これは生存上必要な能力であるが、「当たり前」を選ぶことに慣れてしまうと、斬新なアイデアを生み出しにくくなってしまう。だからこそ、当たり前と思っている知識や常識に健全な疑いを持って、「問う」ことが、脳を活性化させるうえでは重要となる。こうした姿勢を持てば、隠れていた核心を見つけ、自分を変えられる。
著者が「問い」の力に気づいたのは、マッキンゼー入社1年目、ある自動車メーカーの市場動向調査を依頼されたときだった。良い販売戦略を練るために資料を作成していると、上司から「そもそも自動車メーカーが直面している重要な課題は何か」と尋ねられた。そのとき、「クライアントにとって、そもそも何がいいことなのか?」という、より根源的で本質的な問いの重要性を著者は学んだという。こうした問いを立てられるかどうかで、仕事の質が大いに変わってくる。
質の高い問いを心掛けることで、どんな効果が得られるのだろうか。第一に、やるべきことがバラバラに散らばっているときに、問いは情報をひとまとめにしてくれる。よって、思考がシンプルになり、仕事の悩みが減るという。
また、物事の核心がつかめるので、時間短縮につながる。「今、自分が集中すべきものは何か」という問いを立てれば、不要な仕事を整理できるからだ。
さらには、異なる物事を関連づけて、発想を広げられるのもメリットの一つだ。問いによって、ある程度の制限が与えられると、発想が豊かになるだけでなく、異なるアイデアの掛け算が生まれやすくなるのだ。
想定外のトラブルに直面したとき、思考に突破口を開いてくれるのも「問い」の力である。「これを何かチャンスにできないか?」と問うことで、状況を変えやすくなる。たとえ理不尽なことが生じても、「この場で何が起こっているのだろう?」と問えば、自分の反応を意識的に選択できるようになる。すると、感情の荒波に飲まれずに、人間関係の悩みを解決できるようになる。何より、本当に自分が大切にしたいことが腑に落ちるので、すぐ行動できるようになり、自分を変えられるのだ。このように、問いが仕事や人生にもたらす効果は絶大である。
では、良い問いはどうやって立てればいいのか。優れた問いには次の4つの型がある。
第一に、問いは「一行で表せる」くらい、端的で本質に迫るものでなければならない。問いが何行にもなる場合は、思考が堂々巡りになっているか、自分の主張を相手に押し付けているだけの可能性が高い。
人の脳はシンプルな問いであるほど、多くのシナプスが活性化し、思考のジャンプが起こりやすい。例えば「本当はどうしたい?」などと、短い問いを自他に投げかけることによって、前提や思い込みを打ち破ることができる。また、一行にこだわれば、必然的に大事なことに焦点が当たり、余計なものを捨てられるのも、ワンセンテンスの問いのメリットである。
例えば営業活動がうまくいっていない人が、上司に「どうして結果が出せないのか?」と尋ねられても、やる気は出ないだろう。一方、「今、何が気になっている?」と問われればどうか。
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