本書の要点

  • レゴシリアスプレイは、実際に手を動かすことで、言葉になっていない思いを引き出し、表現する手法である。また、組織の問題解決からプロジェクトの発案まで、幅広い範囲に応用できる。

  • レゴシリアスプレイのワークショップでは、あるテーマに基づいてレゴを組み立て、それに関するストーリーを語る。

  • レゴシリアスプレイで対話が深まるのは、参加メンバー全員が自分の考えを100%出し切る「100/100」を実現するファシリテーション技術といった、数多くの工夫が凝らされているためである。

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戦略を形にするレゴシリアスプレイ

レゴシリアスプレイとは?

レゴシリアスプレイとは、レゴブロックを用いて、個人の価値観やビジョンなど、頭の中でなんとなく意識しているモヤモヤとした部分を可視化するメソッドである。これにより、コミュニケーション能力や問題解決能力の向上をめざす。レゴというと、子供のおもちゃというイメージがあるかもしれない。レゴシリアスプレイはもちろん子供にも有効だが、大人、しかもビジネスパーソンを対象にしたメソッドでもある。レゴシリアスプレイでは、レゴを使って、何らかのテーマのもとに作品を作り上げ、そこにストーリーを加えて説明する。作品は作者の個性が表現されたものであり、環境やそのときの精神状態、人間関係といったさまざまな要素が影響を及ぼしている。それゆえ、その人の無意識下に眠る考えが映し出されているといえる。

開発者ロバート・ラスムセン

レゴシリアスプレイを今の形に昇華させたのは、ロバート・ラスムセンである。教員、校長を経て、レゴ社教育部門の統括責任者としての経歴を持つ人物だ。「シリアスプレイ」という戦略立案の方法に、レゴブロックの作品作りを組み合わせ、MITやシカゴ大学で研究されていた教育・心理学の理論をもとにまとめ上げたのが、レゴシリアスプレイというメソッドである。開発の背景には、教育に対するラスムセンの並々ならぬ情熱がある。

無意識下にある答えに近づくために

Gearstd/iStock/Thinkstock

私たちは、問いに対する本当の答えを無意識下に押し込めていることがある。「なぜ今の仕事を選んだのか」「なぜ今のパートナーを選んだのか」といった重要な問いに答えることは難しくない。しかし、ある脳科学者によれば、その答えは多くの場合、「作話(コンファビュレーション)」という脳の機能が作りだした嘘であり、それを信じ込んでいるにすぎないという。こうした問いに対する本当の答えがわからないことは、個人の内面においても問題であるが、具体的な目標を共有することが重要となる、組織においては、より深刻な問題になる。メンバーがプロジェクトの中で大切に思っていることを軽視して、目先の問題にばかりとらわれていたとしたらどうか。レゴシリアスプレイは、こうした無意識下にある領域に近づくためのメソッドだ。

組織の問題解決からプロジェクトの発案まで

jacoblund/iStock/Thinkstock

レゴシリアスプレイは、専門的な訓練を受けたファシリテーターが行うワークショップである。このワークショップは、組織、チームのための問題解決とコミュニケーション向上に高い効果をもたらしてくれる。また、一部の参加者が発言しないまま議論が終わることのないよう、無口な人を組織のヒーローに変えるメソッドでもある。なぜなら、言語だけでは表現できない本当の考えや気持ちを表現することを、参加者に促すからだ。組織の問題解決や新たなプロジェクトの具体的な発案など、さまざまなテーマに応用可能なのが、レゴシリアスプレイの特性である。この汎用性の高いメソッドは、他のアイデア創出メソッドや問題解決メソッド、組織開発の手法などと組み合わせて、ワークショップで活用されることも多い。

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レゴシリアスプレイのためのウォーミングアップ

2つの基本スキル

本来レゴシリアスプレイは、専用に組み上げられたブロックセットと、専門の訓練を受けたファシリテーターが必要である。しかし、個人でもレゴシリアスプレイの世界観を体験できる。参加者が身につけるべきスキルは「組み立てる」スキルと、その組み立てたブロックに「意味を与える」スキルの2つである。

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要約公開日 2016.12.27
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