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なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学

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なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学
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なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学
出版社
日本能率協会マネジメントセンター
出版日
2016年03月30日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「なぜ人と組織はなかなか変われないのか」。「どうしたら人と組織は変わっていくのか」。「どうすれば、より成長できるのか」。自己の成長をめざし、人を育てる立場にある者にとっての普遍的な問いに対し、発達心理学の一分野である「成人発達理論」に基づいた本質的な気づきと行動指針を与えてくれるのが本書だ。

成人発達理論とは、「知識やスキルを発動させる根幹部分の知性や意識そのものが、一生をかけて成長・発達を遂げる」という考え方のもと、人の成長・発達プロセスやそのメカニズムを解明する学問領域である。欧米では人財育成や人事評価にも活用されている。成人以降の発達段階は4つの段階に分かれており、各段階に価値と限界点があるという。

本書は、部下との人間関係に悩む課長が、ある人財コンサルタントとの対話の中で、部下育成と組織マネジメントへの自信を見出していくストーリーとなっている。二人の対話を追ううちに、各発達段階の特徴や、どのように成長の階段をのぼっていけばいいのかというヒントが頭と心に刻み込まれていく。同時に課長の変化を追体験する中で、自分自身の内省が深まっていくだろう。

発達理論のエッセンスが詰まった本書は、人生における成長・発達という終わりなき航海をリードしてくれる羅針盤になってくれるだろう。同時に、ビジネスパーソンの自己変革のみならず、組織変革のバイブルとしても読み継がれていくべき一冊である。

ライター画像
松尾美里

著者

加藤 洋平(かとう ようへい)
最新の成人発達支援の方法論によって、企業経営者、次世代リーダーの人財育成を支援する人財開発コンサルタント。知性発達科学者として成人発達に関する学術的な探求にも従事。一橋大学商学部経営学科卒業後、デロイト・トーマツにて国際税務コンサルタントの仕事に従事。退職後、米国ジョン・エフ・ケネディ大学にて心理学の修士号を取得。ハーバード大学にて成人教育の権威ロバート・キーガンおよびリサ・レイヒーの下で、自己変革・組織変革モデルである「Immunity-to-Change」のファシリテーター・プログラムを修了。成人発達理論の大家オットー・ラスキー博士に師事し、発達測定の専門家としての資格を取得。Integral Coaching Canada Incにて、最新の発達理論に基づいたプロフェッショナル・コーチングの資格を取得。
現在、人財開発コンサルタントとして大手製造業の新事業開発プロジェクトに参画し、メンバーをマインド面からサポートするため、ラーニングセッションやコーチングを提供。日本企業の自己変革・組織変革による事業成長を強力に支援している。
翻訳書:『心の隠された領域の測定:成人以降の心の発達理論と測定手法』(IDM出版)

本書の要点

  • 要点
    1
    成人発達理論とは、知性や意識そのものが、生涯を通じて成長・発達を遂げるという考えに基づいており、自他の成長や組織変革に大きく寄与する理論である。
  • 要点
    2
    成人以降の発達段階は、「道具主義的段階」、「他者依存段階」、「自己主導段階」、「自己変容・相互発達段階」の順に4つに大別される。
  • 要点
    3
    日本の組織でイノベーションの創出が難しくなっているのは、「他者依存段階」の人財が多いからだと考えられる。既存の物の見方や権威の主張に、健全な批判の目を持つことが重要となる。

要約

部下との関係を良くするには?

課長、山口光の胸の内

山口光は、大手製造企業の開発部で課長を勤めている。新商品の開発に喜びを感じてきたが、管理職になって以来、その情熱は弱まる一方で、マネジャーとしても伸び悩みに直面している。直近の人事評価では、予想以上に低い評価を受け、上司からは「部下のやる気や能力を引き出すようなコミュニケーション能力」と「人間としてのさらなる成長」の2点を改善せよと告げられた。

どうすれば現状を打破できるのか。鬱々とした気持ちを晴らすために立ち寄ったワインバーで、今後の自らの成長と組織の変革を大きく左右する出会いが待っていた。それは、成人発達理論をもとにした人財開発コンサルティングを行う室積敏正との出会いだった。

本書では、山口とコーチの室積の対話を通じて、山口自身と部下がどのように成長を遂げていくのかが描かれている。

成人発達理論とは?
Delpixart/iStock/Thinkstock

成人発達理論とは、知識やスキルを発動させる根っこにある知性や意識そのものが、生涯を通じて成長・発達を遂げるという考えのもと、人の成長プロセスやメカニズムを解明する学問のことである。心が成長すると、視野が広がり、物事の深みや機微を認識できるようになり、部下の育成を促せるという。

人はそれぞれ独自の世界観、つまり「レンズ」を持っているため、世界の見え方は人によって異なる。この固有のレンズを「意識構造」と呼ぶ。質的に高性能のレンズがあれば、物事を俯瞰的に眺めたり、細かい点にも注意を払えたりする。こうした質的な差異を「意識段階」または「レベル」といい、意識段階が高くなればなるほど、物事を広く深く捉えられるようになる。ただし、意識段階が高い方が望ましい、というようにランクの高低が良し悪しに結びつくわけではないことに留意したい。さもなければ、ランクが高いものが低いものを抑圧したり、差別が起きたりする恐れがあるためだ。

また、発達理論においては、自分よりも上の意識段階を理解できないとされている。それは、建物の階が違えば見える景色が違うのと同様だ。意識構造は「器」に喩えられる。意識が成熟すれば、器が広がり、より多様な他者や曖昧なものを受容しやすくなり、多様な知識や経験を蓄えられるようになる。同時に、それらを咀嚼(そしゃく)し、統合する力も質的に変化するため、アウトプットも異なるものになるのだ。

主体・客体理論

人間の意識の成長・発達は、「主体から客体へ移行する連続的なプロセス」であるという。意識が成長するほど、つまり、ある意識段階から次の意識段階へと移行するほど、客体化できる能力が高まり、その結果、認識できる世界が広がる。次の意識段階に移行できてはじめて、これまでの意識段階を客観視できるというわけだ。

自分に関係することにしか関心を寄せない部下

発達段階2「道具主義的段階」
EdwardSamuelCornwall/iStock/Thinkstock

成人発達理論の大家、ロバート・キーガンによると、人間には5つの意識段階があり、成人以降は4つの段階があるという。成人のスタートラインとなる発達段階2は、「利己的段階」または「道具主義的段階」と呼ばれる。

この段階にいる人は、自己中心的な認識の枠組みを持っており、自分の関心や欲求を満たすために、他者を道具のようにみなす。また、自分の世界と他者の世界を真っ二つに分けて考えるため、相手の立場に立って物事を考える力が不十分である。

感情的になる部下への対処法

山口が手を焼いている部下Aも、この段階にいる。彼の良さを引き出しながら、チームワーク力を高めてもらうためには、チームのメンバーの考えや感情を理解する「二人称の視点」を育てることが欠かせない。その際、問いかけによって、部下自身の力で認識の枠組みを広げられるよう支援することが望ましい。なぜなら、

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要約公開日 2017.01.12
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